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閑話 七夕
七夕閑話 願い事
夜だった。
地下街では珍しく。
笹が一本立っていた。
誰かが地上から持ってきたらしい。
短冊も揺れている。
ミナが笑う。
「今日は七夕よ」
主が聞く。
「何だそれは」
「願い事を書く日」
「願えば叶うのか」
「そういう日なの」
主は少し考える。
「なら書く」
紙を受け取る。
迷わない。
さらさら。
ミナが覗く。
「何て書いたの?」
主は平然と答えた。
「地下街の天井が落ちないように」
「現実的!」
ログも紙を受け取る。
しばらく考える。
長い。
珍しく長い。
書き終える。
ミナが覗く。
「何?」
ログは紙を隠した。
「……秘密だ」
「えー、見せてよ」
「駄目だ」
主が横から紙を奪う。
「貸せ」
「返せ!」
主は無言で眺める。
そして。
にやり。
新しい紙を取り出した。
さらさら。
笹へ結ぶ。
ミナが読む。
『もてますように』
「ちょっと主!」
「俺じゃない!」
医者が一言。
「似合ってる」
ヴィク。
「あー!」
ぱちぱち。
ログは頭を抱えた。
「笑うな!」
地下街は笑い声に包まれた。
しばらくして。
騒ぎが落ち着く。
誰もいなくなった笹の前。
風が吹く。
短冊が揺れる。
その中に。
誰にも見せなかった一枚があった。
『俺の願いは、もう叶ってる』




