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覗かれる代償は痛み

お久しぶりです。

長い間お待たせ致しました。

ケヴィン達が難なくこの森を抜けて塔に着く頃…

レイシアはこれでもかと言うくらい、妖精達をこき使っていた。


「もーーー、何なの?あのにへら顔の男は。ルイス!紅茶いれてくんない?」

《ったく、妖精使いの荒い奴だな》


小言を言いながらもキチンと紅茶をいれるルイスを見ながら、水の妖精アーシュを呼ぶ。


「アーシュ…私の記憶を覗いて」

《僕にはそんなこと出来ないよ。風の妖精リーフなら出来るかもしれないけど…》


申し訳なさそうに項垂れるアーシュに「そうなの?」と笑顔で聞き返すレイシア。


《う、うん。特にリーフはそれ系を得意としていたと思うよ》

「ありがとう!アーシュ!」


素直にお礼を言うレイシアに頬を染め、リーフを呼びに森に消えるアーシュ。


「ババァ…アーシュの気持ちを利用してるだろ。」

「え?利用って?」


分かっているのか、本当に分からないのか分からない笑みで人型になって紅茶を淹れたルイスは、レイシアの前に紅茶を出した。


「慣れないわ、その姿。」


レイシアは自分より背の高い人型のルイスが淹れた紅茶を受け取りながら、小さい溜息を零す。


「格好良すぎて調子が狂うか?」


何処か勝ち誇ったような顔で自分用に淹れたであろう紅茶を飲み干すルイスに、


「いや、ない」


狂わない。と首を横に振り、それを見たルイスは着ている服が左肩だけずり落ちた。


「ハッキリ言うババァだな」

「あ、ちょっとルイス来て。」


ルイスはレイシアの事をババァと呼びそれに対して怒られるかと片目を瞑っていたのだが、何食わない顔をして右手を折り畳みしてルイスを呼ぶレイシアに腑抜けた顔をしてレイシアに近付いた。


「きえぇ!!!」


脳裏がビリビリと麻痺しそうな奇声を突如発したレイシアに、面食らったルイスは、そのすぐさま声にならない呻き声を発する事になる。


何の疑いも無くレイシアの右隣に行った次の瞬間、レイシアの右手がドスッと言う効果音を鳴らし、思いっきりルイスの鳩尾に()り込んだ。

ルイスは声にならない痛みでゆっくりと床に沈み、レイシアはそんなルイスを見てご満悦の笑みを浮かべた。

レイシアも二回言われたら流石にイラッと来たのだろう。

ルイスは自分が撒いた種なので、無意味な怒りを床に這いつくばる事で鎮めた。


《シア…シア…、リーフ呼んで来たよ。って、何してるの?ルイス》


リーフを連れて帰って来たアーシュが見たものは、人型のルイスが床に突っ伏してピクピクと動いている光景だった。


《とても気持ち悪いよ。ルイス》


アーシュはどうにもならない重苦しい不快感を感じさせるような軽蔑した顔をして、ルイスを見下ろした。


「ッ!ッ~~~~ッッ!!」


ルイスは未だに声が出せないのか右目に薄らと涙を溜めて、レイシアに殴られた鳩尾を手で抑えているしかなかった。

そんな虚しい姿のルイスを踏んづけて、アーシュがいる窓辺に駆け寄るレイシア。


「ありがとう、アーシュ。リーフ、早速なんだけど私の記憶を覗いて」


真剣な面持ちになったレイシアにリーフはこくりと小さく頷いた。


《…シアちゃんが言うなら…。でも、僕が記憶を覗くと同時に、痛みが襲って来るよ》


それでもいいの?と言った風に、探るような視線を送ってくるリーフに対して、レイシアは「お願い。」とリーフの目を真っ直ぐに見つめた。


《分かったよ、シアちゃん。》


リーフは呼吸を落ち着かせて両手をレイシアの前に出す。


《目を瞑って…いくよ?》

「うん」


リーフの声に頷いて、レイシアは意識を失った。





*****




《シアちゃん…シアちゃん…。大丈夫?》


レイシアは重たい瞼をゆっくり開けて目の前にいる心配顔のリーフを見た。


《ごめんね、シアちゃん。記憶を覗くことが出来なかったんだ。断片しか見えなかった。》

「どういう…こと?」


レイシアは意識を失い倒れたであろう床から起き上がる。


《シアちゃんの記憶を覗こうとしたら、何かに弾かれちゃって、断片しか…》

「そんな心配そうな顔しないの。いいよ、無理にお願いしたのは私なんだから」


ね?と言った風に小首を傾げて微笑むレイシアにリーフは下を向いた。


《でも…シアちゃん。凄く痛い思いしちゃうから》

「…え」


リーフの言った意味を理解するのに数秒かかった。

そして、分かったと同時に《痛みが襲って来るよ》と言ったリーフの言葉が、レイシアの脳内を過った。


そして、その数秒後。レイシアに途轍(とてつ)もない激痛が体を走り、女とは思えないドスの効いた悲鳴が森に響いた。


(リーフ殺す)


と、痛みに悶えながらレイシアが思ったのは言うまでもない。



リーフが覗いた、シアの記憶の断片です。


(この男か、シアちゃんが言ってたにへら顔の男。)


リーフが記憶の断片を覗く先に、恐らく前世のレイシアであろう短髪の女と、並んで歩いているにへら顔の男がいた。

2人は手を繋ぎ何かを言い合いながら家に入って行く。

前世のレイシアは少し怒り顔のように見えた。


ここは…家の中だろうか、前世のレイシアとにへら顔の男がキスをしている。

前世のレイシアは先程の怒り顔ではなく、少し恥ずかしがったような顔をしていた。


そこで場面が変わり、雨に打たれて道路に倒れている前世のレイシアが見えた。前世のレイシアは必死に、にへら顔とは違う男に向かって涙ながらに叫んでいた。


また場面が変わる。

今度は、前世のレイシアの暗い表情が見えた。

先程見えた怒っているような表情など、微塵も感じさせないほどに何も映していない瞳。

また、雨だったーーー。



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