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俺のリロードもレボリューションして欲しい  作者: はち
Shotgun Marriage in Detective
20/30

act.20

 くるみ子先輩がデブ専だった。うだつの上がらないヲタクみたいなデブだ。


「最悪だ」


 隣では身長190近い狼女が全裸で寝ている。僕も全裸だ。

 頭が痛い。ガンガンする。記憶も朧気だが、バーでシコたま飲んだのを覚えている。隣にはベルナドットも居た。そこは憶えている。

 そこからどうやって家に帰ってきたのか、とかどうしてこうなったのか?とかは分からない。

 もう一度隣を見る。鍛えられ引き締まり、日焼けした体は実に扇情的だった。


「最悪だ」


 取り敢えず脇に落ちてるパンツを履きズボンを履いてからシャツをはおる。

 事務所に出るとマリーが昨日のデブと向かい合って座っていた。何やってんだろ?


「あ、あの!おはよう御座います!!」

「済まない、声を抑えてくれ……二日酔いなんだ」


 マリーは何時ウチに戻って来たのだろうか?

 時計を見ると昼前だった。大分寝坊した様だな。デブは立ち上がり深々と頭を下げている。


「済まないマリー……水を」

「先生、お酒臭いです」

「ああ、反省している」


 マリーにお小言を言われつつ目の前のデブを見る。


「確か、昨日会ったくるみ子さんの彼氏さんでしたね?」

「い、いえ、その、彼氏と言うか……」


 照れつつも否定したいが否定できないみたいな反応にイライラする。ただでさえこっちは眼の前のデブのせいでイライラしているというのに……


「見ての通り、僕は今、気分が宜しくない。

 手短に、要点を纏めて、話して下さい」


 マリーから差し出された水を飲む。


「あの、僕をくるみ子さんに相応しい男にして欲しいんです」


 何なんだ此奴は?何と具体性の無い依頼だろうか。

 そんなのだからチンピラに金を巻き上げられるのだ。


「自分が相応しくないと思っているのなら身を引け。

 それが二人の為だ」


 シガリロを探し、それから見当たらなかったのでマリーに部屋に取りに行くよう頼もうかと思い、止めた。

 部屋には背けたい現実が寝ているのだ。


「おぅい、旦那様よぉ」


 背けたい現実は僕が意識を外そうとした所で忘れるなと遣って来る。ハードボイルド小説でも主人公が苦しんでいる。

 やってしまった責任は取らねばならない。それは速いほうが良い。面倒臭い事なら尚更だ。

 面倒臭い責任はニタニタ笑い、上裸でこちらを見ている。マリーの教育に悪い……とは言えないか。最早全裸も家を歩くのだから。

 やれやれ。


「デブ君。

 折角だから紹介しよう。僕の妻のベルナドット。イレーナ・ベルナドットだ」

「は?」

「は?」


 見事に女性陣の声がハモり、デブ君が小声でデイブですと告げた。聞かなかった事にしよう。


「マリー、コーヒーを。

 デブ君。君はくるみ子さんに相応しい男になりと言っていたね」

「え?あ、はい。

 あの……」

「何か?」

「いえ、その、二人が固まってるのですが……」


 見ればマリーが目を見開いて僕とベルナドットを見比べているし、ベルナドットも目をまんまるにして僕を見ていた。無視しよう。


「構うな。

 マリー!コーヒーのお代わりを!」

「ちょっとエマさんとアリスさんとマガトさんの所に行ってきます!」


 マリーはそう叫ぶと何時も使っているポーチと帽子、ルガーを片手に飛び出して行く。

 しょうがないのでベルナドットを見るとベルナドットは満面の笑みで飛び付いてきた。


「離れてくれませんか?」

「断る!」


 面倒臭いのでこのままにしよう。


「話を続けよう、デブ君」

「あ、はい……分かりました」

「それで、君が思うくるみ子さんに相応しい男はどんな男なのかな?」


 因みに僕はお師匠みたいな人だと思う。


「えっと、その、貴方がくるみ子さんに相応しい男だと思うんです」


 此奴、意外に良い奴なんじゃないか?いや、くるみ子さんを寝取った時点で良い男でも何でもなくただの寝取り男だ。死ねばいいのに。


「僕を目標にしたい、と?」

「え、ええ、簡単に言えば」

「ふむ……」


 なんと言うべきか、腕を組もうとしてベルナドットが邪魔だった。


「お前じゃ無理だろ。諦めろよ」


 そして、ベルナドットが呆れた顔で告げる。


「まず、痩せろよデブ。

 デブは自己管理出来てねぇ証拠だ。見ろよ、うちの旦那様の体を」


 ベルナドットが羽織っているだけのシャツを奪いさると僕の腹筋と胸筋、腕を手に取る。


「必要以上に筋肉は付いていないが、必要な分はある。贅肉も殆どない。

 お前のその体は何だ?ガキでも孕んでるのか?腕は何だ?火傷でもしてるのか?」


 ベルナドットが痩せてからまた来いと鼻で笑う。デブはうぅっと俯いてしまった。


「取り敢えず、デブ君。

 君は一日に100回づつ腕立て伏せと腹筋、背筋をしなさい。そして、10㎞を走りなさい。それを毎日続けて今より体重を10㎏減らしたらまた来なさい。

 そこから僕は君にくるみ子さんに相応しい男にしてやろう」

「はい……」


 デブは俯いて意気消沈のまま立ち上がる。何だろう。ベルナドットの言う通りなのだが余りに可哀相だ。敵であるが同情してしまう。


「デブ君。

 君に良い言葉を贈ろう」

「はい?」

「友人や恋人の事で悩むことが有るだろう。金や名誉の事で悩む事があるだろう。

 しかし、たった一つ君を裏切らない真の友が居る。それはなにか分かるか?」


 デブは何だろうか?と考え、それから銃ですか?と尋ねてきた。


「違う。

 そんなものでは無い。もっと身近にある。お前の身体、筋肉だ。健全な精神は健全な肉体に宿る。

 筋肉は裏切らない。くるみ子さんに相応しい男になるなら筋肉を鍛えろ。

 一日100回の腕立て伏せと腹筋に10kmのランニングだ。プロテインも飲めよ。

 腕立て伏せと腹筋は一回で最低でも60回は続けれるように成れ。多分、最初は無理だろう。

 分からないことがあればウチの嫁に聞け。

 シックスパックは伊達じゃない」


 僕の胸に顔を押し付けているベルナドットを引き剥がして、見事に割れた腹筋をペチペチ叩く。スタイル抜群のボン・キュッ・ボンだ。

 ベルナドットの尻尾は満足そうに左右に大きく揺れていた。

 獣人、と言うには些かあれだが遺伝子に動物のDNAを組み込まれた人間は驚異的な五感と身体能力を有する代わりに接種したDNAの特徴が数百年の間で現れるようになったのだ。

 猿なのになー

 ベルナドットは犬、と言うか狼系だ。平原や森林部での戦闘向けに開発されか。他にも山岳兵向けの猫系、市街地での戦闘用に爬虫類、特にトカゲやヤモリ。

 フロッグマン用に魚類は無いのか?と思ったが流石に肺呼吸しない生物は無理らしい。代わりにイルカから進化させた奴が居るとかなんとか。


「変わるなら、此処だぞ」


 そしてベルナドットがそう言って親指を立てた。

 デブは大きく頷きまた来ますと去って行く。僕はソファーに背中を預け、目を瞑る。頭が少し痛い。

 暫くそうしていると寝てしまった。


「おい、起きろ」


 ペチペチと頬を叩かれて目を覚ます。首を持ち上げると、見知った顔が勢揃いしており、かなり驚いた。


「これは皆さんお揃いで」


 取り敢えずそう口にすると、マリーが無言で手鏡を差し出した。見れば顔に落書きをされている。犯人は探すまでも無い。

 同居人のカキタレを見れば困った様に笑ってる。


「あのバカは?」

「「「用事があるから暫く帰らないって」」」


 全員がハモって答えてくれた。

 帰って来たらぶち殺すか。


「ちょっとシャワー浴びてくるのでお待ちを」

「お湯の準備はしてます」


 マリーがバスタオルを差し出しながら教えてくれた。

 それから10分程でシャワーを浴び、着替えてから全員の前に。ベルナドットもビキニみたいな上着に野戦服のズボンにブーツと言う格好で座っていた。


「取り敢えず、良うこそ我が事務所へ」


 シガリロを咥え、火を付けようとすると脇から伸びた手がシガリロを奪い去る。ベルナドットがニッコリ笑った。


「取り敢えず、禁煙から行こう」

「巫山戯るな。

 そこまで指図されるつもりは無いぞ。それと、僕の妻のギレーナ・ベルナドットだ」

「ちょ、ちょっと!?どういう事!」


 アリスが目を見開いていた。全員が驚いた顔をし僕を見ている。

 だから嫌なんだよなぁ〜


「酒に飲まれた結果、と言う奴だ。

 責任の取り方の一つだよ。上手い事ヤられた」

「ヤッてやったぜ。

 いや、この場合は私がヤられたのか?まぁ、どちらにせよ計画通りに事は進んだ訳だ」


 ベルナドットは再度ヤッてやったぜと告げる。親指を立てて、丁度真正面に立っていたアリスに。


「……まぁ、なんだ。

 君がそれで良いならそれで良いだろう」


 お師匠が困ったように笑い、エマは満足そうに笑う。エマの目にはドルマークが浮かんでいる気がした。


「ふ、不潔よ!」


 アリスはそう叫ぶと家を飛び出て行った。ぐうの音も出ない程の正論だった。


「ハッハッハッ!

 不潔でも何でもあるものは使って自分の物にするのが傭兵流だ」


 ベルナドットはそう笑い、アリスの隣りにいたくるみ子さんは難しい顔をしてから、アリスを追いかけると出て行った。この場合は僕も行った方が良いのだろうか?


「僕も追いかけた方が良いんですかね?」

「いや、君が行くとややこしくなるだけだ」


 お師匠が止めなさいと真顔で告げるのでやめる事にした。僕もあまり彼女には関わりたくない。


「じゃ、私が行く。

 女同士の話し合いって奴さね」


 ベルナドットはそう告げると得意気な様子で鉈のような刀を背負って出て行った。そんな物騒なものを置いていけ、とは言わない。

 目に見える抑止力を持たない女は路地裏に引きずり込まれるのだから。

 まぁ、ベルナドットが引き摺りこまれる事になっても次の瞬間には引きずり込んだ奴が裸足で逃げ出してくるだろうけど。


「ま、何だ。

 結婚は人生の墓場ってよく聞くけど、頑張りなよ」


 マガトが他人事の様に笑い、出て行った。何だアイツ。知ってるよそんな事は。

 それからその場にはお師匠とマリーにエマが残る。


「取り敢えず、結婚おめでとう。

 この世界じゃ何処かに何か届けるとかそう言う制度は無いから」

「宇宙人達の戸籍登録の一環でやっていなかったかな?」


 お師匠がハテと首を傾げた。


「宇宙人達に協力してるどれだけ居るんですか。

 取り敢えず、いい金蔓何だから離しちゃだめよ」

「君基準で考えるのは止めないかな?」


 エマらしいと言えばエマらしいが。


「嫌よ。

 私の世界は私の世界を中心に回ってるんだもの。じゃ、私もベルナドットさんの銃仕上げるから帰るね」

「分かった。

 また店に行くよ」

「ええ。

 何時でも待ってるわ」


 エマが帰る。お師匠が葉巻きを取り出して咥えた。

 お師匠が葉巻を咥え火を付けるとプカプカやりだす。マリーがスッと灰皿を差し出した。


「ありがとう。

 そう言えばマリー」

「はい」

「火星に行ってどうだった?」


 お師匠の言葉にマリーは難しそうに顔を顰める。


「私は、前線に出ることはありませんでした。ベルナドットさんのキャンプに居たし、誰かが撃ち合ってる場所に行きませんでしたがあんまり良い場所では無かったです」

「うんうん。そんなものだよ。

 私としても君はこっちの世界でも割と浅いところで頑張って欲しいものだよ」


 お師匠がチラリと僕を見た。

 あまり、深い所に引き込むなと言いたいようだ。お師匠は優しい人だからなぁ〜


「マリーは」


 そう声に出して二人の視線を集める。


「マリーは、その思いを大切にすると良い。

 僕は何も感じなかった。慣れすぎた結果だ」


 君にはあまり僕みたいに成らないで欲しいと告げる。

 マリーは難しそうな顔で首を傾げた。


「よくわからないです。

 私は先生みたいに成りたいです」

「……ふむ。

 君は紳士になりたいのかね?」


 お師匠が首を傾げた。


「先生みたいな人を紳士というのなら、私は紳士に成りたいです」


 マリーよ、それはよく分からん決断だよ。

 まぁ、僕としては契約履行するだけだ。満足するのはマリー自身。

 ……マリーが紳士か。容姿は良いから似合うだろうね。

ベルナドットの二つ名付けてやろうかどうか考えてる

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