表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/30

第26話 12:00*馬刺し・ほうとう


 GW9日目。


 つまり、連休の最終日だ。





 俺はまた会社に出向き、人の少ないオフィスを歩いていた。そして、機械の前にいる。マスターの言ってたように、そもそもの本体の故障であるなら俺がどれだけ頑張っても意味がない。そして、分解して修理をするのも良くない。出来るけど良くない。


 色んな機械が状態を示すランプを見る。どれも正常だとランプは点灯や点滅をしている。いくつかネット接続に関係のない機械もあるが、関係ないんだから関係ない。邪魔だけど。もう考えられることもなくなりどうでもいいことを巡らせていたらこの階に誰か一人やってきた。


「あー!!こんな所に置き去りにされて!!」


 知らない男性だ。”こんな所に”と言っていた。多分、彼の普段仕事する階はここではないのだろう。見覚えもない。


「マジかっ!!しかも電源点いてるしっ!!うわぁ〜!!信じらんねぇー!!いつからだよ!!」


 ・・・俺に話しかけているのだろうか?


「これ、連休の前日くらいからありましたよ」


「マジか!!じゃあまだマシだったか〜!いやいや!こんなもの置いてあったら仕事にならなかったでしょ?!それにしても誰がなんで?!しかも電源入れっぱなしで?!」


 男性がネット通信と関係のないその機械を持った。そしてパチパチとボタンを押している。・・・えっ?!ちょっと待って今この人”仕事にならなかったでしょ?!”って言った!!!


 えっ———それってつまり———?!?!



「「ネットに繋がらなかった」でしょ?」



 ケロっとした顔で男性が言い当てた———っ!!!




・・・ーーー



「電波妨害機?!兄ちゃんの会社何やってんだ?スパイか?!」


「格好いいのーー!!お兄さん影の活躍人なのーーー!!」


「ごめん、うさぴょん、違うんだ。俺は影の苦労人なだけだ・・・」



 そう、男性がその場でスイッチを切った機械は”通信妨害機”。有線で繋いでいれば問題はなかったのだが、この時代に優先LANで繋いでいるPCは俺の階には無かった。だからどのPCもまともにネットに接続が出来なかったのである。


「つか何者だよその男!!見たことない男だったんだろ?!本当に兄ちゃんの会社の人間かどうか怪しくねぇか?危ねぇ機械も持ってってよ!」


「俺の会社、人間の出入りに関してはかなり厳重なんです。ちゃんと入口に警備員さん立ってますから」


「じゃああれか?まずは別のやつが最初に動物に機械持たせて侵入させたとかか?それを回収しにきたんじゃねぇか?本当は妨害機じゃなくてデータ搾取する特殊機械とか?」


「あ、俺の世界だと動物が機械持って会社に入ってくるとかまずないんでその線はないです!!そもそも会社に入って来れた時点で不審者ではないはずなんですけど」


「まぁ、兄ちゃんみたいな人間が怪しまないってんだったらいいけどよ!」


「とにかく!うさぴょんは大変さはわからないけど!問題が解決して!お兄さんが明日怖いおじさんに怒られなくて済むなら良かったの!!おやすみの間もお仕事してたけど、ここに遊びにきてゆっくりしてくれたからうさぴょん嬉しいの!本当に良かったの!!」


「———っ!!うさっぴょっ・・・!!俺の事をそんな風に・・・!!」


「まぁそうだな!拍子抜けしたとは言え、もう会社のネットは繋がるんだ。この件で兄ちゃんが大目玉くらうなんて未来はもうないわけだっ!」


 そうだっ!!俺は明日怒られなくて良いんだ・・・!!それに連休も全部休んだわけじゃないけど、途中途中休んで楽しませてもらった!買い物もしたり映画観たりと普段できないことができた!!解決したのは俺じゃないけど、問題自体は解決したんだから良いだろう!!しかも俺がずっと一生懸命やったって意味が無かったんだ!!気持ちを切り替えて遊んで本当に良かった!!なんかデキ女さんに感謝だ!!


「連休最終日の朝、早々に問題解決して良かったじゃねぇか!!ゆっくりしてもいいし、遊びに行っても、帰っても良し!ちゃんと楽しめよ?」


「はい!!まずは早めのランチを頂きます!!!」


「あいよっ!シェフ!!ランチ一つな!!」

 ———カンッカンッ!!


 マスターがオーダーをして、シェフが中華鍋で返事をしたその時だった。入口の扉が開いた。しかし、時計は俺が入った後から動いていない。12時のままだ。そしてそのまま扉が開いた・・・ということはっ?!


「よっす、こんちは!」


「おう!コーヨー!」


「あー!コーヨーなのー!」


 人気バンドのヴォーカルの"momiji”さんこと、この店での呼び名、”コーヨー”さんだ!!!


「こんにちはっ!!!」


 一ヶ月ぶりにまたこの店でお会いできた!!俺超ついてる!!会社の問題も解決して、しかもコーヨーさんにも会えるなんてめちゃくちゃ幸運すぎないかっ?!


「やぁ!お兄さん今日も仕事なの?GWなのに?って言っても1日くらいずらして働く人なんて今は多いか!」


「えぇ、まぁ・・・トラブルで割と出勤してたんですけど、でも今日解決したんです!明日からの全員出社までに問題解決できて良かったです!!」


「そりゃ良かったなぁ!でも随分献身的だねー。もっとさ、肩の力抜いても大丈夫だと思うよ!まぁお兄さんみたいな人は多分真面目で人に優しい人間なんだろうねー」


 momijiさんにそんな風に言ってもらえて感動・・!!やばい!!俺なんかヤバいって感情が!!!



「お待たせ・・・?しました?今日のランチは”馬刺しとほうとう”です!!」


「全然待ってません!」


「めっちゃ早いじゃーん、何?シェフは何時に何人来るかも予測できるようになったの?もう誰も勝てないじゃーん!」


 コーヨーさんが店に入ってきて大して時間経ってないのにすぐに二人分出てきた!ちなみにうさぴょんは今日は焼き菓子とドリンクのセットだけらしい!


「お馬さんのお肉ー!これ、美男子が大好物だって言ってたのー!」


「へー、美男子は桜肉が好きなのか。草食系な顔して肉食なんだね。今日はもうレコーディング終わったし、ニンニクたくさんつけて食べるかっ!頂きます!!」


 コーヨーさんがサラッと重要事項を言った!!レコーディングって言った!!新曲が出るんだ!!!楽しみだそして目の前の馬刺しもほうとうも楽しみだ俺も一緒に———


「頂きますっ!!」


 久々の馬刺しには、俺もニンニクをたくさん箸で摘んで肉に乗せて巻いた!もう会社のPCがネットに繋がったんだから俺は会社に戻らなくて良いんだ!!大体戻っても人いないし気にしなくてもいい!!よし!思う存分にニンニクと一緒に食べるぞ!!!


「———っ!!美味いっ!!!」


 お酒が欲しくなるくらいの旨さだ!!これは日本酒か焼酎でこうっ・・・キューーー!!っと行きたいくらい!!あぁああぁ、馬刺しもいいけど熱いうちに”ほうとう”だ!!一人分の土鍋に入ったほうとう。かぼちゃが溶けてオレンジ色の美味しそうな汁が食欲をそそる・・・!!しかし!!火傷しないように気をつけないと!!

 息で冷まして啜るというより口に入れた・・・このもちもち感が良いんだよなぁ〜!!あと、このトロトロの汁が俺好きなんだよなぁ〜!!


「「美味いっ!!」」


 ほうとうを口にして思った感想を出したらコーヨーさんとタイミングまでも被った。


「コーヨーとお兄さん、また一緒の事言ってるのー!面白いのー!」


 ———カンッカンッ!!


「ほらっ味変用の調味料もあるぜ。もちろんシェフの特選だ。一味唐辛子に、七味唐辛子、山椒・・・あと青のりと、ごまと・・・柚子胡椒だってよ?」


「俺、柚子胡椒がいいです!!」


「俺、胡麻と山椒頂戴〜!」


「そこは好みが違うんだね〜!!」


 うさぴょんは楽しそうに言う。俺は夢中で馬刺しとほうとうを食べた。そして柚子胡椒を入れて味変したほうとうはさらに美味い。





・・・ーーー

 



「いやー!食った食った!めっちゃ美味しかったわー!!」


「本当に美味しかったです!!」



 食べ終わってゆっくりして、お会計を済ませた。今日はこの後少しだけ買い物してから帰ってゆっくりしよう!!早めにお風呂も入って、十分に睡眠時間をとるぞ!!・・・とはいえ、やっぱり今朝の事がちょっと気になるなぁ。



「あの電波妨害機は何の為に俺の会社にあったんだか・・・今後使う予定でもあったのかな・・・?」


「え?今なんて・・・?」

 

 ボソッと呟いた言葉にコーヨーさんが反応して、不思議がって扉を出た俺を追いかけてきた。俺は店の外に出て、扉を手で押さえながら喋る。外を見た。あぁ、今日も日差しが強い。人も多いなぁ・・・


「電波妨害機が会社に置かれてたんです!って言っても忘れ物みたいな感じで。それが原因で俺のデスクのある階のネットが全然使えなくてずっと困ってたんですよ〜!でも、今朝見覚えのない男性でしたけどそれを見つけて持って帰ってくれたので万事解決です!でもどこの部署の人かわからなかったんですよね?なんなら他の会社の人が電源つけたまま忘れてってそれを取りにきたのかもしれませんけど・・・」


「・・・今朝?電波妨害機———?えっちょっと待ってそれってもしかして俺の実家の会社が———」


「え?ご実家の会社がどうかしました?」


 俺の実家の会社がなんて言葉が聞こえたので振り返ったらそこにはコーヨーさんはいなかった。あれ?俺、扉押さえてたよね?コーヨーさん通ってないよね?店の奥にはマスターも和服メイドさんもうさぴょんも居る。こっちは見てないけど。



 ・・・やっぱり、このお店への入り口はこの世界に一つじゃないんだ・・・!そして、コーヨーさんはこの扉とは別の扉から入っている・・・



 ———ってかっ?!電波妨害機がコーヨーさんの実家の会社となんか関係あるのっ?!気になり過ぎるのに次に会うまで聞けないじゃんっ?!?!?!



 問題は解決したが、最大の疑問が残ったまま俺のGWが過ぎ去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ