第4章 ⑦
⑦
三人は、店の隅に転がされたままだった。
主が煙草をくわえ、しゃがみ込む。
一番端の男へ目を向けた。
「誰に頼まれた」
男は黙る。
主は表情を変えない。
ただ、視線だけで圧をかける。
沈黙が続く。
医者が静かに言った。
「痛い思いをする前に話した方がいい」
「経験上、そういうものだ」
男はしばらく粘ったが。
やがて観念したように口を開いた。
「……上から言われただけだ」
「集められる奴を集めてこいって」
ログが眉を寄せる。
「集めるって、何をだ」
「若い女と、ガキだ」
「理由は」
「知らねぇ」
「本当に知らねぇんだよ」
「ただ数を揃えろって言われただけだ」
主が煙を吐く。
「誰の指示だ」
男は口を閉ざす。
「言えねぇのか」
「言えねぇ」
「言ったら殺される」
主はしばらく黙って見つめた。
「今言わなくても」
「どうせ死ぬぞ」
男の顔が青ざめる。
それでも。
首は縦に振らなかった。
代わりに、震える声で付け加える。
「一つだけ言える」
「何だ」
「鴉樽には……手を出すなって言われてる」
店の空気が固まった。
ログが低く聞き返す。
「……何だと」
「ここだけは避けろって」
「上から、はっきり言われてる」
「理由は」
「知らねぇ」
「でも、絶対に手を出すなって」
しん、と店が静まり返る。
レオが低く呟く。
「わざわざ避けてる、ってことは」
「何か知ってやがるな」
主は何も言わなかった。
煙草を灰皿へ押し付ける。
灰がまた一つ、積もった。
医者が静かに言う。
「下っ端はここまでだろう」
「これ以上は知らん」
主は立ち上がる。
「まあ、いい」
「地下に流せ」
ログが顔を上げた。
「上って」
「こいつらに命令してる奴」
主の目が細くなる。
「今度は、こっちから出向く」




