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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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27/30

第27話 7:50*牛ステーキ


「ねぇ、有真君。昨日出勤した?」


「はい。ネットを直すってお話でしたじゃないですか。え?昨日から使えるはずですけどまさかまた使えなくなりました?そんなはずないんですけど」


「いやぁ、ネットは使えるんだけどね、問題はそこじゃないの」


 おかしい。ネットが使用できるなら俺が呼び出されて怒られる理由がないのに俺は朝から上司のデスクの前立たされている。なぜだ。


「昨日ね、会社に入場記録がないのに防犯カメラに部外者というか最早不審者が映ってたって警備から言われてね。それがどうもこの階に来たらしくてね?だから、君見てない?不審者?」


「不審者かどうかはわかりませんが、昨日知らない人とこの階で会いました。背の高いメガネの男性です」


「それだよ!!その人だよ!!多分!!いや!容姿は知らないけど!!警備室に行って!!早く!!」


 上司に急かされて警備員さんのいる部屋でしこたま質問というか尋問された。お陰様で俺の午前中の業務は一切進みませんでした。



・・・ーーー



「兄ちゃん、随分不機嫌そうだな・・・ネットに使えるようになったからむしろ今日は褒められるんじゃねーかって思ってたんだけど・・・?」


 マスターが店に着いた俺の顔を見てそう言ってくれた。俺は褒められるなんてことはありはせんでも、怒られる事はないと思ってた!!何が『不審者を見かけたらすぐに報告しないんだ!!』だよ!!めちゃくちゃ好青年?人当たりの良さそうな男性だったわ!大体他の階の社員の顔も知らないんだから部外者や不審者だなんてわかりっこない!!挙動不審ならまだしもかなり堂々としてたし!てかそれを未然に防ぐためのガードマンとか受付とか警備員とか社員証を翳して”ピッ”って会社に入れるシステムなんでしょうが!!!???


「俺、本当ただのとばっちりなんですけどっ!!」


「よしよし、とりあえず座って落ち着けって!」


「お兄さん、お疲れ様です」


「グワーッ!!グワッグワーーーーー!!!」


 美男子とアヒル副隊長だ!!アヒル副隊長は何やら怒っている様子だ。


「アヒル副隊長、大丈夫だって、落ち着いて。お兄さんが困っちゃうから!」


 美男子がアヒル副隊長を宥めている。もしかして———!!


「アヒル副隊長が、今からお兄さんの世界のお兄さんの会社に行って話をつけるって言ってるんだ・・・ちょっと猪突猛進なところがあってね・・・アヒルなのに」


「いやいや!!気持ちだけで本当にありがたいです!!そんなこと言ってくれるのはこの店にいる方だけですからっ!!」


「アヒル副隊長案外血気盛んだなぁ」

 マスターがコーヒーを淹れながらクツクツと笑っていた。



 ———カランッ・・・



 扉が開いた。俺は後ろを振り返って扉の時計を見た。7:50分。マスターも時間を紙にメモをしている・・・つまり初めての時間のお客さんだっ!!

 扉から店内に入ってきたのは可愛い可愛いテディベアの人形だった!!


 クマじゃなくて人形っ?!人形ご飯食べれるの?!中の綿が汚れないっ?!


「ぼく、お店入ってもいいですかー?」


 間伸びした可愛い声が響いた。っく!!うさぴょんとはまた違う癒し系だっ!!!癒し系なのになぜか心にダメージを負った俺!違う!これは辛いダメージじゃない!!可愛いと癒しが暴走したダメージだっ!!


「おう!いらっしゃい。店の前の看板を読んでもらえて了承してもらえるならなっ!」


「大丈夫ー」


「じゃ、よってきな!ランチは日替わり一種類。ランチ以外は焼き菓子とかだっ!どうする?」


「ランチくださーい」


「あいよっ!!シェフ!!ランチ追加で一つな!!」


 ———カンッカン!!




「んっしょ、んっしょ!!」


 俺たちがいるカウンターに向かってきて、一生懸命椅子に座ろうとよじ登っている。小さいわけじゃないけど大きいわけでもないテディベア。

 めっちゃ可愛いテディベアの登場で俺の朝のお叱りの件なんてどうでも良くなった。可愛いものがみんな好きなのか、美男子もアヒル副隊長もテディベアに夢中だ。というか、なんて呼べば良いんだ?そう思っていたらマスターも同じ事を考えてようで呼び名について話し始めた。


「クマじゃなくてテディベアな。・・・そうだな、あ!あれに似てるじゃねぇか!ダッf」


「わーーーーー!マスター!それは世界によっては名前を出さない方がいいかと思いますので本人?の希望がないなら”ベアくん”とか”テディくん”とかにしましょうよっ?!」


 なんかマスターがうっかり名前を言いそうになったのですかさず止めた!!


「なんでもいいですよー」


「じゃあ”ナン”って名前にするか?」


「マスター、お兄さんの候補から決めましょうよ?」


「グワーッ!」


「洒落の通じねぇ奴らだなぁ!!ったくよぉ!!」



・・・ーーー


「じゃあ、ぼくの事は”べア”と呼んでください」


 テディベアのベアくんと呼び名が決まった。随分とおっとりとしているが、話すとしっかり者である。のんびりしているだけで思考回路は人間と変わらない感じだ!!ここ、そういう方が多いな?



「お待たせ致しました!本日のランチの”牛ステーキ”です!」


「くぅあーーっ!!頂きます!!」


 鉄板だ!ジュージューいってる!たまらず声を上げてしまった。めっちゃ美味しそうだ!!食欲をそそる肉の匂い・・・!しかも牛肉ときた!これは食べたら元気出るぞ!!午前中に全くできなかった仕事も含めて全部いけるかも・・・!ちょっと無理はするけど!


「わー!凄く美味しそうー!いただきまーす」


 隣のベアくんもウキウキで牛ステーキを眺める。ナイフとフォーク、上手に使えるのかな?と思ったらベアくんのお肉は既にカットされている!!シェフナイス過ぎる!!


「ぼくのお肉はもう切ってくれてるー。ありがとうございまーす。———ん、これはイケナイ美味しさだぁー!」


 激しく同意。美味すぎる。これはアレだよ、高級和牛のA5ランクと同じじゃないのか?!異世界産の牛のレベルの高さよ!!





・・・ーーー



「へぇー!ここはいろんな世界の人が集まる場所なんだー!だから人間のお兄さんもここにいるんだねー」

「ん?ベアくんの世界では人間とはあまり一緒にいないの?」


 食後の団欒である。


「ベアくんの世界では、人間はなんだか特殊な立ち位置なのかな?」


 美男子が何か思うことがあったのかベアくんに質問した。


「うん!人間はいつも大きな建物の中の決まった自分だけの機械の中にいて、外出て動いているのをあまり見ないかな。みんなカプセルの中で眠ったままで、脳波だけで生きてるっていうかー?」


 ん?


「グワー?」


 アヒル副隊長も俺と同じような疑問そうな声を出した。あれ?人間がカプセルの中で眠ったまま?脳波だけで生きてる?それって生きてるの?!


「え?人間が・・・支配されているってコト・・・?」


 俺は恐る恐る聞いてみた。


「違うよー!僕たちの世界を支配してるのが人間だよ。でもね、だからこそ支配してる人はいつも危険と隣り合わせだからって、カプセルの中で生きてて、バーチャルの中で政治とかお仕事とかを行うようになったんだよー!それが政治家とか大企業の社長だけじゃなくて一般企業の人も大体そうだよー。だから、バーチャルでは有名だけど、カプセルの中の人とは全然結び付かなくて、誰が誰だかよくわからない世界なんだー。でも、それが元々人間たちが望んだ狙い通りなんだー!だから”犯罪”っていうのが200年前に比べてとっても減ったって言ってたー!」


 ほわわんとして可愛い表情のベアくんだけどなんか言ってることがちょっとシビアなんですけど!!可愛い中にホラー有り!!こういうのなんて表現すればいいの?!ってかなんか気持ちがすっごくザワザワしてるんだけど!!?


 そんな話をしていたらもう昼休みの終わりが迫っていた。俺は会計を終わらせて扉へと向かいながらみんなに挨拶をした。なんか、たった20分話しただけなのに、長編のSF映画でもみちゃった感じ。感動とかよりも設定に驚いてこう、映画の後、現実を生きている気がしないなんかアレだよ、あの感じ。とにかく想像しただけで疲れた。



「はぁ、また来週来ますね」


「あ?なに言ってんだ兄ちゃん?GWちゃんと休んだせいでGWボケか?あれ?コーヨーは五月病だとか言ってたか?意味も忘れちまったな。まぁ何でもいいが、週明けはこの店はキッチンの改装工事があるし、兄ちゃんは京都に出張だろ?」


「・・・京都・・・?改装工事・・・。———ああっ?!あああああーー?!?!」


「何だよ、忘れてたのかよ!!ったくよぉ!!」



 土日で出張の準備をしないといけないじゃないか!!ってか、誰も何も言ってくれないけど新幹線とか自分でチケット取るの?!えっ!?マジか!!あれ?そういえば誰かと一緒に行くとか言われてなかったっけ?!あれ?!全部忘れてる!!?


「マスター!シェフ!!ご馳走様でした!!お会計お願いします!!」

「あいよっ!今日は600円なっ!!」

「相変わらず安い美味しい!!はい!!千円!!」


 俺はお札を一枚手渡し、マスターが受け取ってレジの機械へと入れた。



「ほらよっ!!400円の釣りだ!」

「ありがとうございます!!」

 ———カンッ!!!



 一週間この店に来れない事も重大事件だが、出張を丸々忘れていた事も大事件だ!!今日はいつもより長い残業になりそうだっ・・・!!



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