第1章 ➂
第1章 地下街育児戦争、開幕③
赤ん坊が泣いている。
「おぎゃああああ!」
ミナがあやす。
泣き止まない。
主へ渡す。
泣き止む。
「……」
全員が主を見る。
主は赤ん坊を見る。
「知らん」
医者が赤ん坊へ近付く。
少し様子を見る。
頷いた。
「腹が減っている」
部屋が静かになる。
主が聞く。
「何を食う」
ログが首を振る。
「知らん」
常連が手を挙げた。
「パンか?」
ミナが振り向く。
「赤ちゃんよ!」
別の常連が言う。
「スープ」
「駄目!」
「柔らかく煮れば」
「そういう問題じゃない!」
「酒」
「お前だけよ!」
部屋中が騒がしくなる。
医者が額を押さえた。
「静かにしろ」
ぴたり。
全員が黙る。
医者は短く言った。
「乳だ」
主が聞く。
「牛か」
「違う」
ログが聞く。
「山羊か」
「違う」
常連が首を傾げる。
「じゃあ何だ」
医者は全員を見回した。
「人だ」
しん。
誰も動かない。
「最近、子どもを産んだ女を探せ」
その一言で。
地下街が動いた。
「東区だ!」
「西区も探せ!」
「急げ!」
常連達が一斉に飛び出していく。
ログも扉へ向かう。
「俺も行く」
「待て」
医者が止めた。
「お前は残れ」
「何故だ」
「まだ終わっていない」
その時だった。
「……ぶっ」
小さな音が部屋に響く。
全員が止まる。
医者が赤ん坊を見た。
一言。
「替えろ」
主が聞く。
「何を」
「おしめだ」
しん。
主。
「知らん」
ログ。
「知らんな」
ミナは頭を抱えた。
「もう嫌ぁーーーっ!」




