奇怪な男と甘い妖精
新年、明けましておめでとうございます。
「ちょっと!ルイス!」
レイシアはルイスが急に出した炎に驚き、ルイスに向き直る。
ルイスの顔は至って涼しげで、冷めた表情をしていた。
「どちらが無礼なのか分からせた方がいいと思ってな」
そう言うと、ルイスは火焔を強くし出す。
炎の外から悲鳴が聞こえてきて、おそらく服や木に燃え移りでもしたのだろう。
「我らは客人だ。呼ばれて参った者を極刑にするというのがライノワールの礼儀か」
炎の中から鋭くピンと張った糸のような声がライノワールの民に聞こえる。
「し、しかし!先に無礼な物言いをしたのは…」
「本当のことだろう。そなたらの王が、無理やり連れてきた。これは変わらない事実。噂に踊らされて連れてきたんだろう」
ライノワールの使者はぐうの音もでない。
「憤慨し、こいつを傷付ける以前にあろうことか極刑にするだと?甚だおかしい話だ。一歩でもシアを傷付けようと試みる者から殺してやる」
怒りを露わにしたように畝り狂う炎に使者がたじたじしていると、1人の男が炎に穴を開けた。
「ははは、馬鹿な王ですまない。確かにそちらの言い分は正しい。詫びをしよう、申し訳なかった」
炎に穴を開けた男は、笑ってレイシア達を見据える。
「自己紹介が遅れた。我が名はユーリ・シャルル・ライノワール。この国の馬鹿な王だ」
不敵に笑った王と名乗る若い男。
褐色の髪が炎の風圧で靡き、長い前髪に隠れていた浅葱色の瞳がレイシアとルイスを映す。
「本当に真っ黒だな、こんな紅蓮の炎に当たされても髪は漆黒だ」
ライノワール国の王ユーリが目を見開き、何かを思い付いたように笑った。
「言っとくけど、貴方たちが思ってることなんて私には無理だから。神の送り人だと勘違いしてるなら、早く目を覚ましたほうが無駄な労力とか使わなくていいと思うけど?願わくば私たちを元の場所に返すとこまで労力を尽くしてね」
一体何様だ。と思われても無理はないが、半分はそうかもしれないのでライノワールの民は口を閉じる。
「そこはきちんと約束しよう。ただ、少しだけこの国で滞在してほしい」
真っ直ぐな浅葱色の瞳で見据えられ、ついつい目を逸らしてしまった。
「はいはい、いい加減この炎消さねぇと大火事になるぞ」
剣で炎を叩っ斬って入ってきたケヴィンに射殺すような瞳で睨みつけたルイスが炎を強くする。
ボッと燃え上がった炎に周囲もざわめき、ハハッと目を細めたユーリが笑う。
「嫌われてるんじゃないのか?ケヴィン団長」
一瞥したユーリに、ケヴィンはやれやれと言って、両手をあげる。
「そんな目で睨むなよ、何もしてないだろ」
「だまれ」
手のひらに炎を出し、ケヴィン目掛けて飛ばすルイス。ケヴィンは驚いたまま、剣を使って炎をかわした。
「ルイス、ユーリの言うとおりよ。それに、暑過ぎるわ。あなた、こんな大きな炎出せるのね。いつも料理作るのに必要なちっさい炎しか見てないから、びっくりよ」
炎の中心にいるレイシアは汗をダラダラと流し、ばっさばっさとスカートを翻す始末。
その姿を見たルイスは眉間にシワを寄せ考えて、炎を一瞬で消した。
「チッ、さっさと行こう。シア」
分かりやすく舌打ちを残し、姫抱っこという形でレイシアを抱き上げたルイスは城を目指しツカツカと民衆の間を歩いていく。
「あっついわ!アホか!」
ばちんっと素晴らしい音が聞こえてきて、民衆は呆然と目を見開く。
先ほどまでに炎を一瞬で出したりした奇怪で射殺すような怖さを持っているルイスをぶっ叩いたのだ。
…強者だ、と全員が思ったことだろう。
「さっさと降ろして!」
ジタバタとするレイシアに溜息をついて、ゆっくりと言うとおりに降ろしたルイスはとことんレイシアに甘い。
「さっきの炎はごめんなさい。でも、極刑なんて死んでも嫌だから」
地に降り立ち、振り返り際に言い放って城に向かい歩き出した。
残されたケヴィン団長、隊員と民衆と王は思い通りなんてクソ程いかない小娘に苦笑いを浮かべて、レイシアたちの後に続いて城へ向かうのだった。
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「申し訳ございません、まさかあのような曲がりくねった癖のある性格だとは思いもよらず…」
側近のハーネスは茶色い髪を一つに括り、目の前に立つ王の前で跪き深く低頭した。
ここは王の執務室。
客人用の席にケヴィンが座り、執務用の椅子に王が座って、その横でハーネスが跪いている。
王はハーネスを咎めようとはせず、楽しそうに口元を引き締めた。
「良い。良くぞ連れて参った。まぁ、連れて来たのはケヴィン団長率いる騎士団だがな」
笑いながらケヴィン団長を横目にした王のユーリはポツリと先ほどの出会いを思い返す。
「容姿は見惚れるぐらいの美しさだったな」
黒く輝きのある漆黒の艶やかな髪に、黒曜石を嵌め込んだかのような瞳。真っ白で触ったら溶けてしまうのではないかというぐらい雪のような滑らかできめ細かい肌。目が合った瞬間、心を射止めてしまえる能力でもあるかのように魅力的で儚かった。
誰しもが思ったことだろう。しかし、ケヴィンはこう言った。
「確かに見映えの良い娘でしたね、黒髪が馴染んでいた」
うんうんと首を縦に振るケヴィンに、もっと他に言葉では言い表すことなど無に等しいが、もっとあるだろう!と思える発言だ。と思う王と側近だ。
「とりあえず、神の送り人、レイシアは巫女の間に案内しておけ」
「はっ。」
こほん、と咳き込んだ王の命に、ケヴィンはまたあの面倒なルイスと呼ばれる青年に命を脅かされるのかと、重たい腰をあげるのだった。
若干無理やりで、今後のレイシアが心配になってきます。
ルイスは完全に怖がられる存在になってしまったかも、それでもルイスはレイシアが居ればそれでいいのです。
レイシアを傷付ける輩を殺そうとするのは当然なのでしょうかね。
レイシアは王の目から見ても美しいと思える存在です。ハーネスも見惚れるほどです。
しかし、王のユーリは常に笑っていますね。
ユーリはきちんと美形設定です。
美形はにやりと笑っても絵になります。
次回は巫女の間あたりからです。
楽しんでいただけるように、日々がんばります。




