第3章 地下機構 ⑯
ログが石板を睨む。
「これ壊せば終わるんじゃねぇの」
レオが青ざめる。
「待て!!」
「またかよ」
「お前の“また”で地下落ちるんだよ!!」
地下空間が揺れる。
赤い目が脈打つ。
主が子供達を庇いながら低く言う。
「役人、どうなんだ」
レオは石板へ駆け寄る。
刻印。
赤い線。
脈動。
その奥。
石板中央ではなく、 下層へ向かって流れている光。
レオの顔色が変わる。
「……違う」
「石板は制御盤だ」
ログ。
「うん」
「核は別だ!!」
地下空間が静まる。
レオは赤い光の流れを見る。
地下奥。
巨大な赤い目。
その更に下。
脈打つ何か。
「エネルギー源がある……!」
主の目が細くなる。
「心臓か」
レオが頷く。
「多分……!」
ログ。
「じゃあそこ殴ればいいな」
レオ絶叫。
「話を聞けぇぇぇ!!」
だがログ、 もう半分走り出していた。
「待て若造!!」
「止めんな!!」
地下空間が揺れる。
ジャリ……
奥で鎖が鳴る。
赤い目がゆっくりログを追った。
地下機構が低く響く。
「危険個体、認識」
ログが顔をしかめる。
「誰が危険だ」
主がぼそりと呟く。
「お前だろ」
「アンタまで言う!?」
レオが頭を抱える。
「だから精密機構を殴って解決しようとするな!!」
ログが真顔で振り返る。
「昔、表の宿で壊れた箱あった」
「は?」
「叩いたら直った」
レオが数秒黙る。
「……それ理由ある奴だからな?」
「じゃあコレも直るかもしれねぇだろ」
「同じにするな!!」
だが主は煙草を咥え直しながら、 赤い目を見ていた。
「……いや」
全員止まる。
主が低く続ける。
「案外間違ってねぇかもな」
レオ。
「は?」
主は地下機構を見る。
「コイツ、想定外に弱い」
赤い目が脈打つ。
ドクン。
ドクン。
「理屈通りに動くからだ」
ログが腕を鳴らす。
「つまり?」
主が口元を歪めた。
「滅茶苦茶やれば壊れる」
地下機構。
「警戒度、上昇」
レオが叫ぶ。
「会話に反応するな気持ち悪ぃ!!」
ログ、 もう走っていた。
「よし!!」
ログが地下奥へ突っ込む。
レオの悲鳴が追い掛ける。
「だから何で嬉しそうなんだよ!!」
地下空間が揺れる。
赤い目が脈打つ。
ドクン。
ドクン。
地下機構が低く響いた。
「危険個体、接近」
ログ。
「おう」
「返事するな!!」
レオが頭を抱える。
主は子供達を庇いながら、 静かに煙を吐いた。
「役人」
「な、何だ!」
「若造止められるか」
レオ、 数秒黙る。
ログを見る。
もう止まらない顔だった。
「……無理」
「だろうな」
主があっさり頷く。
地下奥では、 巨大な赤い目の下。
脈打つ核のようなものが、 ゆっくり明滅していた。
巨大な管。
赤い液体。
まるで心臓。
ログは顔をしかめる。
「うわぁ……」
地下機構が反応する。
「中枢防衛、起動」
ジャリ!!
暗闇から、 新たな赤い腕が伸びる。
ログ。
「またかよ!!」
腕が振り下ろされる。
ドゴォン!!
ログ、 横へ飛ぶ。
転がる。
避けた。
本人も少し驚いた顔。
レオが叫ぶ。
「何で避けられるんだよ!!」
ログが真顔で答える。
「空気」
主が煙を吹き出す。
「まだ言ってんのか若造」
次の瞬間。
赤い腕が再び襲い掛かる。
ログは近くの鉄骨を掴んだ。
そして。
思い切り振り回した。
レオ絶叫。
「だから叩くなぁぁぁ!!」
ドゴォォン!!
鉄骨が、 核へ直撃した。
地下空間が止まる。
赤い目が見開かれる。
ドクン。
ドク……ン。
脈動が乱れた。
ログも止まる。
「……効いた?」
地下機構。
「重大損傷、確認」
レオ、 天を仰ぐ。
「効くんかい……!!」
ログが鉄骨を構え直す。
「心臓っぽいだろ」
「いやそうだけど!!」
「胸強くやられると苦しい」
地下空間沈黙。
主が煙を吐く。
「経験談だな」
ログが主を見る。
「アンタ何回もやっただろ」
「覚えてねぇ」
「絶対覚えてる!!」
地下機構。
「重大損傷、拡大」
レオが頭を抱える。
「地下街の喧嘩理論で古代機構壊すな!!」




