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act.15

 席に着くと軍用レーションを目の前に置かれた。これ食べろって事かな?


「それで、ガンスリンガー」


 ベルナドットが軍用レーションを開けながら口を開いた。


「アンタの話を聞かせてくれ」


 僕もそれに倣って軍用レーションを開けていく。中身は……何かよくわからないケチャップで味付けしたマカロニみたいなのと、肉と野菜の何かの炒め物みたいな奴、そしてボソボソのパンである。

 レーションは食べた事ないが不味いらしい。


「残念ながら、僕は主人公じゃない。

 今回の主人公はアリスだ」


 チラリと僕の隣りに座ったアリスを見遣る。アリスはレーションに手を付けず緊張した顔をしていた。


「あぁ、そうだっな。

 それで、ガンスリンガー。アンタは何故そんなに強い?」


 話を聞かない奴だな。アリスをチラリと見ると此方を見ていた。君の問題だぞこれは?


「……知っての通り銃で人を殺す事は出来ます」

「ハッ!シェリフの弟子らしい言葉だよ全く。

 アンタ、結婚してるのかい?」

「残念ながら」


 ベルナドットはその言葉を聞きホウと笑う。


「好きな奴は?」

「憧れている人は居ます」

「そうかい。

 よし来た。アンタ、私の夫になりな」


 脇でケチャップマカロニを一口食べたエマがブッとそれを吐き出した。


「何よこれ!?マカロニをケチャップで炒めて食べた物を咀嚼して吐き出して洗ってからケチャップ掛けたみたいな味がするわよ!?」


 同じ様にマカロニを食べようとしていたマリーが口をスッと閉じ、プラスチックの先割れスプーンに乗ったマカロニを容器に戻す。


「何言ってるんですか!」


 そして、アリスが怒鳴った。誰にかはわからない。


「エマ、失礼だよ」


 取り敢えず、エマにナンテ事を言うんだという目で睨んでおこう。


「ゴメン。でも、これ、マトモな人が食べる物じゃないんだもの」

「失礼だよ」


 エマにちゃんと掃除しなよと吐き出されてテーブルの上に転がるマカロニを指差しておく。


「それで、ベルナドットさん。

 その理由をお尋ねしても?」

「おぉう?思った展開と違う展開が発生して想像と違う反応が帰って来たね」

「それはすいません」


 取り敢えず、謝っておこう。


「ま、良いさ。

 遠回りは嫌いだ。直球に行こう。私の夫になれ」


 さっきと違う言い方になった。具体的には命令形。

 

「申し訳無いが話しが見えない」


 両手を小さく挙げて降参のポーズ。直球過ぎるだろうが。何だ此奴は?


「話も何もそのままだ。

 私はアンタが気に入った。私の夫となって欲しい。もっと直接的に言えばアンタとの子供が欲しい」


 うーん?これはどういう展開だ?


「子供が欲しければ、もっと他に良い人がいるでしょう」

「いーや、居ないね。

 アンタ程の腕が立つ上に将来性がある奴は居ない」

「君はバカなのかい?」


 アン?とメンチを切られた。


「人と人との結び合付きはそういうモノではない」

「いいや、そういうモノだ。

 アンタは冷凍人間なんだろう?この世界は強いか弱いかがすべてだ。何だったっけ?ヤキニクテイショク?」

「弱肉強食、では?」

「何でもいい。

 アンタは私の夫に成るか成らないかを言えばよい」


 ならねーよ。何で僕がこんな筋肉だるまの夫に成らにゃいかんのだ。僕はくるみ子さんみたいな女性が好きなんだ。

 スレンダーで八重歯が見えるかわいい子だ。


「なら答えはずっと言っている。

 Noだ。僕は君の夫に成るつもりは無い。そもそも、僕はここにアンタに口説かれに来た訳じゃない。アリスの護衛に来たんだ。

 この下らないやり取りをずっと続ける気か?」


 リボルバーのハンマーをハーフコック。天幕の中に緊張が走った。

 リボルバーを抜いて、シリンダーから1本だけ弾丸を抜く。44口径だ。


「アンタの運試しでもしてみるかい?

 アンタが生きてれば僕を口説けばいい。アンタが死ねば、この話は終わり」


 シリンダーを回すとチャーっと回し、カキンとハンマーを下ろす。そして、狙いを定める。


「乗るか、降りるか。

 アンタが僕にYesかNoかを聞くなら、僕もアンタにYesかNoかを尋ねる。ほら、言えよ」


 暫く睨みあっていると、脇に居た犬耳のオッサンが手を叩く。視線だけずらして其方を見ると全員が何故かホッとした様子だった。どうやら此奴がこの糞の益にも成らない話し合いの解決を出して貰えるらしい。


「これは君の負けだよ、ベルナドット隊長。

 其方のガンスリンガー君の勝ち」

「ッチ。参謀がそう言うんじゃ仕方ねぇ」


 参謀らしい。こんな木っ端な部隊にも参謀居るんだな。


「まぁ、ビジネスライクな関係で行きましょう。

 下手すればみんな明日には死んでるかもしれない。ねぇ?」


 シリンダーを開き、抜いた弾丸を丁寧に収めてから、ホルスターにリボルバーを下ろす。


「話が済んだなら、僕は戻りたいんだけれども?」

「飯は?」


 ベルナドットが告げるので目の前に置かれたゴミを見遣る。


「ンなもん誰も食わねぇよ。

 おい!飯を持って来いよ!」


 エマが仏頂面でミリメシを脇に全力で投げ捨てた。

 マリーも複雑そうな顔をしてミリメシを見ている。僕は開けただけ。脇に棄てておこう。

 暫くすれば鳥の丸焼きやら炒めものやら色々と出てきた。全員の前に皿が置かれるが、僕だけ結構雑に置かれた。

 見ると、嫌に僕を睨んでくる少女だ。


「彼女は僕が撃ち殺した彼と何か特別な関係でも?」


 こう言うのは察するべきアレなんだろうが、僕は鈍いらしいから確りと聞いておこう。


「いや?

 どちらかと言うと片思いしてただけだな。コクる前にお前に殺されちまっただけさね」

「成程。

 片思いの相手を殺されて……って言う面倒臭い手合いか。

 敵討ちするつもりがあるなら、何時でも相手をするよ?」


 軽く殺気を出して睨み付けておくとビクリと震えた。


「ご飯の時間よ。止めてよね」


 エマに後頭部を叩かれた。


「面倒臭いじゃないか。

 自分に挑むわけでもなく、ただただ逆恨みの様にチネチネされるのは。

 それに此処は戦場だ。唯でさえ苦手な仕事なのに、状況は最悪。足を引っ張られるくらいなら最初から足を斬り落とすぐらいの覚悟で僕は来てるんだ」


 リボルバーを引き抜いて机の上に置く。


「そもそも、僕には守らなければ君も含まれる」


 エマを向くと首を傾げられた。

 マリーを見るとマリーもエマを見てから首を傾げる。可愛いから許してやろうとか、そう言う事にはなら無い。可愛いけど。


「確かに君の護衛はマリーだ。マリーは君を守る為に君と何かを契約したんだろう?」

「ええ。マリーに新しい銃を1丁あげるから火星で守ってねって」

「……まぁ、追々マリーには依頼の受ける条件とか内容は教える事にするよ」


 割に合わないぞマリー。


「エマは僕の銃やアリスの銃の整備をする役目もある。

 日常手入れなら僕は出来るが、壊れたら修理は出来ない」

「リボルバーなんだからちょっとやそっとじゃ壊れないわ」


 私が作ったんだし、とエマがいうが無視する事にする。


「ちょっとやそっとが起こるのが戦場だよ。

 君は僕等の生命線にもつながる存在だよ?僕も君の護衛に回るのはある意味で当然。

 それにマリーに完全に任せるのもまだまだ怖いしね」


 マリーを見ると、マリーは申し訳ないという顔をしていたが、気にすることは無い。


「それにリボルバーが万能ってのはまやかしだ。

 リボルバーでも激発不良は起こる。起きないのは激発不良が起きた際の次弾装填が起こらないというだけで、何千発も撃てばカーボンのせいでシリンダーは回らなくなるし、激発不良も起こる。裏を返せば泥に落としたら水洗いしないとシリンダーが回らなくなる可能性だって出てくるんだ。

 それに今回はライフルやショットガンも持ってきた。拳銃だけで対処できる場面何て早々無い筈だ。使用頻度は劇的に落ちるはずだ。だから、主役は今回ばかりはライフル、継いでショットガンだろう。僕はこの二つが壊れたら誰に直して貰えばよい?マリーの狙撃銃もさ」

「成程。

 ま、私も好き好んで鉄火場に出る程バカじゃないわ。マリーと後ろの安全地帯に居るつもりだし、此処の本部の人達と行動するつもりだから早々私が巻き込まれることもないわよ」


 それもそうだ。

 肩を竦め目の前の肉達に目を向ける。


「それで、明日からはどういう仕事をするので?」


 肉を切り分けながらベルナドットを見ると、豪快に何かのもも肉を被りついていたベルナドットは口の端に付いた油を指で拭い呆れた顔をした。


「ソイツはアンタ達次第さ。

 私等はこっちでのアンタ達に対しての後ろ盾と仕事の斡旋を頼まれただけさ。聞けばそこのお嬢ちゃんが一人前になる為にここに来たんだろう?

 仕事を選ぶのも、野垂れ死ぬのもそこの嬢ちゃん次第さね。私が出来るのは必要最低限度の支援だ」


 アリスを見る。アリスは困った顔をして僕を見た。僕を見られても困るんだがね。


「アキはどうやって名前を売ったんだっけ?」

「僕?僕は映画を参考にしてみたんだよ」

「あー……荒野の用心棒」


 そう。と頷くと何だいそりゃ?とベルナドットが机を叩く。


「別に大したことじゃありませんよ。

 ある町の依頼で、町に巣食う悪党どもの組織を仲違いさせてお互いに殺し合わせたんですよ」

「どうやって?」


 どうやってて、荒野の用心棒見てないのかよ。


「黒澤明の用心棒やセルジオ・レオーネの荒野の用心棒を知らないの?」

「知らねぇよ。

 私等はそんな高尚な趣味は持っていない」


 映画すら見れんのかこの星は。終わってるな。


「映画を見るのも高尚か。

 人類も落ちぶれた」


 シガリロを咥えて火を点けようしたら、脇にいた片思い女がシガリロを取り上げた。


「その臭いは鼻に付く。

 我々の前では控えろ」

「それは失礼」


 シガリロを仕舞い、仕方無い野性味溢れる食事に集中する事にした。

 明日はアリスに付いて火星派遣軍へお仕事貰いに行くかな?まぁ、火星派遣軍とは名ばかりのほぼ公社の差出警備隊に地球に何とか体を成して残っている国々が形だけの兵隊を派遣しているだけだ。軍は戦争せず、警備隊が戦争をする。

 あんまり行きたくない。公社はエリート意識が凝り固まっている。彼等は僕を無能と見ると見放した。結果、お師匠に拾われ醜いアヒルの子だった事が発覚した。それでも連中は零した水が実は酒だった事に気が付いたらしい。

 しかし、覆水盆に返らず。連中は零した水は汚水と思う事にしたらしい。

 だから、公社の有名どころは僕を蔑んでくる。実力が足らん連中は特にそうだ。そして、そういう連中はこういう所に飛ばされる。木星やら水星やら冥王星は本当にヤバいところに行くらしい。つまり、公社で有能な奴は定額報酬でこき使われているのだ。

 やだやだ、おっかない。社畜は恐ろしい。命を賭して安月給とプライドを貰うのだ。


 お腹いっぱい食べ、天幕の外に出る。シガリロに火を付けるとマリーが出て来た。


「先生」

「やぁ、マリーどうしたんだい?」

「先生は、私とエマさんが付いてきた事を怒っていますか?」


 おずおずとマリーは私を見上げる。僕はマリーより背が高いのだ。


「別に怒ってはいないけど、面倒くさい事が多いとは思ってるよ」

「……面倒臭いですか?」

「うん。

 僕は別に軍学に詳しい訳じゃないけどさ、単純にエマは僕とアリスの兵站を担う訳じゃん?」

「へーたん?」


 マリーが自分の胸を見た。まぁ、そこもヘイタンだな。字が違うけどさ。


「兵站ってのは戦闘をする人達に対して武器や弾薬は勿論、食事や寝る場所、トイレから果てはゴミ出しまでをする人達さ。

 で、マリー達は取り敢えずはベルナドット傭兵団の本部に付くから基本的には僕等の武器の手入れとエマの作った玩具で遊ぶんだろう?」

「エマさんの作った玩具、ですか?」

「どうせ、狙撃銃に栓抜きや缶切りにナイフ、ドライバーとか付けてるんでしょう?」


 前にこれ有ったら便利じゃない!?とか言う訳分からん理由でショットガンの銃床に豆挽きに缶切りとナイフ付けた“何処でも豆からコーヒー作れる銃”を僕に売りつけようとしていた。誰が買うか。

 因みに、あの銃床を単体で売っているそうだが、未だに売れた所を見た事は無い。

因みに、豆挽きが銃床に付いた銃は本当に実在するよ


アメリカの南北戦争時代レベルまで下がるけどね

気に成ったら調べてみよう


あと、クッソ有名な話だけど栓抜きが付いた銃もイスラエルが作ったけどね

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