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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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23/30

第23話 6:06*タコライス


 GW6日目。


 今年のGWは9連休。残り2日だけ出勤してネットの調子を見れば良いだろう。つまり、今日と明日はまだ遊べる・・・!!俺!!今日もまた人生を謳歌している!!!




「おい、兄ちゃんは実家に帰ったりしないのか?今一人暮らしなんだろ?」

 今日も今日とて店にきた俺に、まん丸な可愛い目を向けたマスターが話しかけた。

「あ、はい。俺帰らないんです。実家遠くはないんですけど、行こうとするとすごく交通の便が悪いところなんです」

「あー、そういうところあるよな。首都圏なのにココどうやっていくんだよ?って場所あるよな」

「本当、まさに俺の実家はそういうところなんですよ・・・それに、せっかくちゃんとした連休を初めて取れたんです。頑張ってきたからちゃんと自分のために使いたくて」

「まぁ、そうだなぁ。立派な社畜だったもんな。これを機にちゃんと脱社畜しろよな」

「・・・善処します」

「意志弱っ?!?!」



・・・ーーー



 パラッ・・・パラ———



 今日は開店と同時に店に来た。しかも、途中本屋に立ち寄って新しく本を一冊買った。本なんて学生の時ですらちゃんと読まなかった。参考書とか、教科書とか、そういったものだけ。あとは漫画だったかな。

 最近の人気の小説や実用書、エッセイなどたくさんあってちょっと迷ったけど、一冊になんとか絞って買った。それを持って、お店でまずはハブティーと焼き菓子を頂きながら読書だ。


 ・・・最っ高の休日!!こういうのやってみたかったんだよ!!行きつけのお店でゆっくり本読んで飲み物飲む優雅な休日っ〜!!去年の俺へ!!夢叶ったよ!!



 ランチの時間までゆっくりとする。同じように早い時間に来店したお客さんは、飲み物がメインだ。俺みたいにゆっくりしている人や動物。焼き菓子を食べながら控え目な声量で会話を楽しむ犬たち。あぁ。なんて幸せな空間なんだろう・・・・


 没頭していたら思ったより時間は早く過ぎた。




 ———カランッ・・・



「こんにちはなのー!!あ!お兄さんもこんにちは!」

「おう、うさ吉!」

「うさぴょんこんにちは!」

「お兄さん今日もスーツじゃない!あと御本読んでる!!じゃあ、うさぴょんお兄さんの邪魔しない!!」

 なんということだ。俺が本を開いていたらうさぴょんが気をつかってくれた。えっ?!どういう教育をされてきたんだこのウサギさんはっ?!

「良いんだよ!俺はもう2時間くらい本読んでるし、休憩もしないといけないしご飯も食べたいし!!」

「そうなの?うさぴょん、お兄さんとお話ししてもいいの?」

 めっちゃ可愛い顔で尋ねられた!!決してうさぴょんの相手をしている時間がなかったとしてもこの顔が可愛くて俺は絶対にうさぴょんの相手をする!!いや!相手をしてもらうのは俺の方だから!!!?


「じゃぁ、二人揃ってランチだな!!シェフ!ランチお後で二つ追加なっ!!」

 ———カンッカンッ!!





「お待たせいたしました!今日のランチの”タコライス”です!!」

「お兄さん!タコライスだって!タコライスって、この間の”イカ飯”みたいな感じなの〜?!タコさんの中にモチモチご飯が入ってるのかな?!」

 ———っ!!可愛い!!違うんだけど!!そうだよね、食べたことも見たこともないならそう思っちゃっても仕方ないよね?!

「うさぴょん、タコライスにタコは入ってないんだよ?」

「えええーー!!名前がタコなのにー!面白いー!!」


 メイドさんがうさぴょんの目の前にお皿を下ろす。うさぴょんはタコライスと初対面だ。


「本当だー!タコさんいないー!!なんかキーマカレーみたいなの!でもハンバーグみたいな香りがするの!とっても美味しそう!!」

「タコライス自体元々美味しいけど、シェフが作ったんだらもっと美味しいに決まってるよ!では・・・」

「「頂きます!!」」


 俺とうさぴょんは同時に唱えてタコライスを口に入れた・・・!


「美味ひいのー!!」

「チーズ・・・!まさかのモッツァレラとカマンベールの二刀流———!!さすがシェフッ!!!」

 シェフめ!!なんて事をしてくれた!!もうコンビニに売ってるお手軽なタコライスが食べれないじゃないか!!こんな美味しいものを作って罪な人だ!!・・・だからJKも料理を教わりたかったんだろうなー。あぁ、人の事はいいや、タコライスに集中、集中。はー、このチーズは反則だー!!


 うさぴょんは耳をぴょこぴょこと動かしながらご機嫌で食べている。俺も夢中で食べる。マスターが俺とうさぴょんのがっつ具合を見て呆れながらコーヒーカップを拭き上げていた。




 ———カランッ



「おや!何か久しぶりな感じだね?」

「グワーッ!グワワワッ?!?!」


 扉を開けて入ってきたのは美男子とアヒル副隊長だった。そしてアヒル副隊長が何か驚いている。

「あぁ・・・お兄さんが私服で、テーブルの上に本が置いてあるのを見て休日を満喫しているのか?!なんて喜ばし事だ!ってとても喜んでいるよ」

「アヒル副隊長・・・!!俺のことをそんなに気にかけてくれて・・・!ありがとうございますっ!!」

「グワーワ・・・グワッ・・」

 心なしか涙ぐんでいるようにも見えた。アヒル副隊長、なんだかんだ鋭かったり人情味もあってそこら辺の人よりよっぽど話がわかるんだよなぁ・・・。


「お兄さんは、今何日もお休みしてるんだよ!ここにきて、ゆっくり御本読んだりしてるの!いいよね!そういうの!」

「私たちも休日に来てみたいものだね。お兄さんともゆっくり話してみたいものだ」

「グワーワ!!グッワ!」


 あぁ・・・!!何か良いっ!この感じ!!焦って食べなくても良いし、みんなとゆっくりできるってこんなに幸せな事なんだ!!多分みんながいい人、いい動物だからだよなぁ。いくら時間があるって言っても会社の人とは一緒に出掛けてご飯食べてゆっくり話をしたいって思わないもんな・・・。あれ、俺、自分が生まれ育った世界に馴染めてないじゃん?!


 なじみの顔が揃って、とても安心できる楽しい空間———だったのだが



 ———ドンッドンドンッ!!!ドンドンッ!!


「ちょっと!!なぜお店の扉が開かないのかしら?!お店はやっているんでしょう?!ずっとお休みの札が掛ってるけど嘘でしょう!!開けなさい!!誰かいるんでしょう?!」


 ———ドンッドン!!!


 突然店の扉が乱暴に叩かれて怒鳴り声が聞こえた・・・!!

 この声!!この上からの高圧的なの・・・!!高飛車な王妃だ!!マスターが出禁にすると言ってた!!

 扉の隣の時計を見ると、アナログ時計は変化がないが、デジタル時計は、王妃の世界の時間である6:06分が点滅している!!出禁の世界だとこうなるのか?!


 俺はびっくりして目の前のマスターを見た。拭いていたコーヒーカップを静かにカウンターに置いた。俺の他にもうさぴょんや美男子、アヒル副隊長が心配してマスターを見ている。その視線に気づいたマスターは静かに言った。


「大丈夫だ。絶対に扉は開かないから安心しろ。ただ、うるさくして悪いな」

「扉傷つかない?」

「大丈夫だ、問題ない」


「グワッ、グワーワ?」

「アヒル副隊長が、『何かあれば私が対処する』と言ってます」

「大丈夫だっての!まぁ、ちょっと見てみたい気もするがな!ただ、問題はねぇぜ」

 確かに、アヒル副隊長がどのように対処してくれるのか俺も気になる。



「ちょっと!!ワタクシをお店に入れないなんてどういうつもりかしらっ!!ワタクシは王妃よ!?ワタクシに無礼を働くつもりかしら?!処刑ものよ!!早く開けなさい!さもないと今す———何っ!?どういうことっ!?なんて事をっ———・・・!!!」



 途中から声が聞こえなくなった。



「え・・・?何かあったんじゃないですか?え?!王妃大丈夫ですか?!」

 王妃が一人で出歩くなんて事ないだろうから付き人がいるだろうけど・・・え?!話してる途中だったよね?!大丈夫?!やばくないっ?!


「あ、なるほど・・・」

「グワー」

「あー!もしかしてお店のボディーガードさんなの・?!」

「ま、そんなもんだ」

「どういうことですかっ?!」

 何かみんなよくわからないけど納得してる感じだけど?!どういうこと?!ボディーガードって?!


「この店は幾多の世界に繋がっている。世界が違えば常識も違う。だからあの王妃みたいなヤツだっている。出禁つっても扉が開かないだけだ。扉の目の前までは来れるしああやって叩くことだってできる。だからこそ、それ以上は被害がないようになってんだよ!」


「被害が出ないようになってる・・・それが、ボディーガード・・・?さんがいるってことですか?!でも、王妃に何かしたりしたら・・・?!」

「人や動物じゃねぇんだ。ただの店の用心棒だ。王妃に何かしたって罪にはならねぇ」



「・・・・・それってなんですか?!」



「ということは、お兄さんの世界には()()用心棒はいないって事ですね」

「グワ?!」

「そうなのー!!お兄さんの世界には()()ボディーガードさんいないのー?!」

「ま、知らねぇ方が良いこともあるっつーから知らなくていいんじゃねぇか?」

「教えて下さいよっ?!気になるじゃないですか?!」


「お兄さん!あれなの!お約束なの!!」

「約束?!」


「「2、店内で相手が嫌がる場合は詮索禁止」」

 マスターと美男子が揃って言った!!嫌がってないじゃないか!!こんなの・・!!


「ずるいっすよぉ〜〜〜!!!」

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