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※本作には虐待や暴力など、心身に負担を感じる可能性のある描写が含まれます。物語上必要な表現として描写していますので、苦手な方はご注意ください。
大人の話し合いが終わると、武尊は改めて若菜の家で夕飯をお腹いっぱい食べさせてもらった。
数日まともなものを食べていなかったということもあるだろうが、テーブルの上からどんどん食べ物がなくなっていくのは、なかなかの見ものだった。
少しは遠慮をすればいいのにと、なぜか恭介の方が恐縮してしまう。
そんな武尊を女子二人組は、興味深く見ていたが、さすがにあまり深いところまで、聞くことはなかった。
ただ彼がありったけのお金だけで切符を買って、ここまでやって来たと言う話には、感心するというより、呆れていた。
10時を過ぎた頃、恭介たちは若菜の家を後にする。
恭介の家についた武尊は、畳の上に転がり、思いっきり伸びをした。
「ああ、うまかった」
満足そうな武尊を恭介は白い目で見る。
「せっかくあの人迎えに来たのに、どうして帰らないの。
あの人、ここまで来たのに可哀想だよ」
「葵のこと?
いいんだよ。あいつは俺を心配しているわけじゃないから」
「そうかなぁ」
「そうそう、あいつらが心配してるのはこれ」
そう言うと、部屋の隅に置いていた、白い布で巻かれている棒を持ってきた。
武尊が大切に抱えていた棒だ。
だけど不気味で、恭介はいつも視界に入れないようにしていた。
武尊は丁寧に布を取り外すと、中から装飾の少ない剣が出てきた。
んっ、と差し出されるので、恐る恐る手に取る。
どっしりとして、思ったよりも重い。
そして触った瞬間、体全体に鳥肌が立つような寒気が走る。
怖い。
命を吸い取られるような感覚に、思わず手から離したくなる。
「抜いてみて」
その言葉どおり、恭介は剣を鞘から抜こうとした。しかし、錆ているのか、全くびくともしない。
「壊れてるの?」
恭介は武尊に剣を返す。すると今度は武尊が柄を持って鞘から抜いた。すると、驚くほどあっさりと、青白い光を集めたような刀身が現れた。
「どうして?」
そして今度は抜いた剣を恭介に渡す。
武尊から恭介に手渡された瞬間、刀身の輝きは消え、くすんだただの鉄の塊になった。
「どういうこと?」
武尊に返すと、再び輝きが取り戻される。
武尊は鞘に戻すと、再び丁寧に白い布を巻いた。
「神剣玉依って言うんだ。これがあいつらの大切なもの」
「盗んで来ちゃったってこと?」
武尊は首を振る。
「葵の父ちゃんは、俺のものだって言ったから、俺のものだと思ってんだけど。
これを持って葵んちから出たら、めちゃくちゃ怒られるんだよな」
「そんなの、無理に持ち歩かなかったらいいじゃない」
「それができたら、俺もそうしたいけれど、こいつを置いて出ていったら、俺、頭は痛くなるし、気分は悪くなるし、動けなくなるんだよ」
「さっぱり意味がわかんない」
武尊は困ったように恭介を見た。
「だよな。意味わかんないよな。信じてもらえないと思うけど、こいつには意思があって、俺はどういう理由か気に入られていて、意地でも離れないって言ってんだよ」
はあ、と恭介は頷くしかない。
「恭介のことも言ってるよ。『久しぶりに恭介みたいな魂に出会った』って」
「どういうこと?」
「さあ」
にわかには信じられない。しかし目の前で刀身の変化を見た恭介は、さすがに全て嘘だとも否定できなかった。
そして恭介の中の武尊取り扱い説明書は『武尊、変な奴』から『武尊、凄く変な奴』と上書きされた。
若菜と幸は同じ布団に寝っ転がりながら、おしゃべりを続けていた。
「恭介にも困ったもんだわ」
話題はもちろん、武尊のことだ。
「うんうん、さすがに驚いたわ。でも、若菜。すごいじゃない。
何か連れて帰ってるって、ズバリ当たっていたわね」
「そりゃあ、生まれたときからの付き合いだもの」
若菜はどこか自慢気だ。
「それだけ?」
「それだけ……だけど」
はぐらかす若菜に幸はさらに追い打ちをかける。
「知ってる? 最近恭介ってモテるんだよ」
「何、それ」
「恭介、眼鏡を外したら実はイケメンだって噂が広がってるのよ。
それにさ、基本的に優しいしね」
若菜は思わず沈黙する。
「あの眼鏡って、伊達って本当? それに、髪だって、本当はもっと明るいんだって、保育園から一緒の子が言ってたんだけど」
「……本当だよ。恭介もともと色素が薄いから。
恭介のおばあちゃんが、髪の毛の色とかで、クラスで浮いちゃうのを心配して、染めさせてるんだ。
眼鏡も目の色が目立たないようにってかけてる」
「さすが若菜、恭介のことは何でも知ってるね。
でも、どうするの。恭介が告白されたら」
若菜は首を傾げた。
「告白、されるかな。
恭介、独り言多いし、何でもすぐに拾ってきちゃうし、おばあちゃんっ子だし、ぼんやりしてるし」
「そういうところがまとめていいんじゃない? 若菜みたいにね」
若菜は再び沈黙し、布団を頭から被る。そして、その中からちらりと幸を見た。
「バレてる?」
「バレバレ」
恥ずかしいとさらに隠れようとする若菜の布団を幸は強引にめくった。
「告白とかしないの?」
「しないし、できないよ。
断られたら、どんな顔をして会えばいいのか分かんないし」
断られること前提に考える若菜を幸は不思議に思う。
「断るなんて、ないと思うけど」
「わかんないよ。そんなの」
うじうじ悩む若菜を、幸は本当に可愛いと思う。
「幸はどうなの。好きな人とかいないの?」
反撃とばかりに、若菜が話を変えてくる。
「私は今は考えられないな」
「だったら、どんな人がいいの? 例えば、今日来た、あのお兄さんみたいな感じ?」
「レベル高すぎでしょ。それに、ちょっと怖そう」
「何か、厳しそうだったもんね」
「先生だったら、生徒指導とかしてそうじゃない?」
「確かに!」
二人は顔を見合わせて笑った。
「幸は高校どうするの? 頭いいから、進学校?」
「迷ってる。早く家を出たいから、どっか寮があるとことかないかなって思うし」
「そんな遠くに行くつもりなの?」
悲しそうな顔をする若菜に慌てて言い訳をする。
「ちょっと、思っただけ。でも、たぶん地元の高校に行くと思う」
「だったら、一緒だね! でも、幸は進学コースに行くだろうから、クラスは一緒になれないね」
「若菜も頑張ったらいいんだよ」
「だめだよ。若菜バカだもん。勉強も嫌いだし」
「私が教えてあげるから。一緒に頑張ろうよ」
若菜は少し考えてから、小さく頷いた。
「ちょっと、勉強頑張ってみる」
「今からだったら、受験には間に合うって」
幸の励ましに、若菜は握り拳を作って頷く。
「本当、幸は大人だよね。先のことも考えてるし。
あとさ、日焼けしたくないからって、いつも長袖着てるのも、意識高いって感じがする」
幸は無意識のうちに二の腕辺りを、さすっていた。
それに気が付かない若菜は、笑顔で話続ける。
「ずっと友だちでいようね。
就職したり、結婚したり、おばあちゃんになっても、一緒にいようね」
幸は嬉しそうに頷いた。
「ねぇねぇ。写真とっとこ! 今日の分」
「いいけど」
「私がスマホを買ってもらったら、データ全部送ってね」
「わかったわかった」
二人はああでもない、こうでもないと言いながらも撮り続けた。二人の部屋の電気が消えることは、深夜までなかった。
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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