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「そうだよ」
「せやったら、なんで1組やないん。殺魔師やったら1組やろ」
松本の質問はもっともだった。白鳳学園は各学年に4クラスあり、2組は進学コース、3・4組は普通コース。そして1組は特別コースと言われ、殺魔師や殺魔師見習いが通っている。
「俺、霊力が無いから、この学校では殺魔師として認められなかったんだよ」
「霊力がないのに、どうやって怪魔と戦うん?」
「玉依って名前の神剣があるんだけど、それを使って戦ってんだ」
「神剣って、なんかカッコいいな。どこにあるん?」
眠そうだった松本の目が生き生きと輝きだす。
「家……かな? 学校に、剣は持ってきちゃ駄目だって言われてさ」
「そうなんや。ほんなら今の杉原って……」
「ただの一般人と変わらない。俺、玉依が無かったら、ぜんぜん役に立たないからさ」
へええと、感心したような、拍子抜けのような微妙な声を松本は出した。
「でも、ちょっと安心したかも」
「安心?」
「殺魔師って、ドラマとか漫画とかでよう見るけど、実際は、会話することないやん。
それにちょっとやけど、殺魔師が近くにおるって、怖いなって思ってたんよ。
けど、杉原はちょっと違うし、安心した」
「そんなものかな」
不思議そうに言う武尊に、松本は大きく頷いた。
「でも、この学校には通っている奴らがいるんだから、そんなに珍しくないでしょ」
松本は首を振る。
「なんかさ、1組の奴らって喋りかけにくいんよ。実際、俺達なんて眼中にないって感じやし。特別なオーラ出てる気ぃするし、なんか怖うて近づけへん」
武尊は身近にいる殺魔師たちの顔を思い浮かべてみたが、松本の言葉に共感することはできそうになかった。
そうこうしていると、教室のドアが開き、女性徒が一人入ってきた。スラリとした高身長で黒髪が腰まである。目鼻立ちがはっきりして、意思が強そうな雰囲気だ。
教室をぐるりと見回すと、女生徒たちが集まっている中へ入っていく。
「宮本さんや。今日は来てくれたんやな。これですぐに決まるで」
期待を込めた声で、松本が言う。
「そうなの?」
不思議そうに問い直すと、松本が頷く。
「去年も同じクラスやったけど、彼女おったら、相談がすぐにまとまるんよ」
「たしか、生徒会に入ってんだっけ」
「そうそう、頭、めっちゃいいらしいで」
彼女は、黒板に向かうと、女子たちと話しながら美しい字で次々にメニューを書いていく。
そしていくつかを消すと、武尊たちに声をかけた。
「松本くんと杉原くんは何かメニューの案がある?」
目が合うと、宮本は余裕たっぷりでほほ笑んだ。
「せっかくだから、男子の意見も聞きたいんだけど」
松本が助けを求めるように武尊を見る。武尊は少し考えると口を開いた。
「メニューは何でもいいんだけどさ、俺らでも、簡単にできるものがいいな」
「せやね。お料理が得意な人ばかりやないし、苦手な人でも簡単にできるものがええわね」
それならと、彼女はまたいくつかのメニューを消していく。
それに対して、他の女子も意見を出し、メニューはあっという間に決まっていった。
「レモネードスカッシュと手作りクッキーのお店でいいかな」
女子たちから拍手が上がる。その鮮やかさに、武尊は感心した。
「去年もクラス委員してたし、今は生徒会の役員もやってて、ほんますごいよな」
なぜか松本は、自分のことのように自慢する。
「ほな、今日は終わりでいい? 明日は材料とかの値段を見に行ければいいんやけど、クラスの予算を事務の先生に確認したほうがいいよね」
その瞬間、女子のテンションがにわかに上がった。
宮本も気がついたらしく、やれやれという顔をする。理由がわからない武尊は松本に聞くと、松本は物知り顔で答えた。
「夏休み前から来てる事務の先生が、アイドル並みにイケメンなんやて。名前はたしか、物部葵先生やったかな」
数人いた女子は、誰が行くか決めるためにじゃんけんを始めている。
「そんなに人気なの?」
「ああ、用事のない人は事務室に行かんようにって注意されてたやろ。あれ、物部先生を見に行く女子が多いかららしいで」
そう言えば、最近そんなことを朝礼で聞いた気もする、と武尊は納得した。
だんだんとヒートアップする女子の声に、たまらなくなって宮本が言った。
「悪いけど、杉原君と松本君で、事務室に行ってきてくれへんかなー」
突然の指名に、二人は顔を見合わせた。確かに、このままだと、女子の間に亀裂が入りそうだ。
とはいえ校内で葵に会うのは、気が進まないのだけど。
そんなことを考えていると、宮本がお願いのジェスチャーをする。
「行くか、松本」
「そやな」
二人は女子に羨望の眼差しを向けられながら、教室を後にした。
教室の雰囲気が伝わるといいな




