第3章 地下機構 ⑬
赤い線は、本当に白衣側へ移り始めていた。
ブチブチと、 地下空間へ嫌な音が響く。
白衣の腕へ、 赤い脈動が浮かび上がる。
白衣の顔色が変わった。
「何故成立する……!?」
ログは真顔だった。
「お前のだろこれ」
「返す」
主がぼそりと呟く。
「正論だな」
「乗るなアンタ!!」
レオが頭を抱える。
だが次の瞬間。
地下奥の赤い目が、 ゆっくり細くなった。
ドクン。
ドクン。
脈動が変わる。
地下空間全体が、 ざわついたみたいだった。
白衣の顔から、 初めて余裕が消える。
「待て……!」
「接続対象を変更するな!!」
ログ。
「知らん」
さらに押し付ける。
白衣絶叫。
「やめろ!!」
レオが固まる。
「うわ、本当に嫌がってる……」
主が煙を吐く。
「効いてるな」
地下奥から、 低い声が響いた。
「接続対象、再設定」
全員止まる。
白衣の顔が青ざめる。
「待て」
「それは違う」
赤い灯りが、 今度は白衣側へ集まり始める。
白衣が後退する。
初めて、 完全に恐怖していた。
「停止しろ!!」
地下機構は答えない。
「適合個体、更新」
ドクン。
白衣の腕へ、 赤い線が一気に走る。
白衣が悲鳴を上げた。
ログが少し引く。
「……そんな嫌なのか?」
レオが叫ぶ。
「お前もさっき嫌がってただろ!!」
「いやでも」
ログは白衣を見る。
かなり嫌そうな顔。
「俺より嫌がってる」
主が短く言う。
「だから返したんだろ」
「うん」
地下空間沈黙。
レオが天を仰いだ。
「地下街理論で世界動くなよ……!」
赤い灯りが、今度は白衣側へ集まり始めていた。
ドクン。
ドクン。
地下空間全体が脈打つ。
白衣は後退る。
初めて。
完全に恐怖していた。
「停止しろ!!」
地下機構は答えない。
「適合個体、更新」
赤い線が、 白衣の腕を這い上がる。
白衣が悲鳴を上げた。
「違う!!」
「私は管理側だ!!」
ログが顔をしかめる。
「知らん」
「お前が始めたんだろ」
主が煙を吐く。
「自業自得だな」
レオが複雑な顔になる。
「いや……その……」
数秒迷う。
「……ちょっと同情しづらい」
「だろ?」
「乗るな下働き!!」
地下空間が揺れる。
天井から石片が落ちた。
赤い目が、 ゆっくり白衣を見ている。
観察するみたいに。
白衣は石板へしがみ付く。
「認証を解除しろ!!」
地下機構は答えない。
「接続処理、継続」
白衣の顔色が消える。
赤い線が首元まで伸びていた。
レオが青ざめる。
「おい……」
子供達が震えながら後退る。
一人が小さく呟いた。
「……奥へ行く」
地下空間が静まる。
主の目が細くなる。
ログが振り返る。
「何だ?」
子供は赤い線を見ていた。
怯えた顔。
「繋がった人、奥へ連れてかれる」
短い沈黙。
白衣の呼吸が止まる。
「待て……」
初めて。
本気で怯えていた。
ログは数秒黙る。
それから白衣を見る。
そして。
かなり嫌そうな顔で言った。
「……やっぱ気持ち悪ぃなここ」
レオが叫ぶ。
「感想が軽い!!」
その瞬間。
地下奥で、 巨大な鎖の音が響いた。
ジャリ……
ジャリ……
赤い目が、 ゆっくり細くなる。
まるで。
“回収”を始めるみたいに。




