第3章 地下機構 ⑫
ログは止まらなかった。
赤い灯りを踏み千切りながら、 白衣へ一直線に突っ込む。
地下空間が揺れる。
ドクン。
ドクン。
赤い目が脈打つ。
まるで怒っているみたいだった。
白衣が後退する。
初めて明確に狼狽えていた。
「接続を拒絶……?」
「あり得ない……!」
ログが叫ぶ。
「知らねぇよ!!」
ドゴォン!!
拳。
白衣、 制御石板へ叩き付けられる。
石板に亀裂が走る。
赤い灯りが暴走した。
レオが悲鳴を上げる。
「壊すなぁぁぁ!!」
「コイツが悪い!!」
「理屈になってない!!」
主が横から鉄仮面を殴り飛ばす。
「地下街はそんなもんだ」
「アンタが言うな!!」
地下空間が更に揺れる。
天井から石が落ちる。
子供達が悲鳴を上げた。
主が即座に子供側へ回る。
「下がれ」
低い声。
子供達が震えながら後退る。
その間にも、 ログは白衣の胸倉を掴んでいた。
「戻せ」
「貴方は理解していない……!」
「だから何にだよ!!」
白衣の顔が歪む。
「適合個体は地下機構へ――」
ログ、 無言で殴る。
ドゴン!!
レオが頭を抱えた。
「最後まで聞けぇぇぇ!!」
白衣が石床へ転がる。
鼻血。
眼鏡も割れた。
だが。
白衣は笑っていた。
初めて。
「成程……」
ログが嫌そうな顔をする。
「だからその顔やめろ」
白衣は血を拭いながら、 赤い目を見上げる。
「貴方は拒絶した」
「だが完全には切れていない」
地下空間が静まる。
ログの顔が引き攣る。
「……は?」
その瞬間。
ログの腕へ、 赤い線が浮かび上がった。
ログの腕に、赤い線が浮かび上がった。
ドクン。
脈打つ。
まるで血管みたいだった。
地下空間が静まり返る。
レオの顔色が消える。
「若造……」
主の目が細くなる。
白衣だけが、 ゆっくり笑った。
初めてだった。
「成程……」
ログの顔が歪む。
「その顔やめろ」
白衣は血を拭いながら、 赤い線を見つめる。
「適合反応がここまで明確に出るとは――」
ログ。
「キモ」
即答だった。
レオが叫ぶ。
「待て触るな!! 多分それ接続――」
「嫌だ」
ログは腕を見る。
赤い線は、 ゆっくり肩へ伸びようとしていた。
ドクン。
ドクン。
地下奥の赤い目が、 それに合わせて脈打つ。
子供達が怯えた声を漏らす。
「……繋がる」
主の顔が険しくなる。
白衣が一歩前へ出た。
「抵抗は無意味です」
「適合個体は地下機構へ――」
ログ、 数秒黙る。
それから、 ゆっくり白衣を見る。
白衣、 嫌な予感がした。
かなり珍しく。
ログは真顔だった。
「……返す」
「は?」
次の瞬間。
ログ、 赤い線の浮いた腕を、 白衣の顔面へ押し付けた。
地下空間沈黙。
白衣絶叫。
「何をしている!!」
赤い灯りが暴れる。
ブチブチと、 赤い線が逆流するみたいに白衣側へ走った。
レオが固まる。
「……え?」
主が煙を吐く。
「お前本当に空気で生きてんな」
ログはかなり嫌そうな顔だった。
「だって気持ち悪ぃし」
白衣が膝を付く。
初めて本気で狼狽していた。
「接続方向が……逆流……?」
ログ。
「知らん」
そしてもう一回押し付ける。
「返す」
レオ絶叫。
「雑!!!!」
だが。
赤い線は本当に、 白衣側へ移り始めていた。
白衣の腕へ、 赤い脈動が浮かび上がる。
白衣の顔色が変わる。
「何故成立する……!?」
ログは真顔だった。
「お前のだろこれ」
「返す」
主がぼそりと呟く。
「正論だな」
「乗るなアンタ!!」
レオが頭を抱える。
地下空間では、 赤い目がゆっくり脈打っていた。
まるで。
地下機構そのものが、 困惑しているみたいに。




