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ドアを開けた瞬間、カレーの香りが漂ってきて、思わず二人はお腹を押さえた。
二人は荷物を置いて、台所へ駆けつけると、テーブルに座る。
タイミングよく料理を出してくれる葵に感謝をしながら、二人は挨拶をしてさっそく食べ始める。
成長期の高校生はあっという間におかわりまで食べ尽くした。
少し落ち着くと、葵が暖かいお茶を出してくれる。冷たいお茶と違って一気に飲むことはできないが、ゆっくり飲むことで不思議と気持ちも落ち着いてゆく。
「ところで、僕もあの噂の真相、聞きたいんだけど」
急に人の悪そうな笑みを浮かべて、恭介が聞いてくる。
本当にどこまで噂が広がっているんだろうと、武尊は恐ろしくなった。
「友だちだよ、友だち。
だって、宮本も『友だちになってほしい』って言ってただけだし」
何気ない武尊の言葉に恭介は呆れる。
「それって、半分は告白されたってのと同じだよ」
「そうなのか? いや、でも、俺に興味があるって言うよりは、どっちかっていうと、殺魔師とか、そっちに興味があるような気がしたんだけど」
「そういう話から始めたほうが、武尊と会話しやすかったからじゃないの?」
武尊は眉をひそめて考える。もう一度、あの時の会話を思い出してみる。
確かに恭介の言うことも間違っていないような気がする。
自分の印象と恭介の言葉とのあいだで、考えが揺れる。
「もしかしたら、殺魔師への憧れを、恋愛感情と勘違いしているのかもしれませんね。
付き合ってみたら、思っていたのと違うってことは、よくあることですし」
「葵さんも経験があるんですか?」
「それはご想像にお任せします」
葵が余裕たっぷりの笑顔を向ける。
「どっちにしても、武尊はどうするの?」
「どうするって何が?」
「返事だよ。返事。
もう、転校もするんだから、返事はきちんとしとかないと」
その言葉に武尊は不思議そうに答える。
「友だちになっただけなんだから、返事とかっていらないだろう」
「そういうもんなの?
葵さんはどう思います?」
助け舟を求めるように、恭介は葵を見た。
「プライベートなことなので、私はお返事しかねますが、転校することはお伝えしたほうがいいと思いますよ」
「……そうなんだ。うん、じゃあ明日にでも言っとく」
歯切れの悪い武尊の反応に、葵と恭介は苦笑した。
何だかまた胸が重くなるのを、武尊はじわじわと感じていた。
次の日、武尊はいつ話をきり出すのがいいのか考えているうちに、あっという間に午前の授業は終わってしまった。
生徒会に入ってる千鶴は忙しいのか、一言も話す間もなく行ってしまった。
そのことにほっとしながら、文化祭の準備をする。
クラスの女子は、なんとなくよそよそしい感じもするが、声をかけて来ないので、武尊は気にしないことにした。
準備も終わり、そろそろ帰ろうかと思っていた頃、千鶴が戻ってきた。
武尊の前に来ると、上目遣いで話しかける。
「武尊、ちょっといい?」
「あ、うん。俺も話をしたかったし」
クラスの女子が一斉に色めき立ち、男子は好奇の目で武尊を見た。
その視線から逃げるように、武尊は千鶴と教室を後にした。
できるだけ人気のないところをと思っていると、千鶴は非常階段のところに武尊を連れてきた。
そして振り向くなり話し出す。
「うちに隠してることない?」
そう切り出されて、いったいどのことかと考える。そんな武尊をじれったく思ったのか、千鶴は続ける。
「転校のことや。どうして教えてくれんかったん」
「急に決まったから」
「それから、昨日、守ノ宮さんたちと楽しく話してて、連絡先交換してたって、友だちが教えてくれた」
「それは、話の流れでしかたなく……」
煮え切らない武尊の態度に、千鶴は苛立ちを募らせる。
「やっぱり武尊も、守ノ宮さんがええの?
同じ殺魔師だから?」
「そんなの関係ないし、本当にたまたまだって」
「じゃあ、うちとも連絡先交換して」
詰め寄る千鶴に武尊は距離を取った。
「今、スマホ持ってない」
その言葉を拒絶と受け取ったのだろう。千鶴は悔しそうな顔をする。
「武尊はうちのこと、嫌いなん?
うちは武尊のことが……」
その言葉を武尊は遮った。
「宮本のことは友だちだと思ってる。それ以上は考えたことがない」
それだけ伝えると、武尊は千鶴を振り切って、非常階段を後にした。
千鶴を振り向くことは、できなかった。
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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