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事務室のある教務棟に着くと、少し前にひょろりと背の高い茶髪の男子生徒が歩いていた。それに気が付いた武尊は思わず走り出して、思い切りその背中を叩く。
男子生徒は驚いて振り向き、そして武尊の顔を見て笑顔を浮かべた。
「武尊!」
「よっ! 恭介! どこに行くんだよ」
「事務室。武尊は?」
「俺たちも。一緒に行こうぜ」
武尊は恭介の隣にいた小柄な女生徒に気がついた。ゆるくパーマをかけたような髪をハーフアップにまとめた女生徒は、武尊を見ると冷ややかな視線を向けた。
「クラスメイトの守ノ宮さん」
武尊はペコリと頭を下げる。
「もしかして、この人があなたの片割れ?」
「そうだよ」
彼女は武尊を上から下まで見ると、ふうんと頷く。背は低いのに、上から見下されているような視線だ。
「井久見君から話は聞いているけど、ほんまに霊力がないんやね」
初対面の女生徒からの思わぬ発言に、武尊は面食らった。
「あなたみたいなんが片割れやなんて、井久見君が可哀想やわ」
「なんだと」
武尊の声が怒りを帯びる。恭介は思わず武尊と彼女の間に立った。
「殺魔師の仕事は遊びやないんよ。霊力が無いんやったら、辞めた方がええよ」
言いたいことだけ言うと、彼女は武尊を見ることもなく教室に帰っていった。
「何だよ、感じ悪いな」
誰も寄せ付けない後ろ姿を見ながら、武尊はぼやく。
「悪い人じゃないと思うんだけどな」
「それ、全然説得力ないから」
苦笑する恭介におずおずと松本が話しかける。
「今の、一組の守ノ宮聖子さんやな」
「お前、知ってるの?」
「だって有名人やんか。初めて声聞いたけど」
恭介が、武尊の後ろにいた松本を見る。
「えっと……、武尊、彼は、クラスメイト?」
「そうそう、クラスメイトの松本」
武尊は嬉しそうに松本を紹介した。
「はじめまして。井久見です」
「松本です」
廊下で二人の男子学生がぎこちなくお辞儀を交わす。それを武尊は満足そうに見守っている。
「ぶしつけやけど、殺魔師って、ほんま?」
「……うん」
「杉原くんも?」
その言葉に、恭介は目を丸くする。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って。武尊、殺魔師だってこと話しちゃったの?!」
「ああ」
脱力するかと思うほど、恭介は大きなため息をついた。
「恭介のお供だと思われているから、違うことを説明した」
なぜか武尊は誇らしげだ。そんな武尊に恭介はさらに慌てる。
「葵さんから、なるべく殺魔師ってことは知られないようにって、言われたじゃないか」
「でも、お供だって思われるのは嫌だし、嘘をつくのも嫌だ」
「それはそうだとは思うけど……」
もう何を言っても無駄だろうと、恭介はがっくりと肩を落とした。
「しょうがないな。これからは、話しちゃ駄目だからね」
「気をつけるよ!」
不安そうな眼差しの恭介を安心させようと、武尊は元気よく返事をした。
もちろん、恭介は全く信用していない。
「ところで、松本くん。どうして武尊が僕のお供だと思ったの?」
「守ノ宮さんにお供がおるから、そうなんかなって思ったんや」
「守ノ宮さんに?」
「そう。三年の宮内さんって人や。柔道めっちゃ強くて、強豪校から推薦が山ほどきたんやけど、それ断って守ノ宮さんのお供をしてるんやて」
「そんなに強かったなら、どうして?」
「もともと宮内先輩の家は、守ノ宮家の分家やから、しかたないんやて」
「したいこともできないって、家ってそんなに大切なのかね」
武尊は眉をひそめる。
「ところで、守ノ宮家って、聞いたことがあるけれど、何?」
その言葉に、恭介は頭を抱える。
「京都最大の殺魔師の一族だよ。ここの学校を実質経営しているのも守ノ宮家。
葵さんが説明してたでしょ」
「京都やと、わりと一般の人でも知ってる有名な話やで」
呆れる二人に武尊は視線をそらす。
「そんな話もしてた気がするな」
「話はよく聞いてよ」
さすがにむっとしている恭介に、武尊は内心焦った。
「次から気をつける」
「本当だよ」
その二人のやり取りを見ていた松本が納得する。
「ほんまに、友達なんやな」
「だろ」
武尊は当たり前だと言うように笑顔を浮かべる。
「勘違いしてる人多いし、今度聞かれたらよう言うとくわ」
「殺魔師って言うのは、できれば隠してほしいけど」
「そら、なかなか難しいな」
「別に悪いことじゃないから、いいだろ」
その言葉に、恭介は深い深い溜息をついた。
京都弁は標準語を自分で書いて、AIに京都弁を監修してもらいました。方言、難しいですね。
2026年6月12日 一部変更しました
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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