四天王
「……これで全員ですか。それではこれより会議を開催いたします。」
モノクルをつけたまさに伯爵、のダークエルフ「バルト」が開会を宣言した。
「...今回の議題ですが、魔王様直命の【四天王後継候補者招集】とのことで、各四天王、各々用立てただろうな?」
「...俺は息子を推す。現に今、マオ様の仕えとして十分な成果は出しているはずだが?」
「ふん、低俗のハーフごときにしては、だがな。」
「おい、俺の息子とカミさんに文句あるって言いてぇのか?」
「はいはい、そこまでよ二人とも。全く相変わらずの険悪さね」
「...好色女が。貴様は用事できたんだろうな?」
「フフ、同族の中でそこそこ優秀そうな子を見つけてきたから大丈夫よ? ちょっと難あるけどね、魔王様から見れば私よりかはだいぶマシな部類だと思うわ。」
「貴様、気軽に魔王様に」
「あーもういいから。...やっぱりこうなるのか」
魔王はため息をつき、背筋を伸ばしバルトを見据える。
「それで、そこの子がお前の後継候補ということかな?」
するとバルトは誇らしげに鼻を鳴らし、後ろの子を前に押し出す。
その者には黒い翼があり、角は片側に生えていた。
その容姿に、魔王は思い当たるところがありバルトに質問した。
「...まさか、最近各族の襲撃事件に関わっている謎の天使、か?」
「さすが魔王様!」
ここ数年、徐々に各国からのヘイトが上がっているその要因、【謎の堕天使】
天使自体文献規模の希少性があるものの、堕天はさらに情報が廃れつつある存在。
魔族領も若干の被害はあったものの、その度合いに各国は魔族の進行、尖兵、自国襲撃はブラフであると噂されている。
「...公的に認めろというのか、その噂を」
「むしろ我々の最高の手足になるでしょう! パフォーマンスとしては十分、実力は十二分、ここまでの候補者がいるでしょうか!?」
「おい参謀さんよ、それは魔王様の意向を無視する行為じゃねえのか?」
「ベン、それは違います。魔王様、今こそ再び魔族領の拡大に踏み込むべきです。奇怪な力を使う人間の召喚から数年、各地の駐屯基地はその者のごく一部に粉々に踏み潰されています。もはや和平など無駄でございます。現に同時期に我らの領内にも少数の侵攻で壊滅され、しかし今立て直しが済むところまで来ました。四天王も4人目など考えず踏み潰すべき。次代ではなく今、我々の旗印を各国に。そう、何な使い物にもならない人間のガキなど飼育せずとも」
「バルト」
瞬間、空気が張り付く
バルトの隣りにいた堕天少女はこの地に立って初めて顔を青くした。バクでさえ席を立ち後退りをし、その気迫を向けられているバルトは呼吸することが難儀するほどに強張らせる。
「...バルト、一度だけ猶予やる。ユウマのことか?今のは。【勇者の血も引くマオ】も、【俺が見初めた女】も含めての、発言か?」
「い、あ、そ―――」
肯定も否定も、そもそも口がまともにまわらず一音一音でしか喋れないバルトは汗を流す。
「はいはい、そこまでだよ」
しかし、唯一この場で平然としていたリリーはパン、と手を叩くと魔王は一瞬、ふっと威圧感を消した。
「魔王様、一応この参謀さんも人やエルフには色々と苦労した身だ。いくらかの不満は払拭できないでしょ?」
「...ふぅ」
魔王は一息つくと席を立ち、バルトの横を通り抜ける際彼の方を軽く叩く。
「ごめんごめん、それとそんな重苦しい空気でする議題ってわけでもない。ベン、何か菓子か何か作ってくれ。」
「...あ、ああ」
「せっかくだ、娘を交えての会談にする。中庭に移動しよう。バルト、お前はどうする?」
「...このあと用事があります。ルシフェルだけ向かわせますのでご容赦を」
「ああ、わかった」
「ねぇねぇベンー、最近ここの食が変わったって噂聞いたんだけどー?」
「はあ、まあ期待してもらって構わねぇよ」
魔王を初めて、ベン、リリーも退出した。
バルトは机を叩き、声にならない声を漏らした。
「........ルシフェル」
バルトは顔を向けなかったが、ルシフェルはその表情を容易に想像できて何も口にしない。
「......事故や不運に見せかけ、人間のガキを殺せ」
「...承知しました」
ルシフェルはそう口にし、彼らの後を追うように部屋を出ていった。




