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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 霊峰竜角山への道程
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駆け引き

俺以外レフィクルを見たことがある者はこの中にはいない、はずだ。

仲間を見回すが、俺以外特に気にしている様子は見られない。もしここで正体を言えば争いにもなりかねない。回避するには俺が行動する以外なかった。


「1人ですか?良ければこちらで一緒にお茶をいかがですか?」


顔を見られているかもしれない俺をじっと見つめてくる。嫌な汗が流れ、ごまかす様にフードを引っ張りなおす。


「少し休んだら行くがいいのか?」

「ええ、ついでと言ってはなんですが、情報も聞ければ助かるなと」


わざと照れた様に鼻の頭を掻きながら言ってみる。


「成る程な。では馳走にならせてもらおう」


そう言うとゆっくりと俺らの方へ近寄り、焚き火の側で腰を下ろす。

レイチェルが長年宿屋で慣れた手つきでお茶を注いで持ってくると受け取り、口をつけた。


「それで聞きたいこととは何か?」

「まずは自己紹介ぐらいしておきますね」


そう言って全員を紹介し、冒険者でこれから霊峰に挑戦しに行くと嘘をついておく。



「ヌイアハック、ただの放浪者だ。それで知りたい情報というのは霊峰の事か?」


名前は誤魔化したか?それとも本当にそっくりな別人だったのか?

ヌイアハックは霊峰の町について話してくれたが、ほとんど俺の耳に入ってこなかった。


「こちらも聞かせてもらっても良いか?」

「ええ、勿論です」

「なぜ顔を隠している」


あ…自爆した。

下手な嘘をついても仕方がないだろう。それにレフィクルも名を偽っているところを見ると、正体を隠したい理由があるんだろう。

俺はフードを後ろに下げて顔を出す。


「別に深い理由はありません。知り合いのシーフがそうやっていてカッコよかったので真似してるだけです」


ふっ…はぁはっはっははは!


「失礼、なかなか笑える理由だ」


レイチェルが何か言おうとするのを制し、仲間が余計なことを言わない様にする。

なんとかレフィクルである確証が欲しいところだな。


「先ほど放浪者と言ってましたが…」

「あぁ、人を探している。名前はスレセイバーと言ったかな?恐らく偽名だが…」

「偽名だったらわかりませんね。何か特徴とかは無いですか?」


そこで確証が持てそうな事をヌイアハックと偽ったレフィクルは言った。

それはスレセイバーという男の持つ剣で斬られた相手の切り傷は血が出るのではなく凍るのだそうだ。

そんな武器は間違いなく魔剣フローズンデス以外無く、カイの父親の形見の剣である。しかし一度だけ奪われた時があった。

奪った奴はスレイドで5年前にオーク進撃の際に奪い、俺の腕を切り落とした後消息を絶った。

その消息を絶った時にガウシアン王国にチクったのだろう。ありえないタイミングでガウシアン王国がレドナクセラ帝国帝都のオークを壊滅させ、そのまま奪い取るなんてどうやって会えたのか分からないが、レフィクルに直接言えたのでもなければ無理じゃないだろうか?

そしてガウシアン王国が世界を制圧する先駆けになった出来事でもある。

勿論それだけでこのヌイアハックがレフィクルだという確証はない。


「残念ですが…聞いたことも無いですね」

「ふむ…」


そこで会話が途切れてしまう。

お茶のお代わりのふりをしてレイチェルのそばに行き、表情を伺うとフローズンデスで気がついたのかこわばっている様に感じる。

カップを渡す時にそっと口に指を1本立てると、レイチェルはコクリと頭を下げてお茶を注いだ。




「今の世を冒険者をしていてどう思う?」


唐突にヌイアハックが一人一人射抜く様な視線で見つめながら尋ねてきた。


「それはガウシアン王国が世界を統一してからということですよね?」

「うむ」


それを聞いて全員がそれぞれ思い返している様だが、いち早く答えたのはエラウェラリエルだった。


「ヴィロームでの冒険者にとってでの5年間は最悪でした。入るものは拒まず、けれど町中での生活は高額の税金を徴収される為、宿や食事は高額になり、そして町を出るにも高額の金額を請求される為、冒険者達は町を出るにも出れず絶望だけしかありませんでした」

「ふむ…ヴィローム以外ではどうだった?」


誰も口を開くことはない。それもそのはずで、冒険者として考えればヴィローム以外でヴァリュームは言うまでもなくヴェニデ、ヴォイド、旧帝都、旧王都と立ち寄った町で冒険者としてなら理不尽なことはなかったからだ。


「ヴィロームはオークの巣…ダークエルフの住処があり、地上を自分たちのものにしようと企んでいるからな。

その為に冒険者達に常に監視という目的の為にそうしているのだろう。

だが…その話が事実であればやりすぎだな」


ん、んん?ヌイアハックはレフィクルじゃないのか?今のを聞いている限りだととても狂王とは思えないぞ。


「随分とあんた詳しいんだな?ただの放浪者とは思えないぞ」


マルスがそう言うとヌイアハックはニヤリと口角を上げる。


「ヴィロームは早速税収などを調べてみよう。事実であればヴィロームを任せた領主を罰せねばならんな」


一瞬にしてセッター、マルス、セレヴェリヴェンがそれぞれ武器に手をかける。


「あんたまさか…」


ゆっくりと立ち上がると佇まいを直し、これだけの人数を前に臆することなく威風堂々とし…


「如何にも、余がレフィクルだ。

偽りごとを聞きたくないが故、名を偽らせてもらった」


ヌイアハックはレフィクルとハッキリ言った。



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