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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第3章 レジスタンス
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ソトシェア=ペアハ

ワイバーン、5メートル近い巨体に1トンにもなる巨大な爬虫類でドラゴンの親類だが、常に飢え攻撃的で短気であり、目的の為にすぐに力により訴えてくる。

主だった攻撃はドラゴンのようなブレスはなく、噛みつきとかぎ爪に加えて尻尾の先に猛毒を持つトゲで攻撃してくる。

尾の長さは体の半分を占めるほどの長さがあり、特に注意しなければならない。


(つがい)か、マズいな。

カイン!アベル!戦闘態勢に入れ!

あんた達!ワイバーンの尻尾のトゲは猛毒だ!絶対に喰らうなよ!」



どうするか…ここで始原の魔術使うのはマズいか?

いや、此処で見てもらっておいたほうが、後々説明する手間が省けるだろう。



俺は意識を集中させる。



“俺は自然均衡の代行者”


“あるゆる自然現象を想像し”


“具現化する”


“想像するは巨大な(ヒョウ)


“雨の如く降り注ぎ”


“俺に仇なす者を粉砕しろ!”


降雹(ヘイルストーム)!」



ドガガガガガガガガガガガガガ!


突如ワイバーン2匹の上空から20㎝はある巨大な雹がその巨体を叩きのめすように降り注ぎ出した。

ワイバーンは全身を氷の塊で打ち付けられる激痛から逃れようと必死に飛行するが、俺の想像の通り雨の如く降り注ぐ雹は、全身に叩きつけられ翼を強打し、ついには地面に叩き落とされ、それでも降り注ぐ雹は情け容赦なく叩きつけられ、雹が降り止んだときは既に氷の塊に半ば埋もれボロクズのようになったワイバーン2匹の死体だけが残った。



「相変わらず…とてつもない威力ですね…」

「もはや神罰じゃな」

「ワイバーンが少し可哀想になるわ」

「なるほど、サハラは説明の手間を省いたってところか」


キリシュ達がそんな事を言ってると思えば、セーラムは一番身近にあった雹を拾い上げて物珍しげに眺めている。



「これ…あんた、いや、サハラがやったのか?」


たった今目の前で起こった事に驚き固まっていたマルス達が我に帰ると、俺の方へ向くなりそう聞いてくる。

もちろん隠すつもりはない。頷いて返事を返した俺はマルス達がどう出るかを待った。


「初めて見たが…始原の魔術か?」

「そうだ」

「成る程…どうやらあんたは俺たちが待ち望んだ人のようだ」


待ち望んだ?どういう事だ?

レジスタンスは俺の存在を知っていたっていうんだろうか。


「サハラのこと前々から知っていたのか?」


俺が聞こうとする前にズィーが先に口を開いた。

こういうときは何か勘付いたんだろうズィーに任せるほうがいいだろうな。


「俺たちレジスタンスの中にいる奴が絶対に始原の魔術師が必須だと言ってたんだ。ま、詳しい話はよく分からないから後でそいつに直接聞いてくれ」


それ以上マルスは何も言わず、先を急がせるように移動を開始する。


俺を知っている奴か…



その後の道中もゴブリンやオーガなどと出くわしたが、カインとアベルが圧倒的な強さを見せつけるように倒した。

2人はマスター級は確実といったところか。

未だ主だって戦っていないマルスだけはどれだけの強さかはわからないままだ。


旧帝都を出て8日目には街道を逸れ山岳地帯の方へと向かっていき、魔物も今までより増えはしたが大抵は巨大な昆虫や爬虫類の類でそれほど危険はなく進んでいき、10日目に入った頃に絶壁の岩肌の前にたどり着いた。


「ボルゾイ、感動して泣くなよ?」


岩肌の前に着くとズィーがボルゾイにそんな事を言い出した。

ボルゾイが感動するような物がこの岩肌にあるのか?


「フン!何か知らんがこんな岩肌を見た程度で泣くわけがなかろう」

「ん?そうか。あんたはドワーフの神官戦士だったな。

という事は【鍛冶の神スミス&トニー】を信仰してるのか?」

「悪いかの?」

「マズいなぁ。カイン!アベル!マズいよな?

だってよ、俺たちが隠れ家にしてる場所がソトシェア=ペアハだぜ?」

「な…なんじゃと!ソトシェア=ペアハじゃと!」


マルスがニヤニヤしながら岩肌に触れるとガコンッと音がしたかと思えば、岩肌にポッカリと穴が開いた。いや、穴ではなく立派な入り口だ。


「ようこそ!我らが隠れ家でもあるソトシェア=ペアハへ!

…とは言ってもこっからがまだあるんだけどな」


ボルゾイを見れば体をワナワナと震わせ目から涙が溢れている。


「ここが伝説の聖地、ソトシェア=ペアハ…」


ソトシェア=ペアハ?聖地?一体何なんだ?わけがわからん。俺が首を傾げているとエラウェラリエルが【鍛冶の神スミス&トニー】が神になる前に生活していた、ドワーフの地下都市だと教えてくれた。



カインとアベルが先頭に入り口に入っていく。

中に入ると薄っすらと明るく一応明かりがなくても見渡せる。ちょうど常夜灯ぐらいの明るさかな?


「此処から隠れ家までチョチョイと進めば到着なんだが…一応色んな仕掛けがあって危険だから面白そうだとかで勝手に触れたりすんなよ?」

「危険ってどういう事だ?」

「なーに、俺らがいる場所は俺らだけが住んでるわけじゃないって事よ。

俺らが此処を隠れ家にする以前から住んでらっしゃる魔物さん達もいるんだわ」



気楽にマルスはそう言うとカインとアベルに指示を出して進み始めた。


ソトシェア=ペアハに入りこんだ場所は裏口らしいが、それでもかなりの広い通路になっている。




「ひゃあぁぁぁぁぁぁ!」


突然レイチェルが悲鳴のような変な声ををあげた。

俺たちが振り返るとレイチェルの足元に巨大な黒い物体が…


「うほおおぉぉ!」


それを見た瞬間思俺も声が出る。

ゴキブリだ。コックローチだ。しかもデカイ。60㎝は軽くあると思う。

ガサガサと歩き黒光りした嫌悪感の権化のような奴は、普段見るゴキブリの更に数倍気持ち悪い。


「ヤダヤダ!嫌!気持ち悪い!来ないで!」

「お、おい!お嬢ちゃん下手に動くな!危ねぇ!」


レイチェルが叫びながら後ずさった次の瞬間



バビビビビビビビ!


ジャイアントコックローチ様が飛行形態となってレイチェルの方に飛び立つ。


「「「「「うほおおぉぉ!」」」」」

「「ひぃぃ」」


もちろん俺だけじゃないぞ!

他の仲間もその究極的なまでのグロテスクさに声が出て体が避ける。

どこの世界でもゴキブリって奴は変わらない存在のようだった。



と、そんなゴキブリにすっかり気を取られて、こっち来んな状態になりレイチェルの事をすっかり忘れていた。


ガコンッ!


「……え?」

「危ねぇ!」


マルスがレイチェルの手を掴んだが遅かった。床が突然開いたかと思えば、2人は転がるように落ちて消えてしまった。



60㎝のゴキブリ…絶対に見たくないですね。


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