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第1章 ②

第1章 地下街育児戦争、開幕②


赤ん坊の泣き声が止まらない。


「おぎゃああああ!」


部屋中に響く。


誰も動かない。


いや。


動けない。


ミナが辺りを見回す。


「誰か抱いて!」


全員が目を逸らした。


ログが咳払いをする。


「主」


「断る」


「主」


「嫌だ」


「主」


「知らん」


ミナは赤ん坊を抱き上げる。


そのまま。


主の腕へ押し付けた。


「はい」


「おい」


「抱いて!」


「嫌だ」


「もう抱いてる!」


主は困った顔で赤ん坊を見る。


どうしていいのか分からない。


ぎこちなく抱える。


その時だった。


「……」


泣き声が止まる。


しん。


部屋が静まり返った。


全員が赤ん坊を見る。


赤ん坊は主を見上げていた。


そして。


にこり。


小さく笑った。


「…………」


ログが口を開く。


「何でだ?」


常連が首を傾げる。


「何でだ?」


医者も腕を組む。


「何でだ?」


主本人が一番困っていた。


「……知らん」


ミナが笑う。


「ほら!」


「泣き止んだ!」


主は赤ん坊を見る。


赤ん坊も主を見る。


静かな時間だった。


ログが手を差し出す。


「代われ」


主は黙って赤ん坊を渡す。


ログが抱いた。


一拍。


「おぎゃあああああ!」


部屋中に泣き声が響く。


ログは固まった。


「……何でだ」


主は腕を組む。


「嫌われたな」


「殴るぞ」


部屋中に笑い声が広がった。

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