-FogForest-
「やあ、久しぶり?」
カン、と薪を割る横で、そいつは突然姿を現した。
「...そうね。人間の感覚でならそこそこたった、かしら?」
斧を放り投げ、宙に浮く魔法で楽な姿勢で漂いながら上から見下ろした。
「魔王様自らって、まあ手下連れてきたことないわね」
「ははは、気性が荒いものがまだ多いからね。まあ最近ちょっとお掃除業者が来てあらかた一掃してしまったけどね」
「......それ、【あの子】にも何かあったってこと?」
と、火球を手の上に数弾用意し問う。
「ははは怖い怖い。...間違っても【恩人】の子を私は適当に扱ったつもりはないよ」
「...親友の忘れ形見なのよ、信用が落ちれば、私はいつでも連れてこの地を去るから」
「ははは、正直君の目が届かないところに行ってもらえるのは私の胃にはいいのだけどね.......それはできればやめてもらいたいね」
「.........」
男は苦笑気味に、しかし頭を下げる。
そこに、【魔王】と呼ばれる男の威厳などありもせずに。
「今は見守ってくれないだろうか?......あの子たちが彼を手放さないし、彼にかかる火の粉を払うから。だから、娘たちにあの子を取り上げないでほしい。」
そこには、出会った当時以上に裏表ない彼の本心があり、手のひらで揺らめく炎の行き場を失う。
「...奇妙なところが似たもので、親友の子供はホント」
火球は外の暖炉へ飛ばす。同時に放り投げた薪は中で着火し、程よく燃える。
「...それで、本当の用件は?」
だが、【親】としての裏を感じ、斧を置き腰を掛け、睨みをきかせる。
「...人間の王国がおかしい、って今更でしょう?」
「まあそうなんだけどね」
少し渋めのお茶を渡したが、味わうように飲む姿にややため息が漏れる。
「ただ、どうもおかしな組織がなにか企てようとしているようでね、場合によっては娘に、もしかすればそれ以上にユウマに危険が及ぶ可能性があるんだよ」
「そう。それはあまりよろしくないわね」
「そう、そこでお願いしたいことが2点」
「調子がいいことで...それって?」
「...はあ......」
椅子に置かれたカップを目に、久々にタバコを一本透かす
地球にしか無いタバコ、普段は時たま王都でやや古い方のを仕入れたりして節約していたが、何かの記念や、悲しさで涙をこぼしたとき、そして同仕様もない感情に飲まれたときに吸うようにしていた。
「...まったく、面倒なことを。」
断る理由が残念ながらなかったため、本当に深く深く、同仕様もない呆れを感じている。
「...さて、取り掛かりますか」
ギリギリまで吸いきった吸い殻を宙に弾き、火球で燃やし尽くす。
家の中に戻り、黒のフードコートを纏い、拳銃とナイフが懐にあるのを確認する。
そして彼女は、『迷いの森』をあとにした。




