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第2章 ①
第2章① 寝不足
朝の鴉樽は静かだった。
静か過ぎた。
ログは扉を開ける。
「主」
返事がない。
もう一度呼ぶ。
「主」
店の奥からミナが顔を出した。
「静かに」
小声だった。
ログも声を落とす。
「どうした」
ミナはため息を吐く。
「やっと寝たの」
ログは奥を見る。
主が椅子にもたれたまま眠っていた。
珍しい。
いや。
初めてだった。
「寝不足か」
ミナは頷く。
「昨日も」
「一昨日も」
「ずっと夜泣き」
ログは赤ん坊を見る。
ヴィクは主の腕の中で気持ち良さそうに眠っていた。
「主が抱くと寝るの」
「離すと泣く」
「また抱く」
「寝る」
「また離す」
「泣く」
ログは少し考える。
「面倒だな」
「面倒なのよ」
ミナは苦笑した。
「だから今日は起こさない」
「店は?」
「困ってる」
ログは黙る。
少しだけ主を見る。
眠っている。
本当に疲れているらしい。
ログは帽子を被り直した。
「俺がやる」
ミナが顔を上げる。
「いいの?」
「ああ」
「どうせ暇だ」
そう言って店を出る。
地下街の朝は。
もう始まっていた。
今日は主の代わりに
ログが動く。




