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飛べない鳥は羽ばたく夢を見る   作者: さち


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4

 武尊と松本が教室に戻ると、すでに女生徒たちはいなくなっていた。千鶴が一人、机に宿題を広げている。

「宮本さん、遅くなってごめん」

 そう言うと事務室で聞いてきた予算と、物品を購入後について、松本が千鶴に説明する。それを一通り聞き終わり、納得をした千鶴が不思議そうに尋ねる。

「どうしたん? 思ったより時間がかかったけど」

「僕ら、一組の井久見君と話をしてたんや」

「六月に杉原くんと一緒に転校してきた人よね」

「そうそう。井久見くんって、本物の殺魔師なんやて。それと、杉原君も」

 千鶴は両手で口を抑えて驚いた。予想通りの反応に松本は喜ぶ。

「本当?」

「まあ、一応」

 武尊はぎこちなく答えた。

「でも、だったらなんで一組じゃないん?」

 そこからは松本がいきいきと説明した。それを目を輝かせて、千鶴も聞いていた。 

「剣はなんで使えるようになったん?」

 二人は期待に満ちた顔で武尊を見つめた。

 武尊は言葉に詰まったが、二人の眼差しに負けて話し始めた。

「俺、実は母親が怪魔に殺されてんだよ……」

 教室の空気が冷たく張り詰める。

「父親の顔は知らないし、母親は俺が中一の時に怪魔に殺された。で、天涯孤独になった俺を拾ってくれたのが、両親の知り合いだった、殺魔師の家なんだ。

 そこで代々祀られていた神剣玉依って剣があるんだけど、なぜだか俺が使えたから、殺魔師になったってわけ」

 怪魔によって人が亡くなることは、そんなにめずらしいことではない。だが、テレビのニュースでしか聞いたことのない出来事を、武尊の口から聞くのはの衝撃だったようだ。二人は神妙な顔で、武尊の話を聞いていた。

「……なんか、ごめん。好奇心で聞いてしもて」

「私も。ごめんなさい」

 松本と千鶴が謝る。

「気にしないでくれ。

 俺は霊力がないのに、怪魔を倒す力を手に入れられて、ラッキーだと思ってんだ。

 母親の敵も取れるしな」

 二人のようすを見て、武尊は努めて明るく言った。

「杉原!!」

 松本がいきなり武尊の両手をしっかりと掴む。

「困ったことがあったら、何でも言うてくれ。俺、何でも協力するから! ……いうても、そんなに大したことはできへんけど……」

「わ、私も!」

 二人の言葉に目を丸くしながら、武尊は笑った。

「だから、そういうのいいんだって。

 ……でも、ありがとう」

 人のいい松本の言葉に、武尊は思わず笑みを浮かべた。

 どこからか流れてくる風でカーテンが揺れる。気がつけば、太陽は西に傾いていた。

「ねえ、杉原くんが殺魔師やったら、調べてほしいことがあるんやけど」

「調べてほしいこと?」

 千鶴は迷いながら話し始めた。

「この学校って、毎週水曜日は部活もなくて、生徒は学校に残ったらあかんことになってるやろ」

 武尊は頷いた。先生たちも残らないはずだ。葵が帰ってくるのもいつもより早い。

「でもな、私、生徒会の仕事で一度残ったことがあるんよ。

 そうしたら、体育館の窓から、大きな目が見えて……」

「目?」

 松本は首を傾げた。

「そんな噂、聞いたことあらへんけどな」

「ほんまなんよ! 真っ赤な大きな目が私を見たんや!

 せやけど、生徒会の先輩らに言うても、信じてもらえんで……。

 杉原君、殺魔師やったら調べてもらえんやろか」

 驚く武尊に千鶴が言う。

「やっぱり、急やし、こんな話、信じてもらえんよね。でも、私、なんや怖うて……」

 そう言うと、その光景を思い出したのか、両手を胸の前で強く握った。 

「うーん。……わかった。

 調べられるかわからないけど、一度相談してみるよ」

「ありがとう、杉原君」

「まあ、何とかなるだろ」

 微笑む千鶴を見ながら、武尊は呑気に答えた。

本作品は個人創作です。

一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。


「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。

無断転載・無断使用・AI学習への利用は禁止しています。


2026年6月13日  一部変えています。

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