表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤松天翔物語 ~転生したら最弱の戦国大名だった!?~  作者: 姫笠
第二章 西国の覇者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/133

第二話 東播磨の領主―別所家⑦

その時、周囲を警戒していた善助が、険しい声でささやいた。

「殿……あれを」

 善助の指が路地裏の向こうを差す。

 桜が顔を上げると、薄暗い通りに長い列が見えた。

 やせ衰えた領民たちが、互いに寄り添うようにして一団となり、重い足を引きずりながら歩かされている。

 その列の横を、織田兵たちが歩き、無慈悲に棒で小突き、あるいは槍の石突を背中に押しつけて追い立てていた。

「おらっ、さっさと歩け!」

「めしがないなら、長治様に助けてもらうんだな!」

 罵声が飛ぶたび、領民たちは身をすくませ、涙で濡れた顔をさらに歪める。すすり泣きがあちこちから漏れ、幼子の泣き声が列の中に混じる。


「ひぃぃ……」

「長治様……お助けを……」

 老いた農民が膝をつきかけると、隣の若者が支えて、必死に前へと進ませた。

 まるで死へ追い込まれる獣の群れのように、人々は一団となり三木城を目指す。

 その様子を見た善助が、声を潜めて桜に囁く。

「……殿、あの集団に紛れましょう。織田兵も、一人ひとりまでは見ていません。」

 桜はうなずき、きゅっと布の端を握りしめた。

「うん……わかった」


 二人は目を合わせ、息をひそめながら織田兵の視線をやりすごす。

 足早に領民の群れへと身を寄せ、そのまま流れに身を任せて歩き始めた。

 城下の石畳を踏む音が、不気味に揃った行進のように夜空に響く。


 三木城、大広場。

「なに! そこにも米がなかっただと!」

 長治の声が、広場に重く響き渡った。

 家臣が地に額をこすりつけるようにして答える。

「はっ……織田軍は、周辺の町や村々まで徹底的に米を略奪しているようで……」

「ぬう……っ!」

 長治は拳を握りしめ、奥歯を噛みしめた。

「どこからでもいい! 米でなくても構わん! 草でも芋でも……とにかく食べられるものを探し出せ! すぐに偵察隊を出すのだ!」

「ははっ!」

 家臣が慌ただしく立ち上がり、走り去る。

 長治は肩で息をつき、ふと広場を見渡した。

 そこには、食事の配給を受けてなんとか口にしている兵や民がいる。

 しかし一方では、衰弱しきって座り込む者、すでに冷たくなって横たわる者の姿もあった。

 頬はこけ、目は落ち窪み、肋骨が浮かび上がる。

 兵も民も、かつての活気や力強さは見る影もなく、ただ飢えに蝕まれた影のようであった。


 その時、城門が重々しく開く音が響いた。

 軋む木の音と共に、新たな領民の群れが城内へ押し込まれてくる。

 長治の顔が蒼白になる。

「これ以上城内に人が増えれば……もはや食料の配給は持たん……!」

 そこへ――。


 ぼろ布をまとった二人の女が、燃え残りの灯に照らされながらゆっくりと広場へ歩み出てきた。

 すすけた布に覆われて顔も定かではないその姿に、周囲の兵も民も息をのむ。

 ざわめきが広がる中、二人は長治の前に進み出ると、一気にまとった布を脱ぎ払った。

「お前たちは……!」

 長治の目が見開かれる。

 布の下から現れたのは、赤松家当主―桜と、腰に刀を帯びた家臣―善助だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ