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武尊と松本が教室に戻ると、すでに女生徒たちはいなくなっていた。千鶴が一人、机に宿題を広げている。
「宮本さん、遅くなってごめん」
そう言うと事務室で聞いてきた予算と、物品を購入後について、松本が千鶴に説明する。それを一通り聞き終わり、納得をした千鶴が不思議そうに尋ねる。
「どうしたん? 思ったより時間がかかったけど」
「僕ら、一組の井久見君と話をしてたんや」
「六月に杉原くんと一緒に転校してきた人よね」
「そうそう。井久見くんって、本物の殺魔師なんやて。それと、杉原君も」
千鶴は両手で口を抑えて驚いた。予想通りの反応に松本は喜ぶ。
「本当?」
「まあ、一応」
武尊はぎこちなく答えた。
「でも、だったらなんで一組じゃないん?」
そこからは松本がいきいきと説明した。それを目を輝かせて、千鶴も聞いていた。
「剣はなんで使えるようになったん?」
二人は期待に満ちた顔で武尊を見つめた。
武尊は言葉に詰まったが、二人の眼差しに負けて話し始めた。
「俺、実は母親が怪魔に殺されてんだよ……」
教室の空気が冷たく張り詰める。
「父親の顔は知らないし、母親は俺が中一の時に怪魔に殺された。で、天涯孤独になった俺を拾ってくれたのが、両親の知り合いだった、殺魔師の家なんだ。
そこで代々祀られていた神剣玉依って剣があるんだけど、なぜだか俺が使えたから、殺魔師になったってわけ」
怪魔によって人が亡くなることは、そんなにめずらしいことではない。だが、テレビのニュースでしか聞いたことのない出来事を、武尊の口から聞くのはの衝撃だったようだ。二人は神妙な顔で、武尊の話を聞いていた。
「……なんか、ごめん。好奇心で聞いてしもて」
「私も。ごめんなさい」
松本と千鶴が謝る。
「気にしないでくれ。
俺は霊力がないのに、怪魔を倒す力を手に入れられて、ラッキーだと思ってんだ。
母親の敵も取れるしな」
二人のようすを見て、武尊は努めて明るく言った。
「杉原!!」
松本がいきなり武尊の両手をしっかりと掴む。
「困ったことがあったら、何でも言うてくれ。俺、何でも協力するから! ……いうても、そんなに大したことはできへんけど……」
「わ、私も!」
二人の言葉に目を丸くしながら、武尊は笑った。
「だから、そういうのいいんだって。
……でも、ありがとう」
人のいい松本の言葉に、武尊は思わず笑みを浮かべた。
どこからか流れてくる風でカーテンが揺れる。気がつけば、太陽は西に傾いていた。
「ねえ、杉原くんが殺魔師やったら、調べてほしいことがあるんやけど」
「調べてほしいこと?」
千鶴は迷いながら話し始めた。
「この学校って、毎週水曜日は部活もなくて、生徒は学校に残ったらあかんことになってるやろ」
武尊は頷いた。先生たちも残らないはずだ。葵が帰ってくるのもいつもより早い。
「でもな、私、生徒会の仕事で一度残ったことがあるんよ。
そうしたら、体育館の窓から、大きな目が見えて……」
「目?」
松本は首を傾げた。
「そんな噂、聞いたことあらへんけどな」
「ほんまなんよ! 真っ赤な大きな目が私を見たんや!
せやけど、生徒会の先輩らに言うても、信じてもらえんで……。
杉原君、殺魔師やったら調べてもらえんやろか」
驚く武尊に千鶴が言う。
「やっぱり、急やし、こんな話、信じてもらえんよね。でも、私、なんや怖うて……」
そう言うと、その光景を思い出したのか、両手を胸の前で強く握った。
「うーん。……わかった。
調べられるかわからないけど、一度相談してみるよ」
「ありがとう、杉原君」
「まあ、何とかなるだろ」
微笑む千鶴を見ながら、武尊は呑気に答えた。
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
無断転載・無断使用・AI学習への利用は禁止しています。
2026年6月13日 一部変えています。




