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act.11

 さてはて、なんの問題も無く目的の場所までやって来た。

 バイオハザードだと大抵此処でユキシロあたりがボス化して襲って来るのだが、先程フライングして暴走する予定ないの?と聞いたら無いと断言されてしまった。

 お約束に待ちきれず尋ねてしまい、フラグを折ってしまったかもしれない。少し残念だ。折角レーザー弾持ってきたのに。

 マリーもゾンビを撃つのに何の抵抗も見せないし、射撃もマリーの年ならば上出来だ。後でちょっとだけ褒めておこう。褒め過ぎて図に乗られても困るし、そういうのは他の先生がやってくれるだろう。


「ゴールだな」


 そして、今回の任務で何しに来たのか分からん男。コッホがそんな事をのたまった。コッホの言葉に空気が弛緩しかかった。馬鹿なのかな?


「ゴールではないよ。

 此処は折り返し地点だ。寧ろ、より一層気を引き締めないと、死んじゃうよ?マリーも、気を抜くんじゃないよ?」


 隣でホッとした様子のマリーに告げると、マリーはキリッと顔を見せて警戒した様に銃を構えた。うんうん。


「さ、目的の事やってとっとと帰ろうか」


 ユキシロを見ると、彼女は頷いて扉を開ける。中にはかなりの数のゾンビが居た。ほぼ全員白衣を着てるのでこの研究室にいた科学者だろう。

 面倒臭いな。取り敢えず、脇にあったビーカーを扉の反対側に放り投げてそちらに注目を集めておく。

 扉を閉めて、振り返る。


「どうする?」


 全員、顔を見合わせた。答えは無い。そこは自分が行くと言う所だぞコッホ。


「こんな事ならくるみ子さんを誘っておけば良かったですね」


 くるみ子さんの電撃ならこういう時に最高に輝く。本人同様に。

 最近、くるみ子さんは能力制御に勤しんでるらしい。目標は僕に勝つ事とか。多分、今の僕でもくるみ子さんには勝てない。

 彼女の電撃を弾丸を使って逸らさせるので精一杯なのだから、出来れば止めて欲しい。そりゃ、殺す気になればくるみ子さんを倒せるだろうが、それは駄目だろう。

 くるみ子さんは近距離向けの戦い方をするので、この時代だと本当に相性が良い。ケイ素系はビスクドールよろしく肌が硬い。弱点を狙わないと普通に拳銃弾なら弾いてしまう。


「俺がやろう」


 コッホがラフィカを抜くとマリーが呆れた顔をした。


「それで撃ったら周りから一杯ゾンビが来ますよ」


 マリーの頭を撫でてやった。良いぞ、マリー。

 それからマリーの小銃を見る。フルオート撃てるね。


「小銃と拳銃に自信ある人います?

 敵の数は凡そ45」

「コイツなら自信があるが小銃はない」


 コッホが生憎とラフィカを掲げる。使えねぇなコイツ。何でそもそもゾンビ相手なのにサプレッサー付けてこないんだ此奴?常識ないのか?


「私も無理よ。

 使い慣れた銃ならまだしもその狙撃銃なんか」


 アリスは当たり前のこと聞かないでよと言わんばかりに首を振る。マリーは……無理だろうね。

 どうするのか?と言わんばかりにこちらを見ている。


「じゃ、自信ないけど提案者として、依頼を受けた者として責任を果たすかな。

 僕も、見ての通り小銃は下手糞だし、あんまり期待しないでね。マリー、小銃貸して。

 コッホ、弾倉二個頂戴。同じベレッタなら使えるでしょ?」


 今まで何もして来なかったし。手を差し出すと舌打ちをされて弾倉を2つ、特別に長いのを貸してもらえた。

 ラッキー。

 今更ながら拳銃はベレッタだ。エマがゾンビ殺すならと、特性のカスタムベレッタを売り付けてきたのだ。勿論、そんなモンはいらないから、ベレッタのサプレッサーが付けれる奴をくれと言い続けていたら、根負けしてこの任務中だけ貸してくれたのである。

 そんなカスタムベレッタに40発弾倉を取り付ける。

 サムライ何チャラと言っていたベレッタのマルチアモウカスタムと言った所か?

 拳銃を腰後ろに差して、小銃を構える。弾倉交換はしないので予備弾倉は受け取らない。

 部屋を軽く覗いて動線を頭の中に思い描く。


「じゃ、行こうかな」


 イメトレ終了。扉を開けて中にスルリと入る。そして、一番奥に固まるゾンビ達の群れに弾を一発。

 22口径と言ってもライフル弾。例え頭蓋骨と言えども至近距離から喰らえば過貫通。

 後方のゾンビに脳みそと共に威力が少し衰えた程度の拉げた弾頭が降り掛かる。そんなワンショットツーキルを複数作った所でゾンビは僕に気が付いた。


 そこで狙いを変える。

 一番手身近に居るゾンビの頭を撃っていくのだ。奴等の反応は素早いが動きはそれ程ではない。銃の危険性を感じる意識は残っていて、更には射線を理解してるのか時折頭を下げる動作を見せる。

 が、脳みそが半分以上腐った化け物。子供の方がまだ避ける。そんな感じで小銃の弾を20発。全部撃ちきって次の手だ。

 小銃を脇に置いて腰の後ろに、手を回す。その間にもゾンビが掴みに掛かって来るので足を払って転けさせる。


「こういう時は、汚い手で僕に触るな、とでも言っておくべきかな?」


 拳銃を引き抜き、倒れたゾンビの頭を撃つ。それから近付いて来るゾンビ達の頭を撃ちながら捌いていくだけだ。

 何も困る事はない。敵は逃げも隠れもしない。最早、射的だ。


「よし、全滅かな?」


 ものの5分程でやっつけ、周囲を眺める。上の空調機やダクトを確認するが、お代わりが出て来る気配も無い。一分程待ってから外で待ってるマリー達の許へ。

 リボルバーにはレーザーバレットを入れておこう。コイツは音も出ないし威力も高い。いざという時はコイツで殺そう。


「やぁ、お待たせ。

 中は一応片付いたけど、油断しないでね」


 扉を開き全員を中に通す。マリーに小銃を返し、コッホに弾倉を返す。


「多分、全滅させたけど気を付けてね」

「はい」


 ユキシロは驚いた顔をして中に入る。全員がゾロゾロついて中に入ると、ユキシロは手身近なパソコンに向かった。

 僕はそんな様子を眺めながら、近くのファイルやら何やらを眺めていく。コーヒーメーカーと湯沸かし器に豆等が置かれていた。

 クリームや砂糖も健在だ。コーヒーでも飲むかな。豆をセットしてガリガリガリ。


「お前は何してるんだ?」


 豆をガリガリガリやり出すと全員が死ぬ程驚いていた。


「見て分からないかい?

 コーヒー豆を挽いているんだよ。コーヒー豆は挽かねばコーヒーにならないんだよ?」

「そんな事を聞いているんじゃない!

 こんな時に何故コーヒーを淹れようとしてるんだ!」


 コッホがこちらに詰め寄ってくるので、足を払って転けさせる。五月蠅い奴だな。


「こんな時ってどんな時さ?

 時間が掛かりそうだからコーヒーでも飲もうかと思ったんだよね。他に誰かいるかい?」


 周りを見るがだれも手を挙げない。ふむ。


「じゃ、僕だけだね」


 マグカップを探すが見付からない。紙コップもない。


「マリー、何処かにマグカップないかい?」


 マリーに尋ねると血塗れのマグカップを掲げられた。しょうがない、代用品を探すべく棚を見ているとビーカーが目に入った。

 これで良いか。手早く洗ってからコーヒーの準備に取り掛かる。


「それで飲む気なの?」

「うん?

 ああ、メスシリンダーよりも入れやすそうだったからね」


 熱したビーカーを挟むトングを使って、ビーカーを持ちクリープと砂糖をたっぷり入れる。

 それを一口。


「あち」

「お前のそれ、コーヒーじゃないだろうが」

「良いんだよ。僕はこれが好きなんだ。

 コーヒーよりもカフェオレ、カフェオレよりもコーヒー牛乳」

「先生は甘党ですもんね」


 マリーがそう言えばという顔で告げる。


「なら大人しくコーヒー牛乳でも飲んでろよ」

「そうしたいのは山々だけども、コーヒー牛乳が無いんだよね」


 ビーカーでチビチビ飲んでいると外から何かの気配が。敵だろうね。

 扉の前に来たら撃ってやろう。レーザーバレットなら貫通出来る。

 コーヒーを一口飲んで右手だけでドローショット。キシュンと静かに空気が軋む音を立てて目に見えぬ弾が飛んで行った。倒れた音もしないのでもしかしたら気のせいかもしれない。

 周りを見ると誰もこちらを見ていないので、気付かれていなかった。ふぅ、余分な恥をかく所だった……静かにリボルバーを仕舞い、ひとり気恥ずかしい気持ちを押し隠す。


「ユキシロさん。

 情報は後何れくらいでダウンロード出来ますか?」


 ユキシロに声を掛けると、バッと此方に視線を向けられた。


「もうそろそろです」


 もうそろそろらしい。

 コーヒーの残りを飲み干して、ビーカーを脇の机に置く。自動拳銃を机の上に置いて、軽く伸びをしてから弾倉を込めスライドを引く。

 マリーを見るとマリーもバックからガンオイルの入ったスプレーを取り出して薬室と機関部に吹いてから槓桿を数回動かす。

 アリスとコッホは何もしていないが、銃を確かめていた。


「ダウンロード終了、サンプルも回収します」


 ユキシロはそう告げると脇の壁を見た。壁はカシュッとエアーの駆動音をさせて開く。おぉ、凄い。そして、大量の薬品と弾薬に銃が出てきた。


「武器と弾薬の補充もお願いします」


 取り敢えず9mm弾を探すと、大量にあったので空の弾倉分全てと予備用に200発貰っていく。マリーも運良く適合する弾薬と弾倉を見つけて持てるだけ持っていった。

 アリスの.45LCは無かったが、9mmのサプレッサー付きサブマシンガンが置いてあったのでそれを手に取っている。コッホも同様だった。


「ボス戦でもやるみたいだね」


 セーブポイント無いけど。


「僕は先に外に出てるよ」


 そして、外に出る。すると廊下にデカイ化け物が倒れていた。タイラントみたいな奴。壁にもたれるように倒れて、動いていなかった。

 試しに自動拳銃で撃ってみるが反応なし。完全に死んでいるのだろうか?

 リボルバーで頭を撃っておく。


「お待たせしましたっ!?」


 次にこの化け物を見付けたのはマリーだった。出て来てこの化け物を見付け銃を構える。


「もう死んでるよ」

「先生が倒したんですか?」

「さぁ?廊下に倒れてたから頭を撃っておいた」


 二人して不思議だねーと話していると残りの三人も出て来てアリスとコッホはマリーと同じ反応をしていたので、同じ対応をしておいた。

 ユキシロは不愉快そうであった。


「これは新種かい?それとも強化版?」

「……何故私に?」


 ユキシロに尋ねてみるがはっきりと睨まれた。僕はそれに肩を竦める返答をして見せた。


「ま、良いや。

 さっさと帰ろう。これなら夕飯にも間に合う」


 拳銃を手の中で回し、来た道を戻ることにする。


「此奴と戦ってたらヘリコプターで帰れたのかもしれないね」

「そうなんですか?」

「大抵はそうなんだよ。

 ボスに勝つと研究所が爆発するから、そこから脱出する時にヘリコプターが用意されているんだよ。ねぇ?」


 ユキシロに告げると睨まれた。


「何故、私に?」

「君が作られた場所だろう?」

「ヘリコプターがあった所で誰が運転するんだ?」


 コッホが呆れた顔をしてこちらを見ていた。


「君、出来ないのかい?」

「出来ると思うのか?」

「公社の殺し屋でしょ?出来ないの?」

「テメェの中では俺達はどんな存在だよ!?」


 ジェームズ・ボンドは何でも運転できるのにね?


「誰も操縦出来ないなら歩いて行くしかないね」


 帰り道は楽。ゾンビの再配置は無かったのだ。

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