第3章 地下機構 ⑭
ジャリ……
ジャリ……
重い鎖の音が、 地下奥から近付いて来る。
赤い灯りが脈打つ。
ドクン。
ドクン。
地下空間の温度が、 ゆっくり下がっていく。
白衣が後退る。
完全に顔色を失っていた。
「待て……!」
「停止命令を要求する!!」
地下機構は答えない。
「接続処理、継続」
ジャリ……
鎖の音が近付く。
暗闇の奥。
巨大な影が動いた。
ログが顔をしかめる。
「またデカいのかよ……」
レオが青ざめる。
「“回収”だ……」
「は?」
「接続された人間を奥へ運ぶ奴だ!!」
白衣が石板へ縋り付く。
「違う!!」
「私は管理側だ!!」
主が低く吐き捨てる。
「地下はそういうの区別しねぇんだろ」
その瞬間。
暗闇から、 巨大な腕が伸びた。
鎖。
鉄。
そして赤い灯り。
白衣が悲鳴を上げる。
「やめろ!!」
腕が白衣を掴む。
地下空間へ、 絶叫が響いた。
ログとレオが思わず止まる。
主だけが静かだった。
赤い目を睨んでいる。
白衣は暴れた。
「離せ!!」
「私はそちら側だ!!」
地下機構が答える。
「更新済」
白衣の顔が凍る。
ログがぼそりと言った。
「地下街より理不尽だな」
レオが引き攣る。
「比較対象そこ!?」
その瞬間。
赤い腕が、 白衣を奥へ引き摺り始めた。
ジャリ……
ジャリ……
地下奥の闇へ。
白衣が初めて、 ログへ手を伸ばす。
「待て!!」
白衣の声が、地下空間へ響く。
「助け――」
ジャリ……
鎖の音がそれを飲み込む。
赤い腕は、 容赦なく白衣を奥へ引き摺っていく。
白衣は必死だった。
床へ爪を立てる。
石が砕ける。
眼鏡も外れ、 髪も乱れていた。
もう、 “管理側”の顔ではない。
ただ怯えている人間だった。
レオが顔を強張らせる。
「……っ」
ログも止まっていた。
白衣が手を伸ばす。
「待て!!」
「私はまだ使える!!」
地下機構は答えない。
「回収処理、継続」
赤い目が脈打つ。
ドクン。
ドクン。
主が低く言った。
「若造」
ログは動かない。
主は続ける。
「選べ」
地下空間が揺れる。
後ろでは、 子供達が震えている。
崩落も始まっていた。
白衣だけ助けるなら、 今しかない。
だが。
白衣は今まで、 大勢を奥へ送って来た側だ。
レオが歯を食いしばる。
「……クソ」
ログは数秒黙る。
そして。
かなり嫌そうな顔で言った。
「……後味悪ぃ」
主が煙を吐く。
「だろうな」
次の瞬間。
ログ、 走る。
レオ絶叫。
「行くのかよぉぉぉ!!」
「夢見悪くなる!!」
「理由が軽い!!」
ログは赤い腕へ飛び付いた。
地下空間が脈打つ。
赤い目が、 初めて大きく見開かれる。




