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写真


   写真


 禎子はスマホの写真を見つめる。つい昨日撮影した写真。母に見せたいとお願いして撮影を許してもらった写真……

 ――しかし、母に見せていいものだろうか……

 ――昨日……


 昨日、禎子は再びあの人――彼を訪問していた。


「それで、DNAは調べたのかね?」彼は禎子に尋ねた。

 相変わらず無表情であったが、少し柔和な雰囲気もした。

「いいえ、そんな……」

「調べようとは思わなかった?」

「どうしていいか、わかりません。ただ――」

「ただ?」

「一度母に会ってもらえませんか?」

 禎子の問い――いや、お願いに彼は無言を貫いた。

「母はもう――」

 彼は禎子を制し、少し下を向いて首を横に振った。

 そのまま沈黙が続く。禎子も項垂れる。


「おねぇちゃん」顔を上げると好美がいた。「遊んで」

 彼が好美を優しく引き寄せる。

 言動だけで判断すれば好美は幼い子供のようだ。しかし、その容姿は若い女性だった。

「ちょっと待っててね。おねえちゃん、もう少しパパとお話したいの」

 パパ()()、と「さん」を付けるべきだっただろうか?

「いきなり母に会ってください、というのはご迷惑だったかもしれません。でもせめて、写真を撮らせて貰えないでしょうか? 母に見せたいのです」

 彼は困った顔で何も答えない。

「写真?」好美が嬉しそうにはしゃいだ。「撮ろう! みんなで! パパ、みんなで写真撮ろう!」

「そうだな」彼が少し嬉しそうに「好美はお姉ちゃんが好きか?」

「好きだよ、おねえちゃんと一緒だと嬉しい!」

 彼はそのまま好美を抱き寄せた。

「写真はみんなで撮るなら――」

「わかりました」禎子はセルフィモードにカメラを切り替える。「ええと、あの――」

「ああ、じゃあ並んで」

 彼が好美を引き寄せて頬を寄せ合う。禎子も好美の脇に少し離れて顔を近づける。

「おねぇちゃん、くっついてぇ」

 彼、好美、禎子、三人並んで顔をくっつけて写真を撮る。禎子はタイマーをセットしシャッターを切ったスマホを前にかざす。


 そうして撮影した一枚の……


 家族写真?

 父親と二人の姉妹?


 これを母に見せていいのだろうか?


「好美は君を気に入っているようだ」別れ際に彼が言った。

「そうみたいですね」

「優しくしてやってくれないか」

「ええ」


 禎子は再度、母のことを話題に出したかったが、彼はそういう雰囲気ではなかった。

「それでは、今日は――」

「ああ、ありがとう、また……」

「また?」

「ああ」

 彼は相変わらず無表情だったが、少し微笑んでいるようにも見えた。

「君に見せたいものが……」

「え?」

「いや、それは次の機会に案内する」

「案内?」

「ああ、ここじゃないんだ。詳しくはいずれ」

「はい」

 禎子はスマホを大事に抱えたまま、彼のマンションを後にした。




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