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※本作には虐待や暴力など、心身に負担を感じる可能性のある描写が含まれます。物語上必要な表現として描写していますので、苦手な方はご注意ください。
月曜日。学校から帰ってすぐに、恭介は須江の着替えを持って病院に行った。
いつもどおりの病室に行き、着替えの交換を済ませる。
顔色は悪くないし、相変わらず口も達者で元気そうだ。
「家の方は変わったことはないかい?」
大きく変わったことがあるのだけれども。
恭介は曖昧に返事をすると、じっと見つめた須江が静かに告げた。
「ばあちゃん、来週末には退院できそうだから、それまでにはどうにかしておくんだよ。
かわいそうだとは思うけど、動物と暮らすのは苦手なんだよ」
恭介は小さく頷いた。
来週までには出て行ってくれることを期待するけれど、最近の武尊のようすをみていると、本当にこのまま居着いてしまいそうだ。
「そうそう、大切な話があるんだけど」
背筋を伸ばして話し始める須江に、恭介の姿勢も思わず正す。
「ばあちゃん、恭介が中学校を卒業したら、施設に入ろうと思ってるんだ。
だから、恭介はお父さんのところで暮らしな」
恭介は一瞬何を言われたのか理解できずに、ぽかんと須江を見る。
「ばあちゃん、そんなに悪いの?」
「心配するほどではないけれど、ばあちゃんも歳だからね。いつこの前みたいに倒れるか分からないよ。だから、もしもの時に安心できるところに入っておこうと思ってね」
「そんな……。僕もいるし、忠おじさんもいるんだから」
「あんたは学校があるだろう。それに、忠さんにはこれ以上迷惑をかけられないよ」
恭介は返す言葉がなくて、押し黙ってしまった。
「僕……今さら父さんと暮らすなんて、考えられないよ」
「それでも、あんたの父親なんだ。どうにかしてくれるだろう」
ばあちゃんはもう、決めたんだ。
言葉こそは柔らかいが、意志の強さを感じて、恭介は何も言えないまま病院を後にした。
明るい佐藤家に行くと、なぜか武尊と若菜が喧嘩をしていた。
「どうしたの」
「この人、サイテーなの。若菜の洗濯物、勝手に触った」
若菜が武尊を指差しながら、嫌そうに睨んでいる。
「別にいいだろ。おじさんから頼まれんだし、俺、母ちゃんのも畳んでたから、別に気にしないし」
「あなたのお母さんとは違うでしょ。だいたい女の子のもの、普通触らないでしょ。デリカシーがない。
パパもパパよ。何で触らせるのよ!」
二人の間に挟まれた忠はすっかり困っている。
「ごめんごめん。武尊君が何か手伝うよって言ってくれたから、ついつい頼んじゃって」
「お前、意識しすぎなんだよ」
その一言に、さらに若菜の怒りが増す。
「そういうところが嫌なんだって。今後二度と私のもの触らないでよ」
若菜は大きな足音を立てながら、自分の部屋に入って行った。
「難しい年頃になったね」
忠は苦笑する。
「武尊君もごめんね。せっかく手伝ってくれたのに嫌な気持ちにさせちゃって」
忠が謝るが、武尊はまだ納得はできないようだ。
「俺は気にしないけど。
だいたい、嫌だったら自分ですればいいんだよ。何でもかんでも、おじさんにさせてるって、おかしいよ」
意外に真っ当な意見に、恭介は武尊を見直した。
「おじさんが甘やかしちゃったからね」
「少しは何かさせとかないと、社会に出たときに困るのはあいつなんだからな」
「武尊君、大人だね」
「母ちゃんによく言われてた」
武尊は胸を張って言った。そんな武尊に恭介は苦笑するばかりだ。
「恭介君、須江さんのようすはどうだったの?」
「来週末には退院できるって」
「よかったね」
安心する忠とは反対に、武尊の表情は浮かない。
「ばあちゃん帰ってきたら、俺、どうしたらいいんだよ」
「家に帰ればいいじゃない」
「嫌だよ。それまでに、ここらあたりで働けるとことか無いかな」
「中学生が無理に決まってるでしょ」
それでもどうにかならないものかと、武尊は考え込んだ。
そんな武尊はほっといて、恭介は忠に話を続ける。
「ばあちゃん、僕が卒業したら、施設に入るつもりみたい」
「そんなに悪いの?」
驚く忠に、恭介は続けた。
「ばあちゃんはそうでもないって言っていたけど、また、倒れたりしないか、不安なんだって」
「そんな。恭介や僕もいるのに」
「おじさんには頼れないって言ってた」
忠は須江さんらしいねと苦笑した。
「それなら、恭介君はどうするの? 一人暮らしってこと?」
隣で武尊の顔が明るくなる。それを無視して、恭介は続けた。
「お父さんのところに行けって言われた」
その言葉に、忠は沈黙した。
部屋の空気が重くなる。忠は珍しくため息をついた。
「お父さんか……」
「お父さんがなんとかするだろうって言っていたけど。
おじさん、昔お父さんと働いていたんでしょう。お父さんって、どんな人?」
その言葉に、忠はますます沈黙する。そして、言葉を選ぶように恭介に話し始めた。
「研究者としては、優秀な人だよ。僕もお世話になった先輩だし。
だけど、子育てとなると………」
忠の雰囲気で恭介は全てを悟ってしまった。
そもそも、一年に一度連絡があるかないかの人だ。期待なんてしてはいなかったけれど。
「正直なことを言えば、お父さんのいる東京に行くよりも、高校三年間はおじさんと一緒に暮らした方がいいと思う。
でもたぶん、須江さんは反対するだろうね」
絶対に、忠に迷惑がかかると言うだろう。
「わかった。
明日、おじさんが須江さんのところに行って話をしてみるよ」
「いいの?」
「もちろんだよ。たいしたことはできないけれど、恭介をお父さんのところに行かせるほうが不安だからね」
恭介は胸に手を当てて、ほっとした。
「よろしくおねがいします」
そんな恭介の頭を、忠はくちゃくちゃっと撫でる。
「さあ、夕飯にしようか。悪いけど、若菜も呼んできてくれる」
恭介は若菜の部屋に向かう。忠には迷惑をかけるのかもしれないけれど、もう少し、この優しい家で甘えていたかった。
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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