↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/147

第3章 地下機構 ⑳

地下水路へ飛び出した瞬間、全員しばらく動けなかった。


湿った夜風。


石畳。


地下街の薄暗い灯り。


ついさっきまで、 地下そのものが崩れていたとは思えない静けさだった。


レオが壁へ手を付き、 息を切らす。


「はっ……はっ……」


そのまま崩れ落ちた。


「もう嫌だ……」


ログは白衣を放り出す。


ドサッ。


「うおっ」


白衣が潰れた声を出す。


「扱いが……雑……」


「生きてるだけマシだろ」


「理論が地下街過ぎる……」


主が最後に水路から出て来た。


煙草はまだ咥えている。


レオが顔を上げる。


「アンタそれ地下でも消えてなかったのか……」


「消す暇無かった」


「消えろよ!!」


地下街の奥で、 小さく地鳴りが続いていた。


ゴゴ……


ゴゴゴ……


常連らしい男達が、 水路側を見てざわつき始める。


「何だ今の」


「地下深部か?」


「崩れたのか……?」


ログが即座に視線を逸らした。


レオが指差す。


「何で逃げる!!」


「俺じゃねぇし」


主が煙を吐く。


「半分くらいはお前だろ」


「半分ならセーフだろ!!」


レオ絶叫。


「セーフじゃない!!」


子供達は、 まだ怯えていた。


だが主が居るのを確認すると、 少しだけ表情が戻る。


主は短く言った。


「……《鴉樽》戻るぞ」


誰も反対しなかった。



《鴉樽》は、 夜だというのに騒がしかった。


地下深部の揺れは、 地下街全域へ届いていたらしい。


扉が開いた瞬間。


常連達の視線が一斉に集まる。


沈黙。


そして。


「若造また何かやったのか」


ログ。


「冤罪だ!!」


酒場大爆笑。


「その顔で言うな!!」


「血塗れじゃねぇか!」


「今度は何壊した!!」


レオが机へ突っ伏した。


「壊したんだ……」


「役人染まってんなぁ!」


「違う!!」


主はいつもの席へ座る。


何事も無かったみたいに。


煙草へ火を付けた。


ミシ……


天井から砂が落ちる。


酒場沈黙。


全員、 ゆっくりログを見る。


ログ。


「俺じゃねぇって!!」


主。


「説得力無ぇな」


また爆笑が起きた。


白衣だけ、 酒場の隅で青い顔をしている。


地下街の笑い声。


酒の匂い。


煙。


その中で。


レオだけは、 ふと主を見た。


主は黙って煙を吐いている。


いつも通り。


だが。


地下崩落の最後。


赤い目が、 主を見ていた。


レオだけが、 まだそれを忘れられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。