第5章 ➂
第5章③ 広間
扉が吹き飛ぶ。
轟音が広間へ響いた。
松明の灯り。
その下には。
若い女達。
少年達。
縄で縛られ、壁際へ並ばされていた。
怯えた目が、一斉にログを見る。
「大丈夫だ」
ログは短く言う。
「迎えに来た」
その言葉だけで。
何人かが涙を流した。
広間の奥。
黒い外套を羽織った男が立ち上がる。
「何者だ!」
ログは答える。
「鴉樽だ」
男の顔色が変わる。
「まさか……!」
「ここまで来るとは……!」
男は慌てて部下へ怒鳴った。
「止めろ!」
「時間を稼げ!」
周囲の男達が一斉に飛び出す。
ログも踏み込んだ。
拳が唸る。
一人。
また一人。
次々と床へ沈んでいく。
レオは剣を抜き、人質の前へ立った。
「こっちは通すな!」
敵の刃を受け流す。
蹴り飛ばす。
人質へ近付く者だけを狙って倒していく。
「ログ!」
「人質優先だ!」
「ああ」
ログは短く答えた。
飛び掛かってきた男を投げ飛ばす。
そのまま縄を断ち切る。
「立て」
「出口はレオが守ってる」
女達は支え合いながら立ち上がる。
少年達も後に続いた。
その隙に。
広間の奥で幹部が叫ぶ。
「逃がすな!」
だが。
誰も動けなかった。
床には倒れた男達が転がり。
立っている者は、もう数えるほどしかいない。
幹部は一歩後退る。
初めて恐怖が顔に浮かんだ。
「ば、化け物……」
ログは首を振る。
「違う」
一歩。
また一歩。
ゆっくり近付く。
幹部は腰の短剣を抜いた。
震える手だった。
「来るな!」
叫びながら突き出す。
ログは手首を掴んだ。
鈍い音。
短剣が床へ落ちる。
「ぐあっ!」
そのまま腹へ一撃。
男は膝をついた。
「終わりだ」
ログは男の襟首を掴み、軽々と持ち上げる。
レオが最後の縄を解き終え、振り返った。
「終わったか?」
「ああ」
ログは幹部を見下ろす。
「まだ聞きたいことがある」
男は悔しそうに睨み返した。
「俺を捕まえても無駄だ……」
「黒帳は終わらん」
「俺なんか一人消えても、また次が来る」
ログは答えない。
幹部を肩へ担ぎ上げる。
「帰るぞ」
レオは広間を見回した。
解放された人々が、互いに支え合いながら出口へ向かっている。
「全員いるな」
「ああ」
二人は広間を後にした。
肩には黒帳の幹部。
その先に待つのは。
鴉樽だった。




