第12話「突然ですが、特待生を目指すことになりました」
「『アイワーン学園』は上流階級……特に貴族の子息子女が主に通う学園だから、入学からして厳しい壁が立ちはだかっているが、あと五年もあることだし……」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
すごく……嫌な予感がする。
そして前世の頃から決まって、この予感が外れた試しがない。
「王様からの命令で入学するんですよね? そちらから援助はないんですか?」
「ははは、あるわけがないだろう」
すげえ朗らかな笑みで返された。
さっきまでの神妙な顔で説明していた時とは、打って変わって楽しげな顔だ。
その表情から悪意は感じられなかったが、彼の言い分はこちらを突き放すものだった。
「アカデミーとはあくまで学ぶ場所であり、才能と努力で研鑽していくところだ。特別な何かを見出されたのなら援助もするが、君に関しては事情が事情だ。こちらから援助することは、むしろ余計な火種になりかねない」
……腹が立つことに、言われてみればその通りだった。
ただでさえ精霊に傷物にされたってことでド底辺の扱いを受けそうなところに、王国から何かしらの手助けが入ったら悪目立ちする。
向こうとしてはあくまで公平に対処させることが、出来る限りの協力なんだろう。
「つまり入試は普通に受けないといけないし、学費も免除されない、と」
「君は物分りがいいんだね。すまないがその通りだ。何かあった時はこちらもできる限り公平に君を助けるが、それ以外では協力できないんだよ」
興味深そうにこちらを見るベルウッドさん。
だがそれを気にする余裕は俺にはなく、テーブルの上に置かれていた『アイワーン学園』のパンフレットを手にとって見た。
学園の特色だとか、伝統ある歴史だとか、そんなものは一切興味がない。
今一番気にしなければいけないのは、入学費と学費だ。
…………。
………………。
……………………。
…………………………。
「どうしたんだい? 急に突っ伏したりして」
脱力もする。前世の私立高も真っ青な学費に、根こそぎ気力を奪われた。
(なんだ、この馬鹿げた金額は……)
はっきり言おう。無理だ。
入学費はどうにかなっても、三年間の学費は払えそうもない。
貴族をはじめとしたお偉方の子息子女が通う学園だぞ? 一平民が簡単に工面できるわけないじゃないかっ。
「…………念のために聞いておきますけど、もしも入試で落ちたり、途中退学した場合は?」
「入試で落ちたら別のアカデミーを受けてもらう。もちろん協力はできないがね。退学の場合は……それは考えていなかったな。陛下に具申しておこう」
なんだ、そのやっつけ具合は。本当にちゃんと話し合ってきたのか?
御上からのお達しで指定先に入学しろ。でも入学費や学費は全部そっち持ち。ふざけているとしか思えない。
でも、きっと冗談ではない。
俺をからかうために、わざわざ王国の騎士団長が足を運ぶはずがないからだ。
だとすると、ここで拒否する姿勢を見せると悪い意味で余計に目をつけられてしまう。
だが現実的に考えて、ないものはない。
これからの五年を金策に費やして、それでもどうにもならないはずだ。
最悪の場合、俺一人で行方を眩ませ、家族に累が及ばないようにする必要があるな……。
そう考えていた時、ふとパンフレットに記載されていた一文に目が止まる。
特待生制度の導入――――これがもし、俺の知る特待生と同じであるとすれば……。
「あの……『アイワーン学園』の特待生制度って、どうなってるんですか?」
「そこに気づくとは、御目が高い。ですが過酷な道ですよ?」
ベルウッドさんが教えてくれた特待生制度とは、入試や年度末の成績評価でトップ5入りした生徒にのみ与えられる制度であり、様々な恩賞が与えられるということだ。
その中でも一番魅力的なのは、入学費や学費が免除されることだ。
入試はもちろんのこと、常に成績を落としていけないというのは、確かに過酷だ。しかし最も穏便に国からの指示を乗り越え、家族に負担のかからない道のりでもある。
だったら、それを目指すしかない。
五年後の王都アカデミー『アイワーン学園』入試試験で、特待生として入学する。
それ以外に選択肢がない以上、腹を括るしかなかった。
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