ガウシアン王都
時は遡る。
サハラはセッターとセーラムに事のあらましを伝えると、半ば逃げ出すようにみんなの元から離れ、ヴァリューム北部の森付近に来ていた。
「帝都までの近道の森か。懐かしいな。
杖は残り2本、大事に使わないと次はいつ手に入るかわからないな」
俺はエラウェラリエルが身につけていたピンキーリングを見つめながら、今後どうするか迷っていた。
あの時始原の魔術でハリケーンをガウシアンに放った事はただ怒りに任せてでは無い。ハリケーンには意味があり、海が近くに無い大陸中央部付近に位置するガウシアン王国王都では水害などによる被害はほぼ無いだろうという事と、元の世界のようにガスや電気などが無いこの世界では爆発のようなものや火災も発生しないと思ったからだ。
たぶんだけど…
そこまで操れるか自信はなかったけど、一応命は奪わないようにと想像しておいたつもりだしな。
「ウェラ、これから俺はどうしようか?」
掌にあるピンキーリングを見つめて独り言をつぶやいてみるが、映画なんかのように都合よく誰かが答えてくれるなんて事はない。
『サハラさん、私信じてた。きっと貴方は来てくれるって。仲間との約束は…たとえ死んでも守ってくれる、そういう優しい人だと思ってるから』
………
仲間…か。
あいつらが今でも俺を仲間と思ってくれているんだろうか…
いいや、あいつらがそう思っていなくても俺は…俺が仲間だと思っていればそれでいい。
死なれたりしたら絶対に俺は後悔するに決まってる。
なら!やる事は一つだ!
当然見えるはずも無いが、ガウシアン王国の方を見る。
俺は俺にできる事をやるだけだ。
俺はガウシアン王国を目指して縮地法を繰り返し使い一直線に向かった。
翌朝には縮地法でガウシアン王都にたどり着いた俺は酷い有様を目撃する。町は、建物はことごとく破壊され多数の怪我人で溢れていた。
当然城は見る影もなくなっていて、そして奴がレフィクルが居るはずの王都は晴天に見舞われていて、レフィクルが未だに力を回復しきっていないことが伺えた。
まぁ全てこれは俺がやった事なんだけどな…
それにしても…兵士達は何もしないのか?
俺は王都を歩いて見回るが兵士達の姿が一切見られなかった。念のため俺はローブのフードを深く被っておく。
通りづてに助けを求める声があれば助けながら、ついでに国からの援助について聞いてみたりした。
分かった事は王都に住んでいるのであろう市民達はレフィクルを神と崇め、今回のこのハリケーンも意味が何かあってレフィクルがやったと思っている事、行商人達はついに神々がお怒りになられたと足早にガウシアンを去るつもりだという事、そして兵士達は町には一切関与せず、崩れた神殿や城の修繕に費やしている様子だった。
とりあえずの救いは俺の想像通りに始原の魔術は効果を発揮し、作り出したハリケーンカトリーナは死者を一切出さなかったようだ。
自分が仕出かした事で死者が出なかった事を確認できた俺は早々にガウシアンを立ち去る事にし、この後どうするかを考える。
今みんなの元に戻ったところで気まずいまま半年過ごすだけになる。
だとしたらーーー
精霊との契約。
簡単だとは思わないが探すしか無いか?他のドルイドを。ただでさえレアクラスで、人里離れて暮らすドルイドを探すのは困難なのだと思う。
俺が関わった相手でドルイドに繋がりそうな奴か、宛は…無いなぁ。
なら俺の知識で考えてみる。
精霊との契約。えっと、ヤベェ古すぎて忘れたぞ!ええっと確かハイエルフの女が風の精霊王と契約結んだのは、何処でどうやった?後は炎の剣に宿った炎の精霊王と契約だが、こっちはそんな剣のあてが無い。いや待て…フローズンデスはもしかしたら氷の精霊でも宿ってんじゃ無いか?
だがあれはカイの父親の形見だし、何よりセッター達に見つかりかねない。それにこれはあくまでも俺の知識通りならと言うだけだ。
ダメだ、やっぱり探すしか無いか。だけどいるのか?いや、エルフは案外ドルイドが多いんじゃ無いか?よくエルフって言ったらシャーマン魔法の使い手だとかが多いイメージだ。だが、だとしても世界樹のエルフしか宛がない俺にはこの線もダメだ。
残るはエラウェラリエルの故郷だがーーー
場所わかんね。半年あるし聞きながら行けば辿り着けるか?だがこれも俺の知識通りならの話だ。
もっと現実的に考えるしか無いか…
ドルイドについて聞けそうな相手…創造神、バルロッサ、ゴールドドラゴン…待てよ?ドラゴン…グリーンドラゴンがいたじゃないか。だけどあいつまだルースミアが若造って言っていたよな。ルースミアより小さかったし…
とは言ってもそれでもあそこまで大きければ相当生きているはずだ。
行ってみるかーーー
人気のなくなる町の外まで出て、縮地法を使って移動をしようとした時だった。
「そこの怪しい奴、止まりなさい」
おかしい、感知は使っていた。近づいてくれば気がついたはずだ。テレポートか?だとしたらウィザード、町で見られて着けられていたと言ったところか。
ゆっくりと振り返り、俺を呼び止めた人物の方を向く。まだ敵と決まった訳じゃない。
女だった。最初に声を聞いた時点で分かっていた事だが、その姿に驚かされる。
エロ可愛い格好をした猫獣人だった。年齢は…20歳は過ぎているだろうか?この世界ではかなり珍しい露出の多い服装で、胸はさらしのようなものを巻いた上にくびれまで届かない短いベスト、下半身には布を巻いて結んだだけのような完全に腰のつなぎ目までスリットの入った長いスカート姿で、ほっそりした綺麗な片脚が覗かしている。
思わず鼻の下が伸びそうになるのをフードで隠すように引っ張りながら誤魔化す。
「何でしょう?」
語尾にニャとかはつかないんだな。まぁカイもワンとか言わなかったから偏見か。
「ここで何をしているんです?」
「王都が滅茶苦茶なので他所に移ろうとしただけですが…」
「それはおかしいですね。何故街道を歩かないのでしょうね?」
グッ、確かに…どうする、縮地法で一気に逃げるか?いや、まだ敵と決まった訳じゃない。
「ええっと…あはははは、ちょっと用を足してからと…」
「……そ、そうでしたか、それは失礼をしました」
「い、いえいえ、それでは…」
仕方ない。そこらの草むらで用を足したフリをしてから街道を少し歩くか。
草むらに入り込んだ俺は、用を足したフリをしてから王都から離れるように街道に戻ろうとする。が、先ほどの猫獣人が俺を見つめている。
「そ、そそそ、それでは」
手を振り去ろうとした時、猫獣人の女が近づいてくる。
「音がしませんでしたよ?」
「は?」
草むらを指差しながら言う。
ハッと俺は思い出す。カイは匂いに敏感で音にも敏感だ。猫は耳が良かったはず…
「ええっとなんか見らていた気がしたので出なくなってしまいまして…」
顔文字があればにっこりに汗なんだろう。
それを聞くとハッと両手を口に当て困った顔を見せながら謝ってきた。
うん、悪い人じゃなさそうだな。
「そのように顔をあまり隠さないほうがいいですよ。今は怪しまれるだけですから。
あ、私はスエドムッサ、ご迷惑をおかけしました」
スエドムッサさんか、可愛らしい人だったな。俺は街道を少し歩いてから感知に誰もいないのを確認してから縮地法で一気にヴァリューム北にある森に急いだ。
結局、感知に引っかからなかった理由が分からなかったな…
久しぶりにサハラストーリーです。
「我の出番はまだ来ないのか!」
まだまだ先です。
「ぬぅ、いい加減竜の聖域にいるのに飽きたわ」
治療中なんで我慢してください。
「作者風情が図に乗るな!さっさと更新していって我を出さぬか!」
ええっと…
更新頑張ります…
次回更新は定時更新の日曜日です。
予定になかった寄り道話しを書いてしまって遅れが出てきてしまいました…




