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第1章 ①
第1章 地下街育児戦争、開幕①
赤ん坊の泣き声が店中に響く。
「おぎゃああああ!」
誰も動かない。
主は赤ん坊を見る。
ログを見る。
ミナを見る。
「……」
静かに一歩下がる。
ミナが指を差した。
「待ちなさい」
主は止まる。
「どこへ行く」
「煙草だ」
「店の中で吸えるでしょ!」
主は咳払いをした。
「……今日は外で吸いたい気分だ」
「気分で逃げるな!」
ログもそっと後ろへ下がる。
「俺も煙草」
ミナは振り返る。
「吸わないでしょ!」
「今日から吸う」
「始めるな!」
店の隅では常連達が目を合わせていた。
「帰るか?」
「帰るか」
「俺、配達」
「俺、買い出し」
「店閉まってるぞ」
「……」
全員が目を逸らす。
「誰も逃がさないからね」
ミナが仁王立ちになる。
出口は一つ。
その前に立たれた。
誰も出られない。
赤ん坊はさらに泣く。
「おぎゃああああ!」
主が耳を押さえた。
「うるさい」
「赤ちゃんだからよ!」
ログが腕を組む。
「どうする」
「私が聞きたいわ!」
部屋に重い沈黙が落ちる。
その時だった。
奥から医者が顔を出す。
全員を見る。
赤ん坊を見る。
そして一言。
「で?」
全員の視線が医者へ向く。
医者は肩を竦めた。
「誰が抱くんだ?」
また静かになる。
誰も名乗り出なかった。




