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怪魔のいる世界で生きている  作者: さち
夜の月に照らされる影法師の子

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※本作には虐待や暴力など、心身に負担を感じる可能性のある描写が含まれます。物語上必要な表現として描写していますので、苦手な方はご注意ください。

車に戻った葵は、届いていたメールにさっと目を通した。

 そして、エンジンをかけ車を走らせる。

「葵、せっかくこっちに来てるんだし、うまいもんでも食べようぜ」

「僕、この辺りの店なんて知りませんよ」

「お前が使ってるスマホですぐに調べられるだろ」

「それだったら、叔父さんも持ってるでしょ」

「俺は使い方がよくわからん」

「少しは自分で使ってたほうがいいですよ」

「うるせえ。こういうのは、若いもんに任せたほうが早いんだよ」

 葵はやれやれとため息をついた。

 夜の8時ぐらいになると、車も多少減って、国道を気持ちよく走っていく。

「警察庁対怪魔局に勤めてる、お前の先輩とは連絡がついたのか?」

「ええ、警察での捜査資料を送ってもらいました。

 とはいえ、たいして役には立ちそうにないですけどね」

「泥棒とか、家庭内のいざこざとかの線は?」

「特に資産家というわけではなさそうなので、泥棒や、資産争いの線は薄そうです。

 それと奥さんは一ヶ月前ほどから出て行って、その後一度も帰ってないようです。

 自宅で離婚届も発見されているので、話し合いの途中か、一方的に別れをきり出されているか。

 ちなみに、奥さんは出て行くときに、自分の連絡先を消し、スマホの番号も変わっているようなので、連絡は取れてないそうです。

 ご近所の方も、さすがに実家の連絡先までは知らないようで。

 被害者は意識はあるようですが、会話がまだできないようなので、捜査は進んでいないようです」

「なかなか計画的だな」

 勝は苦々しく呟いた。

「被害者は、奥さんが出て行ってから、娘を虐待するようになったそうです」

「ってことは、その娘が怪しいんじゃないのか?

 もみ合ったかなんかで、誤って親父に怪我をさせたとか、押したときに、打ち所が悪かったとか」

「今日会えなかったから何とも言えません。

 ただ、病院での診察は、確かに外傷や病気の要因は考えられないとのことです。

 まあ、いわゆる魂が吸い取られている状態に近いとのことです」

 勝は難しい顔をして黙り込んだ。

「明日、家を見させてもらったら、もう少しはっきりするでしょう。

 時間が少々たっているから、僕たちには怪魔の気配が分からないかもしれませんが、玉依もありますからね」

 勝は面白く無さそうな顔をした。

「お前はさっき、あのガキのことを『当主』と紹介していたが、俺はというか、俺たち一族は誰も認めてないからな」

 葵はハンドルをきりながら、うんざりした顔で答える。

「そうは言っても、彼が玉依を目覚めさせたのだから、仕方がないでしょう。

 それに物部家のしきたりは叔父さんもよく知っているでしょう。

 父も納得して当主を譲っています」

「だから、そもそもそこも気に入らないんだよ。兄貴も葵も物分りが良すぎる!

 だいたいどこの誰かも分からん、しかも霊力も全くないガキが当主なんて、どう考えてもおかしいだろ」

「そこは、何度も話し合ったでしょう」

 ため息をつくと、これは長くなるなと、葵は覚悟を決めた。

「俺だってしきたりのことは子供の頃から知っている。

 だけどそれは、物部家の中から現れると思っているじゃないか。

 それともあれか、噂通り、あのガキの父親は本当に兄貴なのか?」

 葵はさすがに声が低くなる。

「さすがにそれは前当主を侮辱し過ぎでしょう」

 言葉に詰まった勝は、大きく深呼吸をする。

「あの堅物の兄貴に、そんなことができるなんて思ってないよ」

 葵は黙ってラジオのスイッチを押す。

「だが、一番貧乏くじを引いてんのは葵だろ。  

 後継者の話も流れ、しかもガキのお守りまでさせられてるんだから。

 みんな同情してるぞ」

「だから、それも話し合ったことです。

 僕が納得してるんですから、もう、掘り返さないで下さい」

「だけどなぁ、お前が頑張っていたのは、みんな知ってるしなぁ」

 本当にしつこい、とさすがの葵も憮然とする。

「叔父さん、『近場 魚 食事』で、検索してください。

 検索、ぐらいはできますよね」 

 突然の葵の指示に、勝はあたふたしながらスマホを触る。

「おっ、なんかうまそうなところが出てきた」

 勝の声が弾む。その画面をみせてもらうと、確かに近そうだ。

「そこに向かいますから、飲みすぎないようにしてくださいよ」

「わかってる、わかってる」

 途端に機嫌が良くなる勝に、葵は小さくため息をついた。








 恭介は家に帰ると、電気を付ける。

 そして布に巻かれて立てかけられているままの玉依を見た。

 なぜだかわからないけど、おかえりと言ってくれているような気がする。

「ねえ、武尊。

 武尊が当主になったのって、あの剣と何か関係があるの?」

「ああ。俺がこの剣を鞘から抜くことができたから、当主に決まったんだ。

 この剣が鞘から抜くことができる人が当主になるって、昔から決まってんだって」

 武尊は玉依に触れると、くすりと笑う。

「『すごいでしょ』だって。呑気なもんだよな。

 俺、こいつを抜いちゃったおかげで、大変な目に遭ってるっていうのにさ」

「一緒に来てたおじさん、武尊のことずっと睨んでたしね」

「あいつ、嫌いなんだ。

 顔を合わせたら、文句ばっかり言ってくる。

 俺が『当主』っていうのが気に入らないんだよ」

「誰も味方になってくれないの?」

「味方なんて、いないよ」

「もう一人の人も?」

「葵かぁ……。

 俺が引き取られたとき、本当に優しくしてくれてさ。兄貴がいたら、こんな感じなのかなって思ってたんだ。

 だけど、俺が当主になったとたん、『武尊様』って呼び始めたんだ。なんか、態度もよそよそしいし。

 俺、あの呼び方嫌い。気持ち悪い」

 武尊はどこか切なそうに、そう言った。

「武尊って、結構苦労してるんだね」

「そうだよ。

 あの家は帰っても、いいことなんて一つもないんだ。

 だからさ、ここに置いてくれよ。

 俺、本当に何でもする。迷惑もかけない」

 恭介は腕を組んで考えた。

「でも、ばあちゃんも厳しいんだよ。

 動物嫌いだし。

 ………でもさ、話してみる。

 今度一緒に病院に行く?」

 武尊の顔が明るくなる。飛び上がりそうな勢いでガッツポーズをした。

「本当! やったー!」

「ばあちゃんを説得するの、すごく難しいと思うけど」

「大丈夫。俺頑張るから!」

 なんだかんだ言って、武尊の存在に慣れてしまった恭介は、武尊のようすに思わず笑顔がこぼれた。


本作品は個人創作です。

一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。


「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。

無断転載・無断使用・AI学習への利用は禁止しています。


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