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飛べない鳥は羽ばたく夢を見る   作者: さち


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3/6

3

 事務室のある教務棟に着くと、少し前にひょろりと背の高い茶髪の男子生徒が歩いていた。それに気が付いた武尊は思わず走り出して、思い切りその背中を叩く。

 男子生徒は驚いて振り向き、そして武尊の顔を見て笑顔を浮かべた。

「武尊!」

「よっ! 恭介! どこに行くんだよ」

「事務室。武尊は?」

「俺たちも。一緒に行こうぜ」

 武尊は恭介の隣にいた小柄な女生徒に気がついた。ゆるくパーマをかけたような髪をハーフアップにまとめた女生徒は、武尊を見ると冷ややかな視線を向けた。

「クラスメイトの守ノ宮さん」

 武尊はペコリと頭を下げる。

「もしかして、この人があなたの片割れ?」

「そうだよ」

 彼女は武尊を上から下まで見ると、ふうんと頷く。背は低いのに、上から見下されているような視線だ。

「井久見君から話は聞いているけど、ほんまに霊力がないんやね」

 初対面の女生徒からの思わぬ発言に、武尊は面食らった。

「あなたみたいなんが片割れやなんて、井久見君が可哀想やわ」

「なんだと」

 武尊の声が怒りを帯びる。恭介は思わず武尊と彼女の間に立った。

「殺魔師の仕事は遊びやないんよ。霊力が無いんやったら、辞めた方がええよ」

 言いたいことだけ言うと、彼女は武尊を見ることもなく教室に帰っていった。

「何だよ、感じ悪いな」

 誰も寄せ付けない後ろ姿を見ながら、武尊はぼやく。

「悪い人じゃないと思うんだけどな」

「それ、全然説得力ないから」

 苦笑する恭介におずおずと松本が話しかける。

「今の、一組の守ノ宮聖子さんやな」

「お前、知ってるの?」

「だって有名人やんか。初めて声聞いたけど」

 恭介が、武尊の後ろにいた松本を見る。

「えっと……、武尊、彼は、クラスメイト?」

「そうそう、クラスメイトの松本」

 武尊は嬉しそうに松本を紹介した。

「はじめまして。井久見です」

「松本です」

 廊下で二人の男子学生がぎこちなくお辞儀を交わす。それを武尊は満足そうに見守っている。

「ぶしつけやけど、殺魔師って、ほんま?」

「……うん」

「杉原くんも?」

 その言葉に、恭介は目を丸くする。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って。武尊、殺魔師だってこと話しちゃったの?!」

「ああ」

 脱力するかと思うほど、恭介は大きなため息をついた。

「恭介のお供だと思われているから、違うことを説明した」

 なぜか武尊は誇らしげだ。そんな武尊に恭介はさらに慌てる。

「葵さんから、なるべく殺魔師ってことは知られないようにって、言われたじゃないか」

「でも、お供だって思われるのは嫌だし、嘘をつくのも嫌だ」

「それはそうだとは思うけど……」

 もう何を言っても無駄だろうと、恭介はがっくりと肩を落とした。

「しょうがないな。これからは、話しちゃ駄目だからね」

「気をつけるよ!」

 不安そうな眼差しの恭介を安心させようと、武尊は元気よく返事をした。 

 もちろん、恭介は全く信用していない。

「ところで、松本くん。どうして武尊が僕のお供だと思ったの?」

「守ノ宮さんにお供がおるから、そうなんかなって思ったんや」

「守ノ宮さんに?」

「そう。三年の宮内さんって人や。柔道めっちゃ強くて、強豪校から推薦が山ほどきたんやけど、それ断って守ノ宮さんのお供をしてるんやて」

「そんなに強かったなら、どうして?」

「もともと宮内先輩の家は、守ノ宮家の分家やから、しかたないんやて」

「したいこともできないって、家ってそんなに大切なのかね」

 武尊は眉をひそめる。

「ところで、守ノ宮家って、聞いたことがあるけれど、何?」

 その言葉に、恭介は頭を抱える。

「京都最大の殺魔師の一族だよ。ここの学校を実質経営しているのも守ノ宮家。

 葵さんが説明してたでしょ」

「京都やと、わりと一般の人でも知ってる有名な話やで」 

 呆れる二人に武尊は視線をそらす。

「そんな話もしてた気がするな」

「話はよく聞いてよ」

 さすがにむっとしている恭介に、武尊は内心焦った。

「次から気をつける」

「本当だよ」

 その二人のやり取りを見ていた松本が納得する。

「ほんまに、友達なんやな」

「だろ」

 武尊は当たり前だと言うように笑顔を浮かべる。

「勘違いしてる人多いし、今度聞かれたらよう言うとくわ」

「殺魔師って言うのは、できれば隠してほしいけど」

「そら、なかなか難しいな」

「別に悪いことじゃないから、いいだろ」

 その言葉に、恭介は深い深い溜息をついた。

 

京都弁は標準語を自分で書いて、AIに京都弁を監修してもらいました。方言、難しいですね。


2026年6月12日  一部変更しました


本作品は個人創作です。

一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。


「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。

無断転載・無断使用・AI学習への利用は禁止しています。


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