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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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19/30

第19話 12:29*餅グラタン


  ———シン・・・


 カタカタカタ・・・


 誰もいない空間で俺のPCのキーボードの音だけが響く。

 なぜ誰もいないのかって?そりゃそうだろう。大型連休であるGWの二日目だからだ!!ちなみに俺の会社は有給保持者はこの連休で有給消化を推奨しているため、大半の社員が全部で9連休だ!!

 そんな中俺はなぜか自分のフロアのネットの接続が悪いからと直しに来ている・・・。ちなみに今日の天気は全国的に雨だ。皆のものザマアミロっ!!連休で旅行の奴!!出先で雨に打たれてろっ!!そう思うほどに俺は荒れているのだ!!


 だって、オフィスが寒い!!!!!


・・・ーーー



 ———カランッ



「・・・よぉ兄ちゃん・・・。今日も仕事か?昨日で直らなかったのか・・・」

「マスタァーーー・・・」


 俺はマスターに泣きついた。

 ありとあらゆる何かを試してみてもネットが繋がる事がなかった。ほんの、たまに、稀に!!一瞬だけwi-fiのマークが出たり、一瞬の隙にPCも頑張って接続を試みてくれてはいるものの、大型検索エンジンのTOP画面のロゴだけが表示されるのが精一杯で、ニュースや情報などよが表示されない。

 なので、『電源が抜けてました〜!』みたいな単純なオチではなかったのだ。



「このまま行くと連休の半分くらいは出勤になるんじゃねぇのか?大丈夫かよ?」

「・・・そんなことはないっ!!!と!!!言いたいっ・・・!!」

 でも自信がない。


「まぁ、飯食って長めにここで休んでけよ!別に誰も会社にいないんならいつも通りきっちり1時間で戻らなくてもいいだろう?頭リフレッシュすればいい。ここで話してる間になんかいい案が思いつくかもしれないだろ?わからんが」

「はい、そうします・・・」

「シェフ!!兄ちゃんだ!ランチ一つな!!」

 ———カンッカンッ!!


 そうだ。確かに仕事は仕事だが、勤務時間自体は短い方が会社だって助かるはずだ。残業とか超過勤務とか色々あるわけだから。そう考えてせっかく来たんだからとこの店の癒しを存分に味わう事にした・・・のだが?


「あれ?!今日お客さん全然いないじゃないですか?!」

「あぁ?あぁ、兄ちゃんの世界と一緒でGW的な休みを取ってる世界が他にもあるみたいなんだよ!俺の世界じゃないけどな。だからこの時期は割と店も暇してんだよ」

 なるほど・・・多分それはボウくんとか社畜さんの世界かな。姫様とか花魁さんはあまり関係なさそうな気がするけどな。美男子とアヒル副隊長の世界はどうなんだろう?うさぴょんとか休みとかいう概念あるのかな?でも人参売りに出してるっていうからなぁ・・・。

 そんなことを考えていたら扉が開いた。



 ———カラン



 誰だ!知り合いかな!っとワクワクしながら扉の時計を見た。12:29分。あぁ、俺にとってはご新規さんだな・・・うさぴょんだったらもふもふしちゃおうかなー?!と思った俺の視界に入ったのは綺麗な女性だった。そしてその後ろに女性の身長よりも高く大きな・・・なんだあれ?!トラッ?!ヒョウ?!チーター?!


「おぉ、デキ女とチーターじゃねぇか。久しぶりだな」

「マスターごきげんよう。ランチ一つとチーターにコーヒーを」

「グルゥゥゥ・・・———」


 チーターだったーーー!!つーか怖いっ!!えっ大丈夫系??俺噛みちぎられない?!美味しいご飯と癒しを求めてきたのに食われるのは違うだろう!!俺は今までイライラで固くなっていた体が今度は緊張で硬くなった!!怖いって!本当に大丈夫なのっ?!


「・・・大丈夫だ、安心してくれ。このチーターは人も動物も襲わない」

 ”デキ女”と呼ばれた黒髪のストレートロングヘアのクールビューティーの女性が俺の顔を見てふっと微笑みながら声を掛けた。

「アッ、すみません。この距離で対面した事なくてちょっと緊張しちゃいました・・・」

「初見は大体そういうが、こんなにでかいのがいたら驚くだろう。何も気にすることはない。むしろすまなかった

な。チーターに首飾りでもつけておくべきかな。カードでもぶら下げようか。【安心してください、噛みません】とでもな」

「そいつぁ良いや!!」

 クールビューティーが気さくに笑い、マスターも返答している。なんか、思ったより楽しい人なのかも・・?


「私もそれで人間や小動物が怯えるのを防げるなら喜んでその無様な姿を受け入れよう」


「喋ったぁああああ?!?!」

「あっはっは!!チーターはちゃんと喋れるぞ。またも驚かせたな。【喋ります】の文言も追加するか!」

「でけぇプラカードにしなくちゃだな!」

「少々首が重くなりそうだ」


 この空間の”キリッ”としている光景と流れている空気が合わなくてバグが起こりそうだ・・・!



・・・ーーー



「ふーん・・・なるほどね。ネットの不安定の現象に一貫性がないと・・・なかなか面白い状態じゃないか」

「面白い・・ですか?」

「面白いだろう?怪奇みたいだったり、すぐに原因がわからないことは”面白い事”だ。悶々と考えて鬱々としてても良いことなんかない。何でもかんでも楽しむことに思考を変えた方が良くないか?」

「この意見が、この女が”デキ女”と呼ばれる所以だぜ!」

 マスターが補足してくれた。


「イライラしたり不満がある状態でやると仕事とはつまらなくなる。確かにやりたくもない仕事をおしつけられたらクソほど腹たつけどな。そういう時こそ考えを変えるんだ。

 『これをできる人間が自分しかいない、周りは出来損ないばかりだ』とかな。でも、思ってもいいが決して口には出さない。『出来損ないのために私が一肌脱いでやったんだよ?』と自分だけでいい気分を味わえばいい。あとは『これができれば別で休みを絶対にもぎ取ってやる』とか。その先の楽しいことを考えて気持ちだけ()()()するんだよ。

 だってどうせやらなくちゃいけないことならダラダラやっても仕方ないだろう?だったら楽しいことを考えながら仕事進めればその時間から既に楽しいんだ」

「なんかレベル高い事言ってる・・・あ!でも!その仕事の終わりが全然見えなかったりしたらどうするんですか?!今回の俺みたいにいつネットが回復するかわからない状態だったら・・・!」

「諦める。いくつものリミットを自分で設けるんだよ。がむしゃらにやったって仕方ない。今日は18時まで、明日は17時まで、明日だめだったらもう直さない!とかな。だってそもそも頼まれたのは君だが、直らなくても君の責任ではないのだろう?」



 ・・・そうだ。上司には『休み明けにネットが使えなかったらみんなが困るでしょ?』みたいに言われた。確かにすごく困るだろうしパニックにもなる。でも、それって”俺の責任”じゃないよね?少なくとも”俺()()の責任”では絶対ない・・・!!



「お待たせいたしましたー!本日のランチは”餅グラタン”です!!」

「餅?!」

「久々だな!正月に食べた以来だ!」

「デキ女さんの世界もお餅あるんですか?!」

「あぁ、正月と六月に食べる習わしだ。だから半年に一度は食べてるな」

「へー、そうなんですね」

「そんなことより目の前の絶対に美味い飯を最高に美味い内に食べよう。一番いい時を逃さずにずっと美味しい思いをし続ける選択を自分で取り続けることが人生を輝かせて自分の思う”成功”へ導く近道だぞ」



 ———・・・なんか、今日は癒しとは違うけど、別の世界の人の新しい考え方に触れて凄く新鮮な気持ちだ。とても勉強になっている気がする・・・!



「さぁ!マスター!シェフ!ありがたく頂くぞ!!」

「頂きます!!」



 デキ女さんに習って俺もすぐに食べ始めた。



 ウジウジしていて気持ちもいつの間にか晴らしてもらって口に入れた餅グラタンは格別だっ!!美味しいホワイトソースの中に凄く柔らかい餅が現れて口の中で溶けていく!!



「あぁぁああ!!美味い!!!」

 俺はこの日は夕方の16時で仕事を切り上げて、帰りにかなり久々に買い物をして帰った。

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