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act.16

 翌朝だ。


「おはようございます、先生」


 与えられた天幕を出ると、マリーがシャコシャコと歯を磨いていた。隣には半分寝てるエマだ。シャコシャコしていない。


「エマはお眠のようだ。

 彼女は何時寝たの?」

「一時間前です」

「何をしてたの?」

「玩具を」


 マリーが天幕の前に置かれた一丁のライフルを見遣った。それは対戦車ライフルとでも言うべき物で、この前喫茶店でパックが使えるか!と大不評した銃を改造した物に見受けられた。


「あれは?」

「新しい玩具です」

「何が出来る?」

「確か、口径を25mmに上げて、そこから亜音速で榴弾やミサイルを撃つらしいです」


 頭が悪いのかな?


「誰が撃つのさ」

「私でも撃てるようにしたいらしいですよ」

「で、撃てるの?」

「今撃つと肩の骨が折れるそうです」

「怪我だけはしないでね?」


 25mmの砲弾を12.7mmの弾丸を撃つ。どう考えても銃が吹き飛ぶだろう。

 腰のリボルバーを抜いて朝日に翳す。ニュー・モデル・アーミーだ。名前を付けてやろう。


「銃に名前を付けるって案外難しいよね。

 何か良いアイディアある?」

「そもそも銃に名前は付けないのではないですか?」

「銃に名前つければ愛着出るでしょ?

 ほら、マリーも人形に名前を付けてるでしょ?」


 クマのぬいぐるみにマリアナグランデみたいな名前を付けていた。


「僕も小さい頃にはウルトラマン人形に名前を付けてた」


 ティガにセブンとか初代に太郎とか。


「あと、仮面ライダー人形にも付けていたな」


 うん。


「銃にも名前つけるんだ」

「……それは、先生の教訓ですか?」

「君がそう思うならそうすると言い。

 少なくとも、僕はお師匠が銃に名前を付けていたからそうするだけさ」


 リボルバーを回してホルスターに収める。お師匠から貰ったリボルバーも後ろの腰に差しているし、自動拳銃も付いている。傍から見れば拳銃大好き逝かれ野郎みたいな格好だ。


「何だその拳銃の数は?

 拳銃大好き逝かれ野郎か?」


 振り返ると公社の連中が立っていた。

 コッホを先頭に公社の警備部門が二人立っている。パワーアーマーを身に着け、手には重レーザーライフル。品の無い格好だ。朝からステーキを食べる様に品の無い。面倒臭いからアリスに押し付けよう。どうせ、テントに居る。


「アリスはあっちのテントだよ」


 一瞥し、それからシガリロを咥える。

 相手にするのも面倒臭い。コッホは嫌いだ。まぁ、嫌いだからって面と向かってあっち行けと言える程、僕は幼くない。それに、紳士的に対応するのもまた出来る男って奴だろう。お師匠ならそうするはずだ。


「何故、俺をアリス嬢に?」


 何だよ。素直にアリスの所に行けよ。

 僕はお前と話したくないんだよ。


「何故?

 今回の主人公は僕じゃない。彼女だ。僕の仕事は彼女の護衛だ。マリー、エマの顔に水をぶっかけて起こしてあげろ。立ったまま寝ているぞ」


 マリーがシャコシャコしながらパワーアーマーと重レーザーライフルを凝視していたので紫煙を吐き出しながら告げる。多分、エマは水をぶっかけてやらねば起きない。と、言うか彼女には仕事が無いだろうに別に無理してマリーに付き合って起きる事もなかったのではないだろうか?


「あ、はい」


 マリーがペッと唾を吐き、コップに入った水で口をゆすぐと直ぐに水場に走っていく。僕等はそんなマリーの様子を眺めておく。


「お前達は此処に居ろ」


 コッホがそう告げるとアリスのテントの方に歩いて行った。その場に残ったのはまだシガリロを吸っている僕、コッホの部下2人に歯ブラシを咥えて完全に寝ているエマだった。

 暫くするとえっちらおっちらと水を満載にさせたバケツを持ってマリーが戻ってきた。あれをぶっかけるのか。中々に鬼畜だな。まぁ、良いけどね。

 そして、エマの前に来るとエイとかわいらしい声でバケツの水をぶっかける。


「ぶぇっ!?」


 その衝撃は凄まじく、エマはカエルが潰れたような声を出してびしょ濡れで倒れた。


「おはようございます、エマさん。

 目は覚めましたか?」

「オーケー、マリー。バッチリ目は覚めたわ」

「では、ご飯だと思うので早く着替えて来て下さいね」


 マリーはバケツを持って水場に去って行った。エマは何故か僕を非難がましい目で見ていた。


「別に君は無理をしてマリーと同じ時間に起きる必要はないんだよ?」

「だって、私の作った銃を早く試射して貰いたいんだもの」

「あの銃をかい?」


 テントの前に置かれた25mmの逝かれた大砲を見遣る。


「ええ、そうよ」

「あんなのマリーが撃ったら肩の骨が砕けるだろうが」

「……そういえば25mmの銃身と機関部を仕込むことだけ考えてて反動の事を忘れてたわ!」


 ありがと!とエマは叫ぶとテントに走りこんでいった。……大丈夫かねあの子?

 紫煙を吐き出すと部下の二人が近付いてきた。


「あのガキはお前のコレか?」


 バカにしたように小指を立てられた。


「僕の、というか、この銃達のそれだよ。

 彼女は頭は可哀そうだが、腕は確かだ。君等と違ってね」


 灰を落とすと、部下二人が銃に指を掛けようとした。


「止めときな。

 此処はアタシ等の縄張りだよ。そして、そいつは私の夫だ。銃口の向きによってはお前等の首と体が今生の泣き別れだ」


 後ろにはベルナドット。おぉ、気が付かなかった。流石傭兵。腐ってもプロだな。


「まぁまぁ、落ち着きなよ。

 朝から生臭いの見たければ、此処から50㎞向こうに行きなよ。ドンパチやってるんでしょ?」

「正確には51.4㎞だ。

 止せ、ベルナドット。公社の人間を殺したらお前等全員皆殺しだぞ」


 そこにアリスを連れたコッホが戻って来た。

 アリスは少し不愉快そうだ。まぁ、好きな奴が仕事場に来たから嫌なんだろうな。


「ハン!

 私がお前等を怖がる訳ねぇだろう。此方と宇宙人と戦争してんだ。今更テメェ等が敵に回った所で何が皆殺しだ」


 ベルナドットが、傭兵団舐めんじゃないよ!と叫ぶ。おー、カッコいい。紫煙を吐いて、吸殻を地面に。


「まぁ、君等が公社と戦争しようが、公社が有力な傭兵団を一つ敵に回そうが僕には関係ない事だ。

 それよりも朝食にしないかい?」

「ああ、今その事で呼びに来たんだよ。

 ほら、マリーだったっけ?あのお人形みたいな子と油臭い変な子も呼んで来な」


 油臭い子は多分、いや絶対エマだろう。彼女はガンオイルの匂いがしみ込んでいる。

 取り敢えず、二人のテントの前に立って呼びかける。


「二人とも、朝ごはんだよ」

「直ぐ行くわ!」


 これは絶対に来ないパターンだ。

 

「マリー、エマを引き摺ってでも連れてくるんだよ」

「分かりました」


 マリーに言づけてからアリスを見る。いつもよりもおめかししている。何だ?コッホが来て調子乗ったか?まぁ、良いや。

 此処で褒めても文句言われるだろうし、そういうおべっかはコッホに丸投げしよう。

 ベルナドットを見ると、何やら昨日までさしてなかった口紅を差している。


「ベルナドット。何故、口紅を?」

「あ?決まってんだろう?

 アンタを落とすためさね」


 にやりと笑うベルナドットになんとなくだが感心してしまう。


「今まで化粧をしたことは?」

「無いよ」

「そうか。

 僕は、貴女を少し誤解していた。ガサツで阿呆かと思っていたが、ただただ自分に素直な人のようだ」

「漸く私の魅力に気が付いたのかい?

 まぁ、良いよ。これからどんどんお互いに仲良くなって行きゃ良いさ!さぁ、朝飯だよ!」


 ベルナドットは僕の腕を取るとずんずん引っ張って歩き出す。やれやれ。

 そして、引っ張られて屋根型のテントに行けばバイキング形式で様々な料理が並んでいた。美味そうだ。肉ばかりかと思いきやちゃんと野菜やパスタ、パンに米と結構並んでいた。そして、それらを皿に取ってテーブルと椅子が乱雑に並べてある場所で食事をするようだ。

 食事をしている面々の中に見覚えのある顔がある。昨日の一件以来何処に行ったか分からなかった同居人とその弟子だ。皿の上にこれでもかと料理を載せてがっついている。卑しい奴め。


「ウチの同居人は昨日何処に居たかわかります?」

「戦場じゃないのか?

 朝方ふらっと調理場に現れて大量の缶詰とかを血塗れば持ってきたらしくて、炊事班長が大喜びしてたぞ」

「……彼奴、米が食べたくて敵陣を襲いに行ったな?」


 阿呆だな。

 取り敢えず、トレーに皿を載せて食事をとっていく。どれもおいしそうだ。ポテトサラダにフライドポテト、鳥のガーリック焼き、野菜サラダも取ろう。主食はパンか米かで迷い明太スパゲティの様な印象を受けたパスタにした。

 それらを取って席に座ると必然的に全員が集まった。少し遅れて、マリーがエマの尻にショットガンを突きつけて連れて来たのには笑った。


「やるなじゃない」

「俺だけ先に目覚めちゃうけど、悪いな」

「「「は?」」」


 満場一致で顔を向けられた。

 これだからコールドスリープは辛い。


「自分のボケを自分で説明すると言う屈辱は僕は味わいたくないから説明はしないよ」


 ナイフで肉を切って口に運ぶ。うん。中までしっかりと焼けていて実に美味しい。


「ああ、旧文明のギャグか」


 そして、いち早くそれに気が付いたのはコッホだった。まぁ、公社には大量に旧文明、つまり世界崩壊前の世界の人間が大勢いるからね。こう言う文明格差があるギャグが伝わらなかったり言い回しが通じないことはままあるそうだ。

 僕にはどうでも良い事だけどね。いや、今この状況ではどうでも良い事ではないね。


「それで、今日は何の仕事を持って来たんだい?」


 ナイフで肉を切り口で運ぶ。事務的にならない様、出来るだけ食事感を楽しむべく食べる。それが紳士的に、そして、人間的に満足できるコツだ。

 マリーはミートソースが掛かった平べったいパスタを食べている。何ていうんだっけ?ああいう正方形のパスタ。まぁ、良いや。それをはぐはぐやっているし、エマはPDAを脇に置いてフォークの尻でカツカツ設計図を書いている。


「ああ、弾薬補給所と最前線を結ぶ一本道をドライブだ」

「正に傭兵の仕事だ」


 軍隊で最も金のかかるのは兵站部門だ。これは人間が組織だって戦争をし始めて以来全く変わらない。

 しかし、文明が進歩すればするほど楽もしたがるし、そこに漬け込む存在も出てくる。時は西暦2000年代。世界が未だに宗教と核兵器とですったもんだしていた時代、時の大国は民間の警備兼軍事会社、つまりは傭兵にこの兵站の一部を担わせる事にした。

 安全化し占領した地域の警備だったり物資の輸送と警護だったり。それは世界各国に広まり、そして、それがスタンダードになった。一部のPMCは軍の代わりに前線に出て軍の様に戦うし。それは世紀を超え、世界が崩壊しても残っていた。

 それが僕が今いる傭兵団だ。

 公社、軍、そして傭兵共が此処に居る。公社が6割、軍が2割で傭兵が2割だ。公社が幅を利かせ、軍に雇われた傭兵が軍と公社の尻を拭く。公社が前線で戦い、そのすぐ後ろで作戦展開を支援する軍と彼等に物資を運ぶ傭兵だ。

 可笑し話だ。まぁ、僕もその歯車の一つに組み込まれてしまったので文句は言えないよ。


「軍の弾薬補給所は此処から南に5㎞いった所にある。

 そこから約50㎞先の最前線の司令部に弾薬を届けるだけのお仕事だ。一日2往復する仕事をまずは1週間。車両は公社が用意している。あとはパッケージとパッケージを護る御守が来れば問題ない」


 コッホが蛍光ピンクの液体を飲みながら告げた。僕には飲めない。

 アメリカ人が大好きな体に悪い物でしか構成されていない様な粉末ジュースだ。


「小手調べにはちょうどいいじゃないか」


 そう言うとアリスもそうねと緊張気味に頷いた。ベルナドットが私等の手伝いは居るか?と聞いて来る。


「ドライバーは?」

「公社が用意するのは車両と油だけだ。

 ドライバーとドライバーの食事はそっち持ちだ」

「だろうね。ベルナドットの方から運転手を。

 それと、車両数は何台だ?」


 サラダとパスタも均等に食べていく。三角食べはカッコ良く食事をするコツだ。


「3台だ」

「人手が足らないね。

 ベルナドット、狙撃手と機関銃手に射撃手を二名貸してくれ」

「お安い御用さね。

 ティム!人員見繕いな!」

「おう」


 ベルナドットが脇でホットドッグを食べていた犬耳を生やした男に叫ぶ。犬がイヌ食べてらぁ。


「イヌがイヌ食べてるわ」


 そして、エマがそんな事を言うとティムが此方を睨んできた。


「エマ。君は黙って食事をしながら鉄砲を弄ってなよ」


 咎めるように告げると、エマは反省した様子を微塵も見せずに肩を竦めた。やれやれ。

三沢はタバに成ったのだ

アマプラでシンゴジ見直してて思い付いただけ


つーか、何でタバ戦闘団なんだ?第一戦闘団だろう

戦闘団って基幹部隊の部隊番号とるもんじゃないの?

しかも、連隊長の名前取るにしても普通は西郷戦闘団じゃろう?


と、やっぱり何度見ても首を傾げるシンゴジだったりする

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