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第5章 ①
第5章① 反撃
翌朝。
鴉樽は静かだった。
昨夜まで転がっていた男達の姿は、もうない。
誰もその話はしなかった。
地下街では。
そういうものだった。
主は煙草に火をつける。
ゆっくり煙を吐いた。
「ログ」
「何だ」
「黒帳だ」
ログの目が細くなる。
「居場所は」
主は机へ一枚の紙を置いた。
地下道を手書きで記した地図だった。
「あいつらは地下を使う」
「逃げ道もな」
ログは地図を見る。
「ここか」
「西区の外れ……」
主は短く頷く。
「ああ」
「地下道を抜けた先だ」
レオが腕を組む。
「俺も行く」
「妹の情報があるかもしれねぇ」
主は止めなかった。
「好きにしろ」
ログは帽子を被り直す。
「何人連れて行く」
「お前一人で十分だ」
「……そうか」
主は煙草を灰皿へ押し付ける。
「俺は残る」
ログは少しだけ首を傾げた。
「来ないのか」
「ああ」
「留守番だ」
それだけだった。
レオは主を見つめる。
何か考えている。
そんな顔だった。
主は気付いていても何も言わない。
「行くぞ」
ログが歩き出す。
レオも続いた。
鴉樽の扉が閉まる。
店内は静まり返った。
ミナが小さく尋ねる。
「……本当に二人だけで大丈夫なんですか」
主は煙草をくわえ直す。
「大丈夫だ」
短く答える。
そして。
誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
「来るなら来い」
その視線は。
地下道ではなく。
地上へ向けられていた。




