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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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第21話 22:44*茶蕎麦


 俺は未だかつてないほど人生を楽しんでいる・・・!!

 GWに頼まれた仕事を無視して絶賛やりたいことをやっているからだ!!

 ・・・と言っても、あと1日2日したらそろそろ職場にでも行って、治さなくちゃいけないネット接続の不具合でも見ようかなと思ってる。でも、休んでるこの何日もの間も会社に行って、しかも治らなくてイライラしてたかと思ったらゾッとする・・・。思い切って仕事サボって良かったと今なら思える。


 ・・・あれ?別にサボってなくない?!



 GW4日目。



 今日は部屋を少し整えてみようと思って午前中に家具店へ行った。テレビを置くチェストを新しく買った。そして、テーブルもガラスで出来た良い感じのものを買った。数日後に家に送られてくる!楽しみだ!そしてお昼ご飯の時間になって俺は今日も今日とてお店へと行く。




・・・ーーー




「あの、マスター・・・」

「どした?」

 俺は目の前で新聞を読んでいるマスターに話掛けた。


「昨日のランチの”沖縄料理定食”って・・・初めて出したんですか?」

「いや?何回か出してる。あれ人気なんだよ。まぁシェフの作るもんなんて全部うまくて全部人気なんだけど、塊の肉なのにあんだけ柔らかいってのがその世界にもウケが良くてだな」

「あー!なるほど!よかったです!」

「どした?」

 マスターが不思議がって聞いてきた。いやいや、俺も食べてる時はあまり気にしなかったんだけど・・・

「おばあちゃんが沖縄料理定食の”ゴーヤチャンプル”が美味しいって言ってて・・・不思議がらずに普通に食べてたから”沖縄”って知ってるのかなって思って・・・っていうか?!俺の世界の沖縄の料理だと思ってたけどおばあちゃんの世界にも沖縄があってやっぱりその沖縄にもラフテーとゴーヤチャンプルがあるって事なんでしょうか?!あーー!!気づいちゃったらすごく気になるっ・・・!!って思って質問しました」

「何回か出てるからな。それあのばーさんの事だ、色んな世界の事知ってても何らおかしくねえだろ!色んな世界の時間を直すために細かいことは知らんが何か色々つなぎ合わせしてんだからよ!!」

「・・・確かに」

 そうだ、それを聞いて納得した。そうだ。少なくともあのおばあちゃんの世界ではおばあちゃんが最強魔法使い説があるんだ。



「お待たせ致しました!今日のランチは”茶蕎麦”です!」

「茶蕎麦・・・まさかシェフが・・っ?!」

「朝から石臼ひいてたぞ」

「職人だ・・・」


和服メイドさんも持ってきてもらったお盆には、綺麗な薄い緑色輝く茶蕎麦だった。蕎麦も好きだけど、茶蕎麦はお茶の香りがすごくして好きなんだよなぁ〜!!


 ———カランッ



 来客だ。22:44分。俺は知らない人だ。扉を開けて入ってきたのは小学生になるかならないか・・・?の小さい男の子だった。

「ランチくだしゃいっ!」

「ガキにやる飯はねぇよ、帰んな」

「酷っ・・・!!酷いっ・・・!!」

 子供が泣きそうな顔をした!マスター?!どうしてこんなに小さい子供にそんな酷いことをっ?!あれか?!未就学児って蕎麦食べないほうが良いんだっけ?!赤ちゃんはハチミツはダメだって言ってたけど蕎麦もだっけ?!ってか子供くんくらいの子供なら一人でお店に来てもそこまで気にならなかったけどこの小ささはアウトじゃないか?!てかご両親知ってるのだろうか?!まさか一人で勝手に家を出てしまって・・てか泣きそうだ!!どうすれば?!


 俺は椅子から飛び上がり、扉の前の幼稚園児の前でしゃがんだ。ど、どど、どうしよう・・!とりあえず何か喋れば落ち着いてくれるかなっ?!

「あ!!その?!お蕎麦は食べたことあるのかなっ?!お金が無かったら今日はおじさんがご馳走してあげるけど!お蕎麦食べて具合悪くなったことはないかな?!ご両親から食べちゃいけないって言わ———」

「おい、兄ちゃん、そんな悪趣味なクソガキ放っておいて良いんだよ」

 マスターが話を遮った。和服メイドさんも少しだけ苦笑いだ。なぜ?!子供に優しそうな感じなのに・・・?!


 なんだ?ここの皆んなは優しいのにこんなに辛辣になる事あるのか?出禁になりそうでならない迷惑客って事だろうか?えっ!?こんなに小さい子供がっ?!幼稚園児だぞ?!それこそそんなの”ただの子供のイタズラ”だろう!!



 ———カランッ

 


「あ!お兄さんなのー!こんにちはー!」

 癒しのうさぴょんのご来店だ。

 そうだ!!うさぴょんの態度を見ればきっとこの幼稚園児が本当に悪い子かどうか———


「おじさん、まだその姿から戻れないのー?大変だねー?」


 うさぴょんが幼稚園児を見ながら言った。え?()()()()

 うさぴょんの言葉の後、幼稚園児は『あーぁ』と言い、泣きそうだった顔は虚無顔になり、冷静に話し始めた。




・・・ーーー




「いやぁ、何か変な術をかけられちゃって、こんなに小さい子供の姿にされちゃったんですよ。子供にされるって、赤ちゃんか、せいぜい小学生、もしくは中学生か高校生くらいでしょう?大学生だと何か中途半端だし。よりによってどうしてかこう中途半端な幼稚園児の歳の頃にされてしまってねぇ。あぁ、三ヶ月くらい前の話なんですけどね」

 カウンターで俺の隣の椅子に座る幼稚園児・・・は幼稚園児ではなく、ご自身の世界で何か変な術をかけられて幼稚園児にされてしまった『35歳のサラリーマン』だそうです。


「・・・その、日常茶飯事なんですか?術を掛けられるって・・・」

「まさか、一般人と呼ばれる人たちは私たちのような術使いが存在していることすら知らないですよ。だから隠れながら色々するの大変なんですよ。とりあえず、私はサラリーマンしながら陰陽師の片棒を担いでる身でしてね。今は事故に遭ったって事で診断書偽造して会社を休職してるんですよ。まぁ、重大なプロジェクトがちょうど手から離れたタイミングで良かったですよ」


 ズズズ———、ズズ——。


 二人して茶蕎麦を啜りながら話す。うさぴょんも俺の隣で茶蕎麦を可愛く美味しそうに啜る。めっちゃ可愛い。幼稚園児のお兄さんの話は以前聞いているのか興味がないみたいで、茶蕎麦を啜っては美味しそうな顔をし、付け合わせの天ぷらを食べては目を輝かせ、セットの小さいたまご丼を食べては俺の顔を見て嬉しそうな顔をしている。

 右にうさぴょん。左に幼稚園児。絵面ではとてもメルヘンだが、左の状況を知れば知るほどとんでもない。



「生まれが陰陽師の家系だったんですけどね。まぁ長男じゃないから別に継がなくても良かったって言えば良かったんですけどね。なんか成り行きでこうなっちゃって?で、三ヶ月もこの状態で、術を解く方法が見当たらないんですよ。単に私の陰陽師としての力が強ければ良いって話じゃないらしくてですね。あ、お茶の香り美味しい」

 やばい。話難しくなってきた。

「あ、ただの世間話だから適当に聞いててこれれば良いからさ!ここは()()()()()()でしょ?」

 えっ!?心読まれた?!

「心読んでないよ、顔に出てたよ。おいしご飯食べてるのに小難しい顔させてすまないね。でもね、私も元の体に戻りたくてちょっと愚痴を言いたかったんだよ。幼稚園児に戻って、綺麗なお姉さんにチヤホヤしてもらえるかなって

思っても、子供が一人でいると交番に連れていかれそうになるだけでね。誰も抱っこして撫でてくれやしないんだよ。ちょっと期待はずれでさ」

「お前随分と楽しそうだな」

「だから楽しくないんだってば!」

 マスターがツッコミを入れた。


「でもまぁ!この体の時の状態が元の体に戻った時にどれくらい影響するかはわからないけど!8時半から21時まで1時間の休憩時間はあるけど毎日仕事して、その後22時から深夜の2時半の4時間半が陰陽師の勤務時間・・・。土日は基本陰陽師の仕事だから出会いはあってもデートする時間がないからなぁ。いつも16時間労働だもんなぁ、毎日4時間の睡眠時間で結構キツかったから、今はむしろご褒美と思ってちゃんと休ませてもらってるよ」


 土日も働いて毎日4時間睡眠?あれ、俺の土日は体力回復のために寝るだけで終わっちゃってるけど、でも一応土日は割と休み取れてるし・・・あれ?


「あれ?もしかして俺って全然社畜じゃない?本当は今日も出勤してネット直した方が良かった・・・?」

 この間の社畜さんの件もあって、社畜がわからなくなってきた。

「兄ちゃん、安心しろ、兄ちゃんも立派な社畜だぜ」

 マスターの一言で一瞬不安で揺らいでしまった心が安定した。社畜と断言してもらって心が安定するって何だよ俺。

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