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文化祭を週末に控えた月曜日。学園は浮かれた雰囲気に包まれていた。
今週からは授業は午前のみとなり、午後からは文化祭と体育祭の準備をすることになる。
体育祭の主な準備は、伝統の応援合戦の練習とその時に着る衣装の作製。
そして文化祭の準備は文化部の展示物や、クラスの企画物の作成だった。
レモネードスカッシュと手作りクッキーの店をすることになっている武尊たちのクラスでは、内装の準備をしていた。
女子の主導のもと、武尊は松本と看板を作っている。意外にも字のきれいな松本のおかげで、それなりに見栄えする物はできている。
武尊が下書きに色を付けていると、松本が小さな声で聞いてくる。
「宮本さんと守ノ宮さんに告白されたって、ほんま?」
武尊は唖然として、手が止まり松本をみた。
「何、それ」
「先週のあれ、守ノ宮さんが宮本さんに、杉原君にちょっかいださんといてって、言いに来たって噂になっとんやけど」
武尊はあまりのことで言葉が出ない。
「それって、どこ情報?」
「知らんけど、結構広まっとるみたいやで」
まさか松本が広めたんじゃないだろうなと、疑いが頭をよぎる。それに気がついたのか、松本は首を振って否定した。
「なんや、女子の間で広まったらしいよ。ほら、グループLINEとかであっという間に。
二人ともよう目立つし、宮本さんは特に女子にも人気やから、取り巻きみたいな子らが盛り上がったらしいわ」
その全く根拠のない話に、武尊は大きなため息をついた。
「嘘、本当に嘘」
「ほんま?」
松本は探るような目を向けてくる。
「やけに疑うんだな」
「実は、俺ら最近よう喋ってるやん。だから、本当のこと聞いといてって、女子から言われとるんよ。
俺もあほらしいなとは思っとんやけど、逆らえんし」
とはいえ、好奇心は抑えられないような顔をしている。
「で、本当はどうなん」
「本当に、嘘。だいたい、俺、体育祭が終わったら転校するし」
今度は松本が驚く番だった。
「なんやそれ。初耳なんやけど」
「まだ松本にしか言ってない」
「井久見君も?」
「うん」
さらに声をひそめて、松本が聞く。
「それって、殺魔師の仕事が関係しとるん?」
武尊は頷く。
「ショックや。せっかく仲良うなれたと思ったのに。
寂しゅうなるわ」
そう言われて、武尊も転校する実感が湧いてきた。たった数ヶ月の学園生活だったけど、楽しい思い出もいくつもある。
「遠くに行っても、友だちでおってな。俺、殺魔師の友だちがおるって、自慢するから」
「なんだよ、それ」
「でも、それやったら、ますます噂は嘘やな。いや、遠距離ってこともあるか」
「そんなん無いから」
思わず、関西弁が武尊の口から出ると、松本は一瞬驚いて、それから寂しそうに言った。
「残念やな。これから関西のツッコミを教えていこうと思っとったんやけど」
「ありがとうな。いろいろ」
「やめて。ほんま泣けてくる」
松本に出会えて良かったと、武尊は心の底から思った。
今日の準備は終わり、下駄箱の前で恭介を待っていると、聖子と彬が通りかかる。
聖子は武尊を見ると、顔をしかめた。それにつられて、武尊も渋い顔になる。
「あんた、あの子と付き合うことになったん?」
誰も彼もどうしてその話になるんだろう。
「違うけど」
「絶対に止めとき」
「なんで、お前がそこまで言うんだよ」
「うち、金曜日から、知らん女子から悪口のLINEが止まらんわ。言いたいことあるんだったら、直接言ってくればええのに。
顔が見えんと思って言いたいこと言ってくるなんて、卑怯やわ」
女子の陰湿な一面が見えた気がして、武尊は嫌な気持ちになる。
「でもそれって、宮本が悪いわけじゃないだろ」
「そらそうかもしれんけど、そういう友だちしかおらん子なんか、本人の性格もしれとるやろ」
偏見極まりない意見だが、なぜか説得力がある。
「で、守ノ宮はどうしたんだよ」
「そんな子らに付き合うだけ、時間の無駄やけん、全員ブロックや」
一刀両断の答えに、武尊は思わずほおを緩めた。
「うちなんか、宮本さんと初めて話したのに、どうしてそこまで言われんといかんのか、理解できんわ」
「知り合いじゃないの?
宮本、小さい頃、守ノ宮を見たことがあるって言ってたけど」
聖子は記憶を探るように考え込む。
「やっぱり知らんわ」
そこへ恭介が合流する。
「なんか楽しそうじゃない?」
その言葉に、二人は息を合わせて否定する。
恭介は苦笑しながらも、それ以上は言わなかった。
「ところであんたら、転校するんやてな」
「ああ、もう変な特訓するんじゃねーよ」
「わかっとる。お父様にも、また叱られたわ。
やから、次はもう少し安全なこと考えるわ」
武尊と恭介は呆れて顔を見合わせた。
「どうして、そこまで強くなりたいんだよ」
「そら、私も一条家で活躍したいんよ。玲子伯母様は大学生の頃には一条家に属しとった超エリートや。だけど、残念ながら今のうちには、技術も霊力も経験も遠く及ばん。遠い遠い夢なんや」
そして武尊を指差す。
「そもそも、霊力のないあんたが、あんな武器を使って戦うなんてズルや。うちは認められん。
やけど自分にないもんにこだわっとってもしょうがないから、うちはできることをやって行くわ。
あんた殺魔師続けるんやったら、よう覚えとき。次は絶対に負けへんから!」
その勢いに押されながらも、意外にも聖子の言葉に腹が立つことはなかった。いや、この短期間で彼女の性格に慣れてしまったのかもしれない。
「伯母様、水曜には京都に帰って来られて、学園にも来るって言っとったから、そんとき練習をつけてもらうつもりなんや」
自慢気に聖子は言う。
「その時、僕も話ができないかな。札を誰からもらったのか、聞きたいんだ」
大人しい恭介が真っ直ぐに聖子を見つめ言う。その意外な姿勢に聖子も驚いた。
「伯母様、忙しい方なんよ。次の日の式典が終わったら、すぐに東京に戻るって言っとったし」
「少しでいいんだ。時間は取らせないから」
全く引かない恭介に何かを感じた聖子は、言葉を選びながら伝えた。
「約束はできんけど、聞いてみるわ」
さっそく恭介が聖子と連絡先を交換する。その流れで、その場にいた4人もお互いの連絡先を交換する。
「あんま期待せんといてよ」
そう言いながら、聖子と彬は帰っていった。
二人を見送りながら、武尊は感心する。
「恭介って、たまに驚くほど大胆だよな」
「少しでも手がかりが欲しいからね。
それに守ノ宮さんって、言い方とかきついけど、結構優しいんだ。僕も転校当初お世話になったし」
初めて聞く話に、武尊は驚いた。
「だだ、あの性格だからね。一言も二言も多いんだ」
「それ、わかる気がする」
二人は坂道を下りて校門を出る。この校門もあと数回しか通らないのかと思うと、感慨深くなった。
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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