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act.28

 私の知る限り、最高に逝かれたなんでも屋の話をしよう。

 ソイツの名前はアキ。ちょっと前まではシェリフの弟子と呼ばれ、今ではガンスリンガーの名で呼ばれるヤバい奴だ。

 拳銃は勿論、ライフル、ショットガン。何を持たせても卒なく扱う。そして、大抵は拳銃で何でも熟してしまう。


「私もそろそろ引退だね」


 そして、私の店にそんな逝かれた奴を発掘し、才能を開花させてしまったジイさんがお茶をしに来ている。


「いや、シェリフが見付けたんですから、責任取ってから辞めてくださいよ。

 アイツ、平然と公社の上層部に喧嘩売ってますよ」


 聞いた話ではステンの娘とトンプソンの娘に喧嘩を売ったらしい。アホかあいつは!


「良いじゃないか。

 無茶するのは若者の特権さ」

「良くは無いですよ!

 アイツのせいで皺寄せが私に来るんですよ!」


 そうなのだ。具体的に言えばステンの娘が嫌がらせに来るし、トンプソンの娘は奴の弱点を聞きに来るし。


「ハッハッハッハッ、それは大変だね。

 彼には言ったのかい?」

「いえ。

 言ったら最後、脅しに行って公社相手に戦争するでしょうアイツ」

「いいじゃないか。

 私も昔はやったよ。一度は大きな権力に噛み付きたくなるものさ」


 ハッハッハと笑うシェリフは当てにならないというのは確かだろう。

 やれやれ。

 取り敢えず、ベルナドット傭兵団から受けた銃の仕上げをしなくちゃ。


「何をしてるんだい?」

「ベルナドットさんからの大口受注ですよ。

 期限は言われなかったから確り作ってるの。AK系を元にして私が作ってるんです」


 完成した一丁をシェリフに渡す。シェリフはそれを受け取ると槓桿を数度引き、構えてからドライファイア。


「銃床や被筒はプラスチックか」

「木より手入れは簡単だし、直しやすいです。

 機関部の外側は削り出し。中はロストワックスとコールドスチールで作りました。頑丈です」

「成程。フルオートとセミオートのみか」

「ええ、それだけあれば十分でしょう?」

「確かに」


 シェリフは手にとった銃をカウンターに戻す。

 咥えた葉巻を燻らせて、コーヒーを一口飲んだ。


「シェリフは暇なので?」

「ああ、暇だね。

 最近、忙しいのはうちのに押し付けて、楽なのをやっているんだよ」


 ハッハッハと笑うシェリフが突然入り口を見た。つられて見るが誰もいない。

 暫くするとバンと扉が開き一人の少女が転がり込んで来た。何だ何だ?


「たっ!助けて下さい!!」

「待て!」


 そして、その後を黒服の男達が銃を片手に飛び込んで来る。私はカウンターの裏に素早く引っ込み、隠してある特製ショットガンを取り出し、シェリフはいつも通り落ち着き払った様子で葉巻を咥えた。


「助けて下さい!」


 少女は私とシェリフに告げる。私はシェリフを見た。


「一人の少女を大の男が二人がかり。しかもそんな物騒なものまで持ち出して、穏やかでは無いな」


 やれやれと言う顔でシェリフが立ち上がって少女の前、男達の間に立ち塞がった。


「何者かは聞かない。

 怪我をする前に出て行きなさい」

「黙れ!そこの女を渡せ!」

「たとえシェリフだろうと容赦はせんぞ!」


 男達は手にしたレーザーガンをシェリフに向けた。公社製の軍用拳銃であるが、まぁ、民間人もどこからか手に入れてるし私の店にも置いてある。

 取り柄は頑丈さと威力に手に入りやすいパーツ。

 ソレ以外はなんの取り柄もない。面白味にかける銃だ。


「やれやれ」


 シェリフはきかん坊に手を焼く母親の様に首を振り、次の瞬間にはババンと銃声がした。

 シェリフが撃ったのだ。アキに負けず劣らずの早撃ち。男達の肩に弾は当たる。

 M1851“フォーチュネイト・サン”だ。36口径のリボルバーで、元々はパーカッション式だったが金属薬莢が扱える様に設えた物だ。


「命までは取らない。

 さぁ、出て行きなさい」

「くそ!」

「後悔するぞ!」


 男達は見事な捨て台詞を吐いて去って行く。私はロビタに命じて塩を撒かせ、序に拳銃を回収しておく。在庫が増えたわ。


「ありがとうございます!」


 成り行きで助けた少女はシェリフに頭を下げ、私に頭を下げる。


「私は何もしてないわよ。

 それより、貴女さっさと逃げなさいな。彼奴等のバッグは中々に立派な組織よ」

「えぇ!?

 先輩が助けてくれないんですか!?」


 誰が先輩よ。


「誰が先輩よ」

「えぇ!?」

「エマ君。彼女、君の知り合いでは無いのかね?」


 シェリフがハテと首を傾げた。

 私は再度少女を見る。シッカリと顔を。


「んん~?」


 誰かしら?暫く考え、顔を見詰めるも思い出せない。


「ヒント頂戴!」

「キノコ」

「きのこぉ?」


 キノコ関係に知り合い居たかしら?


「ロビタ、キノコで私の知り合い」

「リンチャン」


 あぁ!


「あぁ!リンちゃん!

 あーあー!居た居た!居たわねリンちゃん!」


 そうそう。懐かしい。

 私がまだ公社でガンスミスやってた頃よ。やけに懐いてきてた後輩がリンちゃんだ。


「今の今まで忘れてたわ!

 それでどうしたの?」


 リンちゃんを見るとホッとした様な何か文句ありそうな顔でこちらを見ている。


「私、自己増殖するナノマシンの開発に成功したんです」

「へーそう」


 とくに興味ないや。


「良かったわね」

「はい。ありがとうございます。

 で、その設計したのはいいんですけど、私以外に理解出来る人居なくて……設計図隠してんだろう!って公社のその私を嫌ってる派閥が……」

「あー出た出た。

 公社のゴミ」


 私はそういうのが嫌いで逃げてきたのだ。


「そっかーリンちゃんもついに公社から逃げてきたんだ〜」

「ええ、はい。

 なので暫くの間匿ってもらえませんか?」

「無理じゃな」


 自身持って言える。


「えぇ!?即答!?」

「だって、私も今、公社から嫌がらせ受けててさ〜

 結構困ってるんだよねぇ」

「そ、そんなぁ……」

「アキに話をしに行ってみてはどうだい?」

「アキ……?」


 シェリフが新しい弾を込め終わり、ホルスターにフォーチュネイト・サンを納めていた。

 アキね。アイツなら何とかしてくれるかも。


「アキってどんな人ですか?」

「ガンスリンガーって知ってる?」

「勿論!知ってますよ!

 火星に行ってたった一人で一週間戦線持ち堪えたり、どんな頑強なパワーアーマーを纏ってもたったの一撃で撃破しちゃったりする人ですよね!?

 あとあと!確か赤城ミリアを愛人にしたりベルナドット傭兵団の団長を嫁にしたりしたって聞きました!」


 尾ひれが付き過ぎて凄いことになってる……まぁ、どうでもいいや。


「事実と少しばかり違う所は有るけど、だいたいそんな感じね。

 私、アイツの知り合いだから紹介するわね」

「ホントですか!?

 契約料凄い高いって聞きましたよ!?」


 大体数億円!とリンちゃんが告げる。そんなバカな。

 兎も角、アイツに会いに行こう。


「取り敢えず、あいつに会いに行きましょ」

「は、はい!お願いします先輩!」

「私も行こう。

 二人だけで野蛮な連中が居る外に出すのは些か気が引ける」

「お願いします、凄く強いお爺さん」


 どうやらリンちゃんはシェリフの顔を知らないらしい。

 取り敢えず、護身用のショットガンを片手に外に出れば腰ぐらいの大きさの手足の生えたマッシュルームがモニュモニュ歩いていた。

 何これカワイイ。


「え、何この生物?凄く可愛いんだけど?」


 持ち上げようと手を伸ばすと凄い速さでリンちゃんの後ろに隠れた。

 おお?


「あ、この子は私が作った自己増殖ナノマシンです。ナノマシンの集合体で雨が降ると増える仕組みにしました」

「増やしてどーなるの?」

「あちこち歩き回ります。

 1週間ほどほかっておくと大きくなってこの子達の母体になります」

「母体になるとどーなるの?」

「凄く強くなります」


 リンちゃんが待ってくださいねと、背負ってるリュックから端末を取り出して私に見せた。其処には白衣を着たツインテールの少女が見える。


「この子覚えてますか?オオスですよ」

「あー……何となく覚えてるわ。

 パワーアーマー大好きな変な奴よね」

「はい、その子の開発した凄く強いパワーアーマー何ですけどね」


 金魚鉢を被った様なパワーアーマーが前に出てくる。動画を撮っているのはリンちゃんなのだろう。彼女の画面の端にはベージュ色の謎の物体が映っていた。

 しばらく見ているとそのベージュ色の物体がノシノシ動き出し画面の中に収まる。


「うわ、でっか……」


 2メートルを超える巨大な手足の生えたのマッシュルームだ。

 巨大なマッシュルームはそのままゆっくり歩いている。金魚鉢は手に持った機関銃をマッシュルームに向って撃った。公社製のビームマシンガン。

 軽装甲車程度なら難なく打ち壊せるのだ。しかし、そんなビームを食らってもマッシュルームは怯むどころか激怒した様子で走り出し、そのまま金魚鉢をぶん殴る。するとまるで大砲でも撃ったかのように凄まじい音がして金魚鉢が吹き飛んだ。ノーバウンドで20メートル。壁面にぶつかってそのまま地面に叩き付けられる。

 マッシュルームは暫く様子を窺うように左右に動いたが、金魚鉢が動かないと見ると構えを解いてゆっくりノシノシと徘徊し始めた。

 オオスは大急ぎで金魚鉢の頭を外せば頭がふにゃふにゃになり耳や目、鼻に口から血を流して死んでいる公社の兵士が出て来た。


「精密に調べた結果、全身の骨が砕けていたらしいですよ。

 流石にパワーアーマーは凹み程度だったらしいですけど、中の人は衝撃に耐えられなかったみたいです」

「このパワーアーマー、アキが正面から頭を撃ち抜いた最新鋭の奴じゃないかな?」


 隣で見ていたシェリフの言葉に思わずリンちゃんを見る。 


「あ、そうです。

 耐衝撃に凄い強度有るって聞いたので試しにどの程度の威力発揮出来るか検査した時の映像です。

 残念ながらアーマーは壊せなかったです」


 映像では、衝撃に中の人は耐えられなかったけど私のアーマーは耐えたから私の勝ち!と謎の勝利宣言をしているオオスが居た。

 まぁ、たしかにそうね。全身義体ならまた変わってくるかもだし。


「この大きなのはこの近くにいるの?」

「居ないです。

 公社から逃げる時に囮になって大暴れしてもらったのでその際やられちゃったと思います」


 公社は大損害じゃないかしら?


「君、公社に戻れないかもね」


 シェリフが苦笑しながら首を振った。


「もう戻る気ないので大丈夫です」

「成程、なら大丈夫だね」

「じゃ行きましょうか」


 あのマッシュルームを倒すのにどれだけの弾を撃ち込めば良いのかしら?

 弱点なさそう。足元をウロウロしている子供マッシュルームを見るが顔も無い。


「これ、弱点とかあるの?」

「大体体のど真ん中あたりにナノマシンを制御してるコアが出来るように作ってあるので、そこ壊せば止まりますね。

 あ!あと、このマッシュマン達の凄い所は食べれるんですよ!食べるとすごく美味しいです!」


 リンちゃんが足元を彷徨くマッシュルームをむんずと掴み、弱点らしい箇所を指差す。


「焼いて良し、蒸してよし、煮てよし。

 どんな調理にも合います!私のオススメはシンプルに炭火で焼いて醤油を垂らして食べることです!」


 控えめに言って不味そう。


「ほう、それは興味深いね。

 兎も角、先を急ごう」

「あ、はい」


 シェリフに促されてアキの事務所に向かう。周りを何時の間にか増えているマッシュルーム達がウロウロし道行くゴロツキなどが怪訝な顔をしていた。


「何だコイツ?」


 そして案の定、一人のゴロツキがマッシュルームを蹴飛ばした。


「あ!」


 それを見たリンちゃんがやっちまったな!と言う顔をした次の瞬間、ゴロツキの股間にマッシュルームの右ストレートが叩き込まれる。

 ゴロツキは口から泡を吹いて倒れ、ピクリとも動かない。


「小さくてもプロボクサーの本気のストレート位は簡単に出ます。

 危害を加えなければ大丈夫ですよ」


 ゴロツキの相方だろう、男が倒れたゴロツキの首筋に手を当てる。


「し、死んでる……」


 そりゃ、金玉にプロボクサーの渾身のストレートが入れば死ぬよね。


「色々、先を急ごう」

「そうですね。

 この街からゴロツキが一掃されちゃいますね」


 私達は可及的速やかにアキの事務所に走った。

ダークタワーがネトフリで配信開始したからちょっと熱が戻った


リンちゃんとマッシュマンは最初期の小説にあったネタ

マッシュマンは黒き森の庭に居るアレ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 待ってたやで!やっぱアキ頭おかしいんやな…
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