やっと見つけた黒の天使
やっと書けました。これから進みます。
ルイスは妖精の姿になり、苺を取るために森の奥へ入って行った後、ケヴィン達は塔に辿り着いた。
「凄い、本当に無事に迷うことなく辿り着くことができた。」
隊員の前に聳え立つ灰色の塔を見上げた1人の隊員が声をあげる。
「あ、あれじゃないか?」
1人の声と共にそこにいる全員が窓辺に凭れているレイシアを見やった。
その直後、ぶわっとした風が巻き起こり、レイシアの漆黒の髪を前後左右へ散りばめる。
隊員達は全員その場で息を飲んだ。
どこか影があり、今にも消えてしまいそうな美しい黒髪の女がそこに居たのだから。
そこにいる誰もが見惚れたことだろう…
「あ、あのー…」
ロジェが右手をちょこっとあげ、小さい声をあげた。
「黒の天使様ですか?」
首を名一杯上に向き、両手を口に添えて尋ねるロジェにレイシアはぐったりとした目で見下ろした。
(誰だ黒の天使って…)
下にいるピンクの頭に視線を向けるレイシアが突然むくっと立ち上がる。
周りにいた妖精達はレイシアの行動には心配と動揺が隠し切れずオロオロとするしかない。
《シア…急に立ったらダメだよ》
「あの男…!」
ジェミーの心配も無視し、ガタンと椅子を倒し、もう一度見覚えがある男を見やるレイシア。
《シア…?どうしたの…》
「あ、あの男よ…前から私の脳裏に映ってた、にへら顔の…」
レイシアの漆黒の瞳が一点だけを見つめる。
亜麻色の髪に白緑の瞳で騎士服を着た、ケヴィンを…。
にへら顔では断じて違う顔立ちなのだが、どうしてなのかレイシアは断言できる程の直感が働いた。この男は私の脳裏に出てくるにへら顔の男だと。
「あんた、黒の天使か??」
レイシアの視線に気付いたのか、ザッと風を切る音がして、ケヴィンの強い眼差しがレイシアを捉えた。
(何?ピンク頭も同じこと言ってた。)
「あぁ、悪い。こんな言い方はダメだな。…名前は?」
下から聞いてくる男に警戒心と疑問があるまま、レイシアは小さくその口を開いた。
「…レイシア」
「レイ、シア…ね。」
ケヴィンは腕を組み、首を上下に振ってからレイシアに向き直る。
「レイシア、俺達と一緒に来てほしい」
ケヴィンはにへら顔をレイシアに見せたーーーー。
「ライワノール国、西の大陸へ。お迎えに参りました。レイシア、神の送り人」
ケヴィンがレイシアに向けて手を伸ばした瞬間、森がざわめき始めた。
木や大地は揺れ、ごうごうと風は吹き荒れ、雨が降り注ぐ、雷鳴まで響く。
それを体感しているケヴィンは小さく笑い、レイシアをもう一度見る。
「あんたはこの森に好かれてるみたいだな。だが、来てもらう。」
ケヴィンはそう言い、レイシアがいる塔の窓辺に足を付けた。
「は!?貴方さっきまで下に…」
「ここから出たいと思ったことはないか?俺が出してやるよ。強制的にな」
突如、目の前に現れたケヴィンに喫驚を隠せないレイシア、そんなレイシアを構うことなく腕を掴み下へ落ちようとした際、ケヴィンが掴んでいた手にボッと一瞬だけ火が灯った。
ケヴィンは反射的に腕を離してしまい、およそ3階ぐらいの高さから真っ逆さまに落ちる。
ドサッと鈍い音が森に響いた。
「ケヴィン団長!!!」
泣きながらケヴィンが落ちた所へ走って行くロジェ。他の隊員は何か落ちたケヴィンに目を逸らしている。唯一、ロムがロジェの前に行きケヴィンの所へ行くのを遮っていた。
「何をするんですかロムさん!団長が、団長が!!」
「…ック…ガーッハッハッハッ」
もう耐え切れないという風に噴き出したロムにロジェは目を丸くする。
「何を笑ってるんですか…?あの高さから落ちたんですよ!!」
笑うロムとは対照的に怒りを隠せていないロジェがロムの胸ぐらを掴む。
「ーーハッ…ハッー。おい、団長よ。いつまでその格好でいるつもりだ?」
漸く笑いが収まったのか、前髪を掻き上げ、戦場でしか見ないようなロムの眼差しがケヴィンに向けられた。
「………バレた?」
白緑の瞳が開き、その場の空気に似ても似つかない間抜けな声を発し、にへら顔を隊の全員に見せ、起き上がるケヴィン。
「いやー、まさか窓枠を掴み損ねて落ちるなんてな。ちょっと恥ずかしくて…悪かったよロジェ」
涙をたっぷり溜め込んだロジェの瞳を見つめ、桃色の頭を撫でる。
一方、レイシアも急に落ちたケヴィンが心配で窓枠に手を付いて下を見下ろしていた。
「さっきは失敗しちまったが、次は捕まえる」
優しく見えた白緑の瞳が、獲物を捕らえるように鋭く光った。
頼もしいのか抜けているのか分からない団長です。
ロジェは陛下直属の騎士部隊に最近入ってきた見習い騎士なので、ケヴィンがアレぐらいでは死なないということを知りませんでした。
他の隊の皆は知っていたんですよ。
もちろん、まだ戦場にも行っていないロジェです。
戦場でのケヴィンやロム、隊の皆の姿や顔立ちも知りません。
意外と頼もしいんですよ。




