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ログ外伝  作者: T.M
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閑話 地下街の噂


地下街は噂が早かった。


特に《鴉樽》みたいな酒場には、 毎日色んな話が流れ着く。


誰が消えた。


誰が捕まった。


どこの縄張りで揉めた。


そして、 誰が始末された。


その夜も、 酒場では地下街の連中が酒を飲みながら好き勝手喋っていた。


「水路側、また死体出たらしいぞ」


「最近多いな」


「《鉄杭》側揉めてんだろ」


ログは皿を運びながら顔をしかめる。


「物騒過ぎんだろ地下街……」


「今更何言ってんだ若造」


笑いが起きる。


ログは煙草を咥え直した。


「いや、最近特に多くねぇ?」


常連の一人が肩を竦める。


「《鴉樽》絡むと早ぇんだよ」


ログの動きが少し止まる。


「……何が」


男は酒を飲みながらぼそりと言った。


「報復」


酒場の空気がほんの少し静かになる。


でも、 誰も止めない。


地下街では、 そういう話も酒の肴だった。


「前も居ただろ」


別の男が笑う。


「ガキ売ろうとして消えた奴」


「あー居たな」


「あと東通路で女攫った奴」


「翌週水路浮いてた」


ログが眉を寄せる。


「……全部主か?」


沈黙。


数秒。


そして常連達が一斉に吹いた。


「聞くな馬鹿!!」


「長生き出来ねぇぞ!!」


「顔に出てんだよお前!!」


ログが顔をしかめる。


「いや普通気になるだろ!」


カウンター奥で店主が笑っている。


二階手すりでは、 ミナが黙って話を聞いていた。


地下街の主は奥の席で煙草を咥えたまま、 何も言わない。


その沈黙が逆に怖い。


ログは視線を逸らした。


「……怖ぇなアンタら」


常連が酒を煽る。


「地下街だぞ」


「怖くねぇ方がおかしい」


笑い声が起きる。


でもその奥に、 本物の空気が混じっていた。


地下街では、 “消える”は脅しじゃない。


本当に消える。


ログはそれを少しずつ理解し始めていた。


そして二階では。


ミナが小さく呟く。


「……だから皆、主に逆らわないんだ」


その声は、 誰にも聞こえなかった。

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