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楽園の竜【序章】  作者: ロマン
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十日目_02

 小さな竜との日々が続く。

 エリュシオンと共に再び歩いていると、川が流れているところを見つけた。近くは大人しい魔獣たちが大勢いる。近場には洞窟があり、その上に巨木が立っていた。根が洞窟の中にまで突き抜けていて、中には虫や小型の魔獣がおり、苔なども生えている。

 普通の洞窟だ。あっちが綺麗すぎるというだけかもしれない。そもそも、そういえば、俺が整地する前からあの洞窟にはエリュシオン以外には何もいなかった。


「涼しいわ!」


 エリュシオンが嬉しそうに笑う。寒いのがダメってわけじゃないのか。まあ、確かにさっきの霜の森は寒すぎた。

 川が近いせいか洞窟の中はやや涼しい。そのうえで十分に広かった。

 新しい拠点としては十分だろう。問題は、元の拠点から結構離れているせいで、俺一人じゃ間違いなくここにこれないという点だ。

 まあエリュシオンがいればこれるだろうし、心配はいらんか。


「よし、ここに決めるか、エリュシオン」

「うん! いいと思う!」

「んじゃあ整地しちまうから、小型の魔獣や虫任せていいか?」


 虫苦手だし。エリュシオンに頼むと、笑顔で解った! と言ってくれる。ちょっと良心にダメージ。押し付けたようで心が痛い。

 拠点を増やすのは悪いことじゃない。いざというとき、前の拠点が使えないということも十分にあり得る。とはいえ虫もいるってことは、布団とか、布は置いといたら食われるかな。となると必要なのはとりあえずの整地と、鉄や、喰われそうにない床かな。

 エリュシオンが虫や小型の獣を火を吐いたり、追い立てたりしながら洞窟から逃がして行く。軽く中を整地して、簡単な家具を作っていく。座れる椅子や机。後は簡単なハンカチとかタオル、着替えとかを木箱に詰めて置く。そこまで造ったところで、疲れが見えた。

 日毎の能力には限度がある。無制限に使える訳ではないが、まあ殆ど無制限みたいなものだ。しっかりと休まないと能力は使えるようにならないし、無理して使おうとすると頭痛に吐き気と、どんどんと体調が悪くなっていく。使い過ぎると最悪死ぬかもしれない。


「ショーナ! ショーナ! 綺麗にしたよー!」


 エリュシオンは胸元に飛び込んでくる。おー、ありがと。笑いなら労うと、エリュシオンは嬉しそうに笑う。

 ハンカチを敷いて、その上にエリュシオンをそっと下した。その上に座って笑うエリュシオンの頬を、また軽く撫でた。きゃふふふと笑うエリュシオン。


「木の根っこはそのままでいいぞ。燃やすわけにもいかないしな」

「はーい」

「さーて、ちょっと休んだら……とりあえずあっちに戻るか」


 拠点の整備はこれからも続けていこう。他にもまだまだ必要なものはある。

 とはいえ一時拠点としてはこれで十分だろう。エリュシオンの元気な応答の声に、俺は笑ってまた頬をなでた。


「きゃふふふふふ!」

「そうだ。頑張ったご褒美にこれをやろう!」


 なんとなく笑い、俺は制服のポケットからボタンを毟る。素材は解らんが校章の入った、金色に縁取られた黒のボタンだ。

 手首のところにもそれぞれ三つついている。まあ一個くらいならいいだろう。ぶっちゃけ、もうボロボロで使えんだろうし、家に帰れたら……。

 ……。

 帰れんのかなぁ……。思わずため息が出そうになるが、ギリギリで堪える。エリュシオンが見てる前ではなるべくネガティブなところは見せたくない。エリュシオンが寝静まった後、一人で怖くて震えることはあるけれど。


「わぁ! 綺麗! いいの!? いつも服についててきらきらしてた奴!」

「いいよ、あげるあげる。あ、そうだ、エリュシオン。他に欲しいものとかないか? 造れるもんなんでもやるぞ」


 めちゃくちゃ喜んでくれたのに気をよくしてそんな約束をする。エリュシオンがきらきらと目を輝かせた。

 差しだしたボタンはエリュシオンの顔を隠すほどの大きさだった。ちょっとデカすぎた。盾みたいだけどかなりデカいわ。


「じゃあ武器! 武器欲しい! ほら剣とか短剣とかみたいな! 格好いいなって思ってたの!」

「ええ……なんか物騒だな……」

「そう? そうかしら? でも、ほら、刃物とかあったら、ショーナみたいに果物を切れるわ! この前みたいにかわいらしい形にできるかもしれないわ!」


 お、おーなるほど。エリュシオンは大体木の実に齧り付くが、俺は大体皮を剥く。慣れてきたから、先日確かに兎型――とはいえガタガタだったが――を造った覚えがある。

 あれを造りたいのか。可愛いなあ。

 んー、じゃあ武器……とはいってもエリュシオンが使えそうなサイズにしなくちゃならんし、あれ普通の刃物じゃ役に立たないか……?

 それに剣とかって扱うのに技術がいるよなぁ。剣道もやってないから剣なんて振るえなかったし。

 それなら……こっちのほうがいいか? それに、折角なら。適当に辺りの物資を分解し、エリュシオンの体に合わせて造ったのは、槍だった。ただ刃の部分は結構長い。これであの木の実を剥けるかなって疑問はあったけど、棄却した。

 まずはサイズから合わせて、造形はそれから合わせていけばいいだろう。


「わっ! すごーい!」

「造形はこれからな。お前の好きな形にしてやるからな」

「ありがとー!」


 結構重たかっただろうに、槍を軽く振り回して見せるエリュシオン。

 毎度思うけどコイツとんでもねぇ膂力あるんだよな。全力で突っ込んで来たら俺の頭に穴とか空きそう。時々きゃーって笑いながら胸元に飛び込んでくるけど、加減を間違えると痛いんだよな……。

 これで盾と槍が揃ったことになるんでなんか兵士っぽいな。両手でわきゃー! と槍とボタンを構えるその様はなんだか勇ましい。

 兎に角この日は第二拠点から元の拠点へと戻っていくことにする。帰り道、やはり魔獣には襲われなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

色々な場所が少しずつ見えてくる、楽しい日々です。

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