出会った2人
「レイチェル!」
レイチェルが消えた辺りに俺が行こうとしたが、アベルに腕を掴まれ抑えられる。
「離せ!レイチェルを助けないと」
「マルス様がついてますから大丈夫です」
同様にセッターもカインにより抑えられていて、セーラムは俺の側で外套を掴んで俺を見つめながら首を振っている。
少し落ち着いた俺はカインとアベルにどういう事か事情を聞くと、同じ場所から落ちても同じ場所に出るとは限らず、場所が特定できないとドワーフの地下都市であった広いソトシェア=ペアハを捜索するのは困難を極めるそうだ。
またトラップというより移動手段のようなもののため、2人が落ちた事によって死ぬ事はなく、マルスはある程度ソトシェア=ペアハを把握している為必ず戻ってくると言う。
「魔物がいるんだろ?」
「マルス様は強いです。きっと戻ってきますから私達はマルス様を信じて隠れ家で待ちましょう」
根拠がなさすぎる気がするが、配下であるカインとアベルが落ち着いている事もあって、俺たちは仕方なく信じる事にし隠れ家に向かう事にした。
「あそこが我々の隠れ家にしている場所です」
先を見ると入り口っぽい場所があり、そこには番をするレジスタンスのメンバーが立っていて、こちらに気がつくと声を上げてくる。
カインとアベルが手を振り返事を返し入り口まで行くと初老の男が姿を見せる。
「カイン、アベル、ズィーよく戻った。ん?マルス殿はどうされた?
それと其方の連中がズィーの仲間か?」
姿を見せるなり質問攻めしてきた、高価そうな衣服に身を包み威厳のあるこの初老の男こそレジスタンスのリーダーであり、レドナクセラ帝国の重鎮であったといわれる人物のようだ。
「マルス様は此方のお仲間の1人が魔物の奇襲に会って仕掛けにかかり、共に落ちてしまいました」
「なんと…しかしマルス殿と一緒であれば大丈夫か…
それよりはるばるよく来てくれた。
私が此処を取り仕切っているワイプオールだ。取り敢えず仲間が心配だとは思うが中に入って話を聞かせてもらいたい」
ワイプオールに連れられ隠れ家を歩けば、此処で暮らす人々の様子もうかがえた。
女子供も多く、おそらくオークの進軍の際に帝都から避難した住民達もここにいるのだろう。
会議室のような場所に連れてこられると、そこには8名の人物が待機していた。
そこにワイプオールが加わり空席を1つ残した状態になる。
おそらく最後の席はマルスなんだろう。
「疲れているところ申し訳ないが、少し聞かせてもらおう」
席に勧められ俺たちが座ると、早速質問攻めにあう事になった。
ズィーが此方を代表して答える形で話をしていき、最初にキリシュ達ズィーの仲間が紹介され、ヴィロームでの苦労を聞き、俺たちと再会した所まで説明する。
そして次にセーラムが紹介されると、1人の人物が立ち上がり頭を下げてきた。
「まさかこのようなところでハイエルフにお会いになれるとは光栄です」
その男は端正な顔立ちをしたエルフで、まだ15歳のセーラムに対して敬意を払う。
わたわたと慌てるセーラムは俺に助けを求めるように見てきたが、あえて俺は助け舟を出さずに放っておいてみた。
「もおぉしょぉぉがないなぁぁ…
あたしはヴァリュームでママとはぐれてあたし自身の事よくわからないなの。
でも、パパ…サハラの手助けがあって此処まで来れたなの!」
「そうでしたか。それは苦労をなさったでしょう。
サハラか?礼を言う」
うお、なんだこの差は。
しかもなんか睨んでないか?
次にセッターが紹介されると、立ち上がり騎士らしいしっかりとした礼をする。
「私は元ヴァリューム騎士団団長ギャレット様の従者で、ギャレット様の指示に従い今はマスターサハラの元で修行をしています」
「あのギャレットの従者か。それでギャレットはどうしたのだ?」
一番セッターが聞かれたくない事を聞いてきたが、ギャレットより地位が上のワイプオールでは報告する義務もある。
セッターは俺を一度見てから、辛そうな顔で公開処刑という名のノーマ侯爵と闘い処刑された事を伝えた。
「そうであったか…
しかしなんでまた…サハラと言ったか?に仕えろとギャレットは言ったのだ?」
セッターは懐からギャレットの手紙を差し出すと返事を待った。
「ふむ…そなたの事は分かった。
分からないのがハイエルフの娘に、従者セッターに関わるサハラよ。お前は一体何者だ?」
ズィーの紹介されるまでもなくワイプオールは俺に話を振ってきた。
「失礼ですがよろしいでしょうか?」
「どうしたカインよ」
割って入ったカインにワイプオールは俺から視線を移す。
「その者、サハラ殿は始原の魔術師です」
「「「「「「「「何だと!」」」」」」」」」
9人が一斉に俺を見ると驚きの声を上げる。
「間違いありません。道中ワイバーン2匹に襲われかけたところをサハラ殿の始原の魔術で一瞬にして大量の雹を降らせ屠りました」
アベルが続いて答えると、9人のうち1人のセーラムと同じ年頃の男の子が立ち上がると俺の側までちょろちょろと近づいてくるなりとんでもないことを言いだしやがった。
「という事は君が自然均衡の代行者なんだね」
周りが一斉にどよめき出す。
いきなりコイツ俺が自然均衡の代行者だと暴露しやがった。
今までせっかく内緒にしてたのに…
って事はコイツがマルスの言っていた始原の魔術師必要だと言っていた人物で、自然均衡の代行者だと知っているという事は…
「それを知っているという事は貴方が【魔法の神アルトシーム】の代行者といったところですね?」
「うん、僕が【魔法の神アルトシーム】の代行者にされちゃったキャスだよ。
っと、序列2番の代行者に馴れ馴れしかったかな?」
「いえ…いや、別に構わないさ。その方が俺も話しやすい。それと俺も君と同じく望んで代行者になったわけじゃないさ」
そこで周りを見るとキリシュ達はもちろんのこと、セッターも8人の此処を取り仕切っている連中も驚いていた。
レイチェルがいたら内緒にしてたこと怒るかな…
どうやらキャスが【魔法の神アルトシーム】の代行者だと言うのはワイプオール達は知っていたようだった。
「次期神2人に出会うことになるとは…」
ワイプオールが沈黙を破るように言い、俺の方をまっすぐ見ると頭を下げてきた。
「知らなかったとはいえ数々の無礼な態度、誠に申し訳ありませんでした。
サハラ殿、我々は貴方を歓迎いたします」
一斉に頭をさげる一同に俺は焦り、慌てて言葉を返す。
「いえ、そんな…頭をあげてください。俺は確かに自然均衡の代行者ですが、偉ぶるつもりとかはないので、普通に接してもらえれば十分です」
「はぁ、そう言うのでしたら…」
「それよりも今は仲間のレイチェルとマルスさんが心配なんですが…」
「分かりました。明日まで様子を見て戻らないようでしたら、すぐに捜索の手配をいたしましょう」
いやだから、かしこまらないでくれって…




