act.24
「貴方が一番良いって聞いたから来たのよ」
僕の目の前にはこの時代では一切見なくなったフリフリで煽情的な衣装をまとった少女だ。
「誰からそう言われたので?」
僕はそっちに目をくれず、エマが押し付けてきた試作の拳銃弾を選別する。弾頭の傷の有無、薬莢の凹み、傷、そして雷管の状態だ。錆が浮いていたりするならダメだ。
200発取り敢えず貰って100発を確認し終わった。内20発が僕目線でダメな銃弾だ。
「誰だったかしら、あのうだつの上がらそうなヨレヨレスーツを着た男」
「ああ、セブさん」
あの人は優秀なリクルーターだし情報屋だ。
「セブって言うの?あの男」
「ええ、セブさんですね。
それで、貴女の依頼は?」
「簡単よ。
私の護衛をしなさい」
護衛任務。こういう依頼、最近多いよね。
「誰から護衛するんだい?」
「私に危害を加えようとする全員よ。当たり前でしょう?馬鹿なの?」
イラっと来る。
「馬鹿かどうかは知らないが、僕がやらなくても良い依頼だね」
「お帰りはあっちだぜ、プッシー?」
ソファーで寝転がっていたベルナドットが扉を指差す。
「一流の人間には一流の護衛が付くのよ?
私が貴方を一流と認めてあげてるんだから感謝しなさい」
「何様だテメェ?」
ベルナドットがソファーに座り直すと依頼人を睨み付ける。
「私が何者?アンタそんな事も知らない?流石犬畜生もどきね!
私は世界的歌姫のミリアよ。赤城ミリア。世界的大スターよ?」
赤城ミリア?……僕の記憶にはない。
「君が寝たのは西暦何年だい?
僕は2030年頃だ」
「わ、私は45年位だったわ!」
ふぅん。じゃあ、僕が知らない訳だ。
「そうか。つまり、僕にとっては未来のスター様って訳か。
それで、期間と料金は?」
一通りの目途が付いたので弾から大スター様に目を向ける。ミリアは僕が見るとビクリと震えた。
「おい!こんな奴の依頼を受けるのか!?」
「うん。デブ君とマリーにも良い訓練に成るだろう?
それに歌姫と言うんだから、タダでコンサートを観れる。これほど美味しい仕事は無いね」
皮肉を込めて告げると、ベルナドットもそりゃいいと笑っていた。
そして、そんな下らない事を話しているとマラソンを終えたマリーとデブ君が戻って来る。
「た、ただいま、も、もどりました……」
「デブさんは昨日よりも3分早く走れるようになりました」
死に掛けているデブ君と涼しい顔をしているマリーが実に対照的で思わず笑ってしまった。
そして、マリーが何の気なしにミリアを見て、固まった。
「あら、可愛い子と醜いデブね」
「あ、赤城ミリア……」
どうやらマリーは知っているらしい。
赤城ミリア、本当に有名人なのか?
「マリー、知っているの?」
「知らないんですか!?」
逆に聞き返された。ベルナドットを見ると、彼女も肩を竦めている。マリーは僕等の反応にお気に召さなかったのか無言でテレビを付ける。テレビでは何時も通りの詰まらない軍の募集CMが流れ、公社の嘘と見栄のCMが歌っていた。
そして、そんなCM群の中でも異質なものがチラホラ。具体的に言えばミリアが映る化粧品や今では娯楽品として名高い菓子、ジュース等が映っているのだ。
「ほら!」
何に対してのホラなのか分からないが、ミリアが言う。
更にチャンネルを回せば公社が後援しているニュース番組でもミリアの特集を組んでいた。ふむ、成程ねぇ。公社に可愛がられている訳か。
「この世界は娯楽が全くないわ。
アイドルも居ないし、芸術もない。詰まらない世界よ」
「そうか」
「そうよ!だから私がアイドルとして、世界的歌姫赤城ミリアがこの世界を少しでも明るくしてあげるのよ!貴方はそんな私の護衛が出来るんだからこれほど光栄な事はないでしょ!!」
ベルナドットが拳を固めるので落ち着けと宥め、それからマリーを見る。因みにデブ君はシャワールームに走って行ったのでそういう事なのだろう。
「先生!」
マリーが勿論受けるよなぁ!という目で僕を見ていた。本人がやる気だし、まぁ、良いか。
シガリロを吸い、紫煙を吐く。
「ま、良いんじゃないかな。
期間とお金次第だけど」
言うとマリーがミリアに走る。
「ミリア様、うちの先生は15本の瓶をリボルバーを使って5秒で全て撃てます。また、距離300メートル先のパワードスーツを着た宇宙人を狙撃して殺す事も出来ます。なにより、先生はあのシェリフの弟子です。弟子を取ろうとしなかったあのシェリフが唯一弟子として認め、さらにはその事を宣顕する事を認め、そして、何よりも独立し事務所を構える事を許可した存在がうちの先生です。
仕事は常にスマートで、無駄なくそつなく、そして紳士的に解決します。よく、依頼人が値段が高いと言いますが、それは先生の仕事を見れば寧ろ言い値の倍払っても後悔しない程です。ええ、それはもう。私の服を見て下さい。
これ、先生が揃えてくれた服です。凄いと思いまいませんか?私が先生の教え子と言うのを一発で分かる衣服です。そうです。先生の服の趣味もアメスピ風で統制されているので落ち着いた雰囲気なんですよ。しかも、先生はまだ若い。そうです。今、知り合っておけば、後々、つまりはもっと凄腕になった時にも依頼を出しやすいんですよ。ええ、本当に」
そしてビックリするぐらいの早口でまくし立てた。ミリアは勿論、後ろに控えていたマネージャーっぽい公社の男もドン引きだ。僕もドン引きだ。取り敢えず、落ち着くべくシガリロを一口。
「マリー」
として、フンスフンスと鼻息荒くミリアに近いマリーを呼ぶ。マリーはハイと僕を見る。うん、恐ろしいよ、君。怖い怖い。何だその興奮は?君、そんなキャラじゃないだろう?最近エマに預け過ぎたか?
因みに、アリスは公社の仕事が忙しいからとマリーへの授業は無期限の休講になった。浮いた分はエマに銃の整備と弾丸の製造を教えて貰うために任せたのだが、それが悪かったのかもしれない。変なところで変な風に育っているのかもしれない。
「あまりカッコいい事を言うと失敗した時が恥ずかしいからね。
それに選ぶのは君でも僕でもない。結局は依頼人たる赤城さんだ。さぁ、期間と金を」
それから取り敢えず一か月の護衛依頼を億で受けた。最近、儲けが良い。
警護は明日の朝8時から開始で警護の間はずっと一緒に居ろとの事。寝泊まりも向こうが用意してくれるそうだ。それとマリーとデブ君、浮気防止と五月蠅いベルナドットが共に参加する事に成った。勿論、三人を含んでの億であるからして、メンツで言えばむしろ安いだろう。プロが1人に一人前が1人、半人前が1人と素人が1人なのだから。
翌朝、僕等は指定された公社本社ビル。そこののロビーで待機していた。応接スペースの一角に座って待機。受付嬢に用件を述べたらお前みたいな連中はそういう手を使って赤城ミリアに会いに来ると追い払われたのだ。
門前払いって奴だな。
「ま、良いさ。
本人は此処と言ったが、此処の何処とまでは言わなかった」
約束の時間から10分経過して、怒髪天のミリアがコッホとアリスを連れて現れた。
「ちょっと!何で貴方はこんな所でタバコを吸ってるのよ!」
「受付嬢が通してくれなくてね。
仕方無いからここで待っていたんだ。君も、僕等の話を通してくれても良かったんじゃないのかい?」
「通したわよ!」
なるほど。取り敢えず、銃を抜いて受付嬢を撃ち殺しておく。
「彼女は君の命を狙っていた変質者の一人だった訳か」
「ええ!?た、ただの嫌がらせでは?」
デブ君が空気を読まぬ発言をする。周りの警備員達が殺意を持って銃を構えている。
「まさか!
公社がバックアップしている赤城ミリアの護衛として僕達はここに居るんだぞ?
しかも事前に赤城ミリアから通達も出していた。それを個人の裁量で跳ね除ける、それを高々一介の受付嬢如きが出来るとでも?まさか!彼女は、赤城ミリアの、命を狙っていた変質者だ」
敢えて周囲に聞こえるように声を少し張ってデブ君に告げる。するとその場の空気が動揺した。
「でもいきなり殺すのは……」
「甘い。甘いよデブ君。君の大好きなホイップクリームがたっぷり入ったスポンジケーキ以上の甘ちゃんだ。
この世界に置いて敵を許すなんて博愛主義は死んだ。有名な哲学者が言ったろ?神は死んだってね」
リボルバーを回してホルスターに。
「此処に全ての人間に告げる。
僕ことガンスリンガーは一ヶ月間、此処に居る赤城ミリアの護衛を仰せ付かった。
この一ヶ月間、僕は彼女の不利益となる行動をした者を撃ち殺す。それが出来心だろうが一切関係ない。
僕の引き金を軽い。殊更敵に対してフェザーライトだ」
覚えておいて欲しい、そう締め括ると警備員達は完全に銃を下ろし、拳銃を抜いていた者はホルスターに仕舞っていた。
宜しい。
「それと、君も不用意に外出とかも止めてくれよ?
出掛ける事に制限はしないが、僕等の見えない所に行くのはトイレの個室とシャワールームのブースに、ベッドの中だけだ。それ以外はこの4人の内2人が必ず付いていく」
言うとミリアは分かってるわよと青白い顔をして頷いた。
因みに受付嬢の死体は程無くして清掃のおばちゃんと警備員の手に依って片付けられた。
「じゃ、お仕事いこうか?」
最初は雑誌の取材だった。
公社のビルの一角にある部屋で。この世界の娯楽はほぼ公社が管理統制している。多目的企業と化した公社はその莫大な資金と膨大な人員で援助とか支援とかしており、つまりは株主様みたいな物だ。
だから公社が喋らせたいことを喋らせる。
「なるほど、ミリア様は……」
記者が真面目に頷き、マリーとデブ君もその後ろで頷いている。何やってんだろうねこの二人は?
「なぁ、此奴等なんで公社共の話をメモってるんだ?
このクソアマいらねぇじゃん」
そしてベルナドットが言ってはいけない事を平然と大声で尋ねてくる。
「ベルナドット。例えそれが真実だとしても、口に出してはいけない」
沈黙は金なり。
シガリロを咥え火を付ける。
「要人護衛ってのは依頼人の顔を立てるのも仕事の内だ。たとえ、居る意味のない取材に同行し、本来の任務を忘れてインタビューに聞き入ってても、ね」
マリーとデブ君を見ると二人共慌ててその場に気を付けをした。やれやれ。
「何だい?
そのお遊びを続けでさっさと終わらせなよ。僕等は護衛だ。見物じゃない」
そして、記者と公社の奴等が僕を見ていたのでそう言うと何をしてるのか分からない連中は再び当人置いてけぼりの謎の話し合いを再開した。
置いてけぼりを食っている当人は暇そうに爪を掃除したり並べられた雑誌を読んでいるだけだ。
そんな謎の光景を眺めて1時間。インタビューがようやく終わり、ベルナドットが大きく伸びをした。
「なーにが楽しいんだかね?」
「さぁ?
僕は護衛だからね。依頼人がそれで良いなら良いんじゃないの?当人も文句は言ってないし」
シガリロを極めてゆっくり吸うことに成功し、ちょうど無くなった。
僕は今、結局仕事忘れてインタビューを聞き入ってた生徒二人の様に満足感が満ち溢れている。
「この仕事は間違いだったね」
「あぁ、違いねぇ」
ギュッと灰皿にシガリロを押し付けてミリアを見る。
「次は?」
「撮影よ」
「分かった」
何の撮影かは知らないし、どうでも良い。
「そう。どこで撮るの?」
「外よ」
外か。
「外だから狙撃に注意してね」
取り敢えず皆に言っておく。
僕はネイビーにレーザー弾を入れておく。あと、一応持って来たライフルにマイクロピープを付けておく。
「何だい、その穴は?」
「この穴で遠くの的をハッキリ見て狙撃するんだよ」
「スコープじゃ駄目なのかい?」
「スコープだと調整が面倒臭いんだよ。管理も大変だし、そもそも僕は狙撃兵じゃない。マリーと違ってこう言うなんちゃってで十分なのさ」
マリーは8倍のスコープを付けたセミオートライフルを持ち出し、デブ君は僕があげたM60を担いでいる。
「戦争でもする気なの?」
ミリアが怪訝な顔をしてデブ君とマリーを見ていたので、この位は目を瞑ってくれと笑っておく。
それから少し郊外に移動し裕福層向けのプールへとやって来た。マリーの目がランランとしていた。そうか。来たことないもんね。
マリーがお気に召すなら連れてこようかな?
「着替えに行くから」
ミリアが言うのでベルナドットとマリーに更衣室をよろしくと頼む。ベルナドットはあいよと笑い、マリーを小脇に抱えると小銃片手に中に。
暫くしてから仕掛けられていたのか大量の盗撮カメラや赤外線カメラ等を持って出て来た。
「おら、ちゃっちゃと着替えな」
そして今度はミリアと共に中に。ミリアは仕掛けられていたカメラの量に驚いていた。僕もこの量には流石に苦笑を隠し切れない。
「じゃ、デブ君は良さげな場所を選んで据銃してみて」
女子の長い着替えを待つ間、僕はデブ君と共に撮影現場の安全化を図ることにした。
某偶像マスターの幼女とは何の関係もないよ
どちらかと言えばこの前改二来た方からだよ
更に言えば偶像マスターはアニメしか知らないよ
だから話振られても「しぶりん普通に円光やってそうだから好き。中居はなんでCMに出たの?」とか「にょわーって言う巨人は杏ちゃんの保護者なんでしょ?渋とかツイッターでよく見る。何で中居をCMに起用したの?」とかその程度のあっさい上に喧嘩売るような返答しか出来ないから注意してね




