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第3章 ②
第3章② 乳母選定
顔合わせは、思ったより早く始まった。
ログが見つけてきた乳母候補の一人目が、鴉樽を訪れる。
「よろしくお願いします」
物腰の柔らかい女だった。
ミナがヴィクを抱いて奥から出てくる。
「この子です」
「あらあら、可愛いこと」
女が顔を覗き込む。
その瞬間だった。
ヴィクが小さく身じろぎする。
「ぶしゅっ」
「うわっ!?」
女が慌てて飛び退いた。
部屋が静まり返る。
「……」
「……」
ログが真顔で口を開く。
「歓迎の挨拶だ」
「歓迎じゃないでしょ、これ!」
ミナは慌てて布を差し出した。
「ご、ごめんなさい!」
医者は落ち着いた声で言う。
「男児にはよくあることだ」
「よくあることで済ませないで!」
主は煙草をくわえたまま知らん顔をしている。
女は苦笑しながら顔を拭いた。
「少し……考えさせてください」
結局、その日は帰っていった。
二人目も。
三人目も。
似たような洗礼を受けた。
四人目は。
噂を聞いたのか、顔合わせの約束そのものを断ってきた。
部屋に沈黙が落ちる。
ミナがため息をついた。
「減っちゃった……」
ログも腕を組む。
「そう簡単にはいかねぇか」
主は煙草を灰皿へ押し付ける。
「まだ探せ」
「街は広い」
ログは帽子を被り直す。
「ああ」
ヴィクはそんな空気も知らず。
満足そうに笑っていた。




