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※本作には虐待や暴力など、心身に負担を感じる可能性のある描写が含まれます。物語上必要な表現として描写していますので、苦手な方はご注意ください。
翌日木曜日、午前に武尊たちは幸の自宅へ到着した。
幸の自宅には、前もって忠が連絡をしていた警察官が一人で待っていた。
忠は自分の車。そして葵と勝と武尊は同じ車で来た。
武尊にとっては場違いな、高級車ならではの柔らかいシートは、落ち着かない。
武尊は、葵に言われて持ってきた玉依を抱える手に力が入った。
車から降りて、後ろから着いて行こうとする武尊を、葵が止める。
「武尊様はここで待っていてください」
「どうしてだよ」
不服そうに、武尊が言う。
「さすがに子どもは連れて入れませんからね」
「だったら、どうして連れてきたんだよ」
「一緒に行動するだけで、学べることはありますよ」
「そうだ。ガキは邪魔にならないように待ってろ」
警察官が鍵を開け中に促した。
武尊はそんな大人たちを見送りながら、再び車の中へと戻った。
部屋の中に足を踏み入れた葵は、想像以上の散乱と、生臭い匂いに顔をしかめた。
「これは、なかなかすごいことになってるな」
隣で勝が呟く。捜査資料のおかげで、部屋を見ただけでだいたいのようすが思い浮かぶ。
そして、父親が倒れていたという台所も、特にこれと言って何も見つからなかった。
「現場は保存してあるのですよね。今の状態以外で、どこか変わったところはありませんか?」
「特にないですね」
「すみませんが、お嬢さんの部屋も見ていいですか?」
幸の部屋はリビングから繫がった、すぐ隣の部屋だった。
こちらは台所やリビングと違い、整頓されたすっきりとした部屋だった。
しかしそこには似つかないような穴が何か所も空いている。
おそらく父親が空けたものだろう。
葵と勝は顔をしかめた。
幸の部屋は掃き出しの大きな窓があった。女の子の部屋としては、防犯上心配にはなるが、それだけ安全な町なのだろう。
気持ちばかりの庭があり、レンガの壁もあるので目隠しにはなっている。
「ちょっと開けますね」
窓の下には、彼女のものと思われるスニーカーが置かれていた。
道路は反対の玄関側だ。
普通の生活でこの窓から出入りすることは考えにくい。
右手には、人一人通れるような隙間があった。おそらく、道路にも抜けられるだろう。
葵は警察の許可をもらうと、間取りが分かるように部屋の写真を撮らせてもらった。
葵は警察と忠にお礼を言う。そして忠に尋ねた。
「幸さんとは、話ができそうですか?」
「今日も気分が優れないようで、家に一度帰ってから、連絡をさせてもらってもいいですか?」
「わかりました。連絡をお待ちしています」
そういうと、二人は別れた。
葵が車に戻ってくると、勝は外で待っていた。
「どうしたんですか?」
「ガキが中の鍵を開けてくれないんだよ」
葵はため息をついて、後部座席に座る武尊の窓をノックした。
「武尊様、ちょっと玉依で確認したいことがあるのでここを開けてください」
武尊はしぶしぶドアの鍵を開けて車から降りる。
「怪魔がここにいたか、玉依に聞いてもらえませんか?」
「それなら、『ここにいた』って、玉依は言ってた」
「そういう大切なことは、さっさと話せよ」
「二人で置いていったのに、どうやって話せって言うんだよ」
「なんだと」
悪態をつく武尊に、勝が大人気なく大きな声を出して脅す。
「叔父さん」
二人のやりとりを見ていた葵は、静かにたしなめる。
勝は舌打ちをして、武尊を睨んだ。
「その怪魔は、今どこに?」
「それはわからないって言ってる」
「おいおい、本当かよ……」
「別に信用しなくてもいいけど」
再び二人の間に火花が散る。
ある程度予想はしていたが、目の前で繰り広げられる光景に、葵はため息をついた。
「叔父さん、どう思います?」
「ガキが嘘をついていないとしたら、こいつはかなり厄介だな」
「そうですね」
二人の会話についていけない武尊は、不思議そうな顔をする。
「普通怪魔は突然現れるものですが、その場合何羽かが屋外に集団で現れます。
そして人を襲い、ある程度満足したら殺魔師が退治をしなくても消えて行くものです」
「ここ最近、岡山県で一番大きい被害は、お前のお袋が巻き込まれた事件だな」
武尊の顔色が変わる。
葵はさすがに勝を睨んだ。
「叔父さん、その話は今は関係ないでしょう」
「何にも知らないガキに教えてやってんだよ。
お前も兄貴も、こいつには甘いからな」
葵の非難を、勝は気にしたようすもなく、話を続ける。
「しかし、今回は違う。
おそらく家の中で発生している。しかも特定の人間を狙っているかもしれん」
「普通なら、お嬢さんだけ無事というのは、考えられませんからね」
「もっとも、その子がその場にいなかったっていうなら、話は別にだけどな」
「幸が嘘を言ってるっていうのかよ」
武尊が勝の言葉に噛みつく。
「子どもは自分の身を守るためだったら、ウソぐらい平気でつくさ」
「幸はそんなやつじゃないよ」
「数日程しか一緒にいなかった相手のことを、分かったような気になるな」
勝の言葉に、武尊は話にならないと完全に黙り込んだ。
「ところで、葵は『トビラ』って呼ばれてる一族を知ってるか?
「いえ、初めて聞きますが」
「俺も詳しくは知らんが、殺魔師の世界では古くから噂をされている一族だ。
そいつらは、怪魔を使って暗殺をすることができるらしい」
「怪魔は人間の言うことなんて聞かないでしょう。
どんな方法で怪魔を操ってるんです?」
「俺も詳しくは知らんと言っただろう。
だが、対怪魔局に勤めてるお前の先輩だったら何か知っているかもしれない」
葵は頷くと、さっそくメールを打ち始めた。
「しかし、怪魔が今どこにいて、いつ動き出すかだ。
下手したら、被害者が増えるぞ」
武尊は不安を感じ、玉依を強く抱きしめた。
そんな武尊を玉依が優しく励ました。
幸に会えたのは夕方、恭介や若菜が帰ってきてからだった。
ソファーの前で座る幸の顔色は悪く、葵たちの目を見ようとはしなかった。
幸を挟むように忠と若菜が座っている。その前に向かい合わせで葵と勝が座っていた。
「何個か質問をさせてもらうね。
君はお父さんが何かに襲われるときはどうしていたの?」
「お父さんは、私を蹴って気が済んだみたいで部屋から出ていった。
しばらくして、静かになったからようすを見に行ったら倒れていて……」
「その時に、何か声とか音とかは聞こえなかった?」
幸はこくりと頷いた。
「何も……聞いていません……」
葵と勝は目で合図を送り合う。
「この度のことは、たぶん怪魔が原因だと思うよ」
その言葉に、幸は明らかに怯えの色を見せ、忠や若菜は驚いた。
「本当に、何も知らない?」
葵の言葉に、幸はもう一度頷いた。
「あの……もういいですか?」
おずおずと忠が葵に尋ねる。若菜は幸の肩を抱いて、葵を見た。
「ええ、大丈夫です」
「あの、怪魔がこの町のどこかに潜んでいると言うことですか?」
「その可能性は高いですね。ただし、今回の怪魔は少し特殊なので、状況を整理している途中です。
怪魔が潜んでいる可能性が高くなったら、事情を説明して警察とも連携をしようと思っています」
そして、葵はもう一度幸を見て言った。
「もしも何か思い出したら、すぐに教えてください」
幸は無言のまま頷いた。
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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