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月の涙 #21
「クリミアあああああああああ!」
「…っう、ホープさん…?」
私の横を通ったのは、ホープだった。
クリミアに駆け寄り、叫ぶ。
ねえ、もしかしてこれって。
悪い出来事が起こる気がする。そんな前兆の寒気のような。
「おい、クリミア…!帰るぞ!ここから!」
「い、嫌です!オリヴィアさんとっ、オリヴィアさんと帰らないと…!」
「馬鹿!それで見つかって全員帰れなくなったらどうするんだよ!」
「嫌、嫌!嫌です!」
意地でも帰ろうとするホープ。
意地でも帰らないとするクリミア。
…こんなの、嫌だ。
せっかく、せっかく二人は……になったのに。
こんなふうに、仲が悪くなるのは…
それに、早く脱出しないと、誰か来てしまう!
それを口に出そうと思ったその時。
扉の向こうから声がした。
生気のない声。
死んだような声。
「クリミアさん」
「ぉ、オリヴィアさん…?」
「わたしのことなんてもういいですから…!おねがいです、クリミアさん、もう逃げてッ、ください!」
「そ、そんな、そんなことって…!」
「…クリミア、帰ろう…帰るぞ、なあ…!」
「う、ううう、うううううううううううう…」
ねえ、世界はどうしてこんなにひどいの?
どうしてこんなに、苦しまないといけないの?
こんな、こんなに人が悲しむだなんて。
こんなに、涙をこぼすことなんて――――
誰も、望んでいないのに。




