第44話「突然ですが、金髪令嬢に絡まれました」
今年最後の投稿になります。
来年も是非、拙作をよろしくお願いします。
それでは、一足先に良いお年を!
《6月度成績順位表》
1位 レオ・オールド(500点)
5位 アルメリア・ファウ・フォーシーズン(490点)
……
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19位 タンザー・フィン・マエダ(402点)
22位 ウェスカ・フィン・クロダ(376点)
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………………
40位 シーダ・フィン・ツチヤ(298点)
「感想をお願いします」
「……べ、別に前回より成績は上よ。父様に言われたように、ちゃんとベスト5に入ってるし」
「同着5位ですけどね。ひとつ間違ってたら前回同様ベスト10入りで精一杯だったのでは?」
「うぐっ……!」
7月に入り、先月行われたテストの順位が張り出されている。
前回はぎりぎりベスト10入りだったアルメリアだが、今回はぎりぎりベスト5入りだ。
確かに成績は上がっているのだが、ぶっちゃけテストの難易度は4月度からあまり変わっていない。つまり本来のアルメリアであれば、ベスト3は狙えたはずなのだ。それができていないということは……。
「訓練の方は順調でしたよね」
「そうね。とりあえず30までは書けるようになったわ」
「よっぽど頑張られたんでしょうね」
「……ええ、そうね」
「勉強しつつも頑張ってきたんでしょうね」
「…………え、ええ。そうね」
「――――――アルメリア様?」
「………………はい。すみませんでした」
まあそういうことだ。なんだかんだで、魔力の制御訓練の方にまだ熱が篭っていたのだ。授業中もたまに制御訓練してたし。
それでもベスト5に入れたのはすごいことなのだが、一度それで怒られているのだから授業はまともに受けて欲しいところである。
一応順位は上がったのだから、叱られはしないだろう。褒められるかはわからないが。
公爵家の人間ともなると、成績に関しては厳しい目で評価されるようだからな。ぜひアルメリアには好成績を維持してもらいたい。またカトレアにネチネチと文句は言われたくない。
前のハイゴブリンの依頼以降、まずは茶会の作法を教えるためにと週に一度お茶会に招かれるようになった。といってもあくまで個人的な小さな茶会で、俺とアルメリア、それに侍女のカトレアだけしかいない。
アカデミーに通う生徒の侍女や侍従は自由に入ることができるから、場所は学園内にある茶会スペースを予約して使わせてもらっている。
そこで色々と教えてもらったりダメ出しされるのだが、ダメ出しするのはもっぱらカトレアの方だ。
何が悪かったのか懇切丁寧に歪曲的に教えてくれるため、一個のミスに対してネチネチと長いお説教をくれるのだ。
ちなみに、それは俺だけに留まらない。公爵家で制御訓練をするアルメリアはよく注意力が散漫になるようで、教わる側にも指導する側にもグダグダと説教アンド説法をしてくれている。
「とりあえず今回の成績についてはアルメリア様の方からきちんと報告をお願いします。できれば今夜にでも」
「それは遠回しに、今日のお茶会で自分を巻き込むな、と言っている?」
「ご想像にお任せします」
「安心なさい。レアなら私が言う前に成績を把握していても不思議じゃないわ」
全然安心できない。それって結局、俺も巻き込まれるじゃないか。
だが、その前に別のことに巻き込まれかねない。ここに成績が張り出されているということは、これを見るために他の生徒も来るということ。
「あら……タンザーたちも見に来たみたいね」
そう、いつまでもここでのんびりしていたら、またあの三人組に絡まれる。
案の定、アルメリアが見つけた三人に視線を向ければ、こちらに気づいて目力に気合の入った睨みを利かせられた。
呼び止められる前に立ち去るに限る。人混みに紛れて掲示板の前を離れ、そそくさと教室まで撤退した。
「貴方もすっかり三人の扱いが板についてきたようね」
「関わらないでいられるうちは、逃げ回るに限りますよ。教室などの逃げ場のない場所では、嵐が去るまで待っている気分ですが」
「この件に関しては、心からお気の毒だと思うわ。彼らも貴方にちょっかい出すくらいなら、少しでも勉強してくれると良いのだけど」
「アルメリア様の方から諌言はされないんですか?」
「何年彼らと幼馴染をしていると思うの?」
「…………心中、お察し致します」
休み時間のたびに素早く席を立って逃げ回り、なんとか昼休みまで絡まれずにすんだ。
今は食堂の隅っこにひっそりと座って昼食を取っているのだが、アルメリアに見つかってしまい一緒に食事をすることになった。
また三人に絡まれる種を抱えることになりかねないのだが、なんだかんだで学園内で普通に会話できるのはアルメリアだけなのだ。
ずっと黙っているだけというのもストレスが溜まる。彼女とこうして何気ない日常会話ができるのは、良い気分転換になるし拒む理由がない。
アルメリアとの食事だってバレなければいいし、なんなら今日みたいに絡まれる前に逃げればいいだけだ。
「他人の悪評に花を咲かせるなんて品がなかったわね。この話はやめましょう」
「噂をすれば影、とも言いますしね」
「どういう意味?」
「噂をしていると、その当人が不意に現れるという意味ですよ」
「…………気をつけるわ」
アルメリアにも合いたくない人物がそれとなくいるようだ。苦虫を噛み潰したような表情で、食後の紅茶を飲んでいる。
「話は変わるのだけど、今学期が終わるまであと一ヶ月でしょう?」
「そうでしたね。八月の12日で前期課程が終了し、九月から中期課程に入るんでしたね」
「ええ、そうよ。各過程が終了すると二週間の休養日程が組まれ、休養明けから新学期が始まるわ」
前世の頃と違い、夏休みのような一ヶ月丸々休めるほどの大型休日はアカデミーには存在しない。その代わりに用意されているのが、アルメリアの言ったとおり来期課程に備えて二週間の休養日が用意されている。
つまり八月、十二月、三月は実質的に半分しか学園に通う日は来ないということだ。
「それで……私の進みはどう思う? 前期課程の結果が出るまでに、芽吹くと思う?」
ティーカップに視線を落とし、目を合わさずに訊ねてくる。
本来のアルメリアの目的はそれだ。先日のはじめての実戦で思うことがあり契約内容を大幅に更新したけれど、最初の動機はやはり彼女にとって重いんだろう。
「はっきり言わせてもらえば、それは無理です。あと一ヶ月くらいでは成果は出ないでしょう」
「…………そう、よね――――」
もともと期待していなかったのか、あまり落胆は大きくなかった。
あるいは、ガッカリすることに慣れているだけかもしれない。アカデミーに入学する前も、後も頑張ってきたのだ。
この十五年間で望む成果が得られていないのだから、期待を裏切られることに慣れてしまっているんだろう。
でも、ガッカリするにはまだ少し早い。
「今のペースでしたら、中期課程の最初の選択科目で初級魔法くらいでしたら発動できるようになるでしょう。前期休養期間が勝負になりますね」
「――――――……え?」
「休養期間に入る前にレッスン2が終われば、あとは実際に変換の術式を書き起してみるだけ。その部分だけなら何度でも書き間違っても大きな問題は起きないので、休養期間を使ってものにして頂ければ……」
「中期課程の授業で、初級魔法を使うことができる……?」
「さすがに一から十まですべて書き切るにはまだ訓練が足りないので、詠唱との組み合わせになりますけどね」
今までは無詠唱での発動か、詠唱だけで魔法を発動させるか、の二通りでしか試したことがなかった。
だからこの機会に試してみたのだが……結果は問題なく成功した。
詠唱によって作成されるのは教科書に載っている魔法陣分だけであるが、逆に言えば詠唱さえすれば教科書と同じ魔法陣がそのまま書けるということ。
内側に処理を付け足す手段は取れないけれど、外側に足す加える文にはいくら手を加えても問題はなかった。
つまり、アルメリアがレッスン2をクリアして属性変換の術式を問題なく書けるようになれば、彼女が願っていた基本属性の魔法が本来の魔力で発揮できるようになる。
「そう……ここで満足してちゃいけないけど、ひとつのゴールが近づいてくると嬉しくなるわね」
「安心していいですよ。いいペースで習得できていますから」
「お世辞を言っても、今日の授業では手を抜かないわよ」
「お世辞のつもりはありませんでしたが、それはそれで残念ですね」
いや本当にお世辞ではなかったのだが、手心を加えてもらえるのならそれは本当にありがたい。
俺の持つ技術を教える代わりに、社交界でも通用する礼儀作法やダンスをはじめとした貴族の嗜み的な礼法を一通り教わることになったのだが、これが非常に厳しいのだ。
少しでも間違えるとムチ、ではなく扇子が飛んできて強かに肩を打ちつけられる。痛みはそこまでではないが、何度も何度も打たれるのは精神的にきつい。
「これもひとえに、貴方に上達してほしい、恩を返したい、という乙女の気遣いよ。甘んじて受け入れなさい」
「愛の鞭というヤツですか」
「アメもきちんと与えているでしょう? お茶菓子として」
「そこでも採点されていますよね」
「当たり前でしょう。作法というのは、実践していかなければ覚えないもの」
アルメリアもジェーンさんと同じくスパルタ指導派だったか。
まあ、扇子で叩かれるくらいならまだ優しい方ではある。
それでも習っている身としては、何度も同じミスを繰り返すわけにはいかない。彼女の言うとおり、早く上達しなければ。
「――――――失礼。ちょっといいか?」
程よい緊張感を保ちながらテーブルマナーに気をつけて食事をしていると、背後から誰かが声をかけてきた。どこかで聞き覚えのある声だ。
対面にいるアルメリアは、その人物の顔が見えているのだろう。
微かに目を瞠り、その人物の名前を呼んだ。
「……シャル? 貴方、シャルロッテ・フィン・バルティーユね」
「ああ。久しぶりだな、メリア」
振り向いてみると、窓辺から差し込む太陽の光を浴びて美しく輝く金色の髪を持った少女が佇んでいた。
アカデミー受験の二日目、俺を実技会場まで案内した、赤い色の鎧が映えるあの少女だ。
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遅筆な作者のペースが上がる! ……かもしれません(汗




